3ページ目.君は記憶に光り輝く

 始業式の日は漫画部の活動がなかったので、家にまっすぐ帰った。


 自室に着くなり、早速、今日学校で見た光景を絵にすることにした。


 タブレットの電源を入れてイラストアプリを開く。


 絵は紙にも描くけど、今はデジタルで描くことが多い。


 オレは見開いた目で録画保存した、阿舞野さんが座っていた机から勢いよく降りたときの光景を、脳内で再生する。


 スカートのめくれ方。


 そして露わになったスカートの中の様子。


 記憶を頼りにペンを走らせ、タブレットに描写。


 それにしても阿舞野さんは噂にたがわず、綺麗な顔立ちの女子だったな。


 まさに黄金比に則った顔っていうのか……、左右のバランスも良いし。


 ちょっとつり目だけどぱっちりしていて、肌も艶があって、鼻と上唇の感覚が短くて、笑顔のとき見える歯も白くて……。


 配信アプリで人気ライバーだって聞いたことある。


 まあ、あり得ることだな。


 なんて言うアプリで配信してるんだろう?


 今度、教えてもらって、見てみようかな。


 とは言え、話しかけて訊く勇気がない。


 でもリスナーが増えるのは嬉しいだろうから、歓迎してもらえるはず??


 配信ってどんなことしてるんだろう??


 歌ったり、踊ったり、トークしたり……してることはわかるんだけど、これではざっくりしすぎだ。


 どんな曲を歌って、どんなダンスをして、リスナーとどんな会話をしてる??


 さっぱり想像がつかない。


 実はオレはそういうライバーの配信っていうのを、まだ観たことないのだ。


 阿舞野さんに対して疑問ばかりが浮かぶ。


 と、そんなことを考えながら描いていたら、いつの間にか絵が完成していた。


 けっこう早く描けた気がする。


 なかなかの出来栄えだ。


 うっ!?


 オレの息が詰まる。


 何故なら、自分で描いた絵を冷静に見て恥ずかしくなったからだ。


 気づいたら、いつの間にかキャラクターの顔まで阿舞野さんに似ていた。


 この絵は消そう……。


 と思ったけど、やっぱり保存しとくことにした。








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