第27話 いい加減、早く行け!

達也のミスリル級の蘊蓄うんちくによって、この場にいる全員の脳内を昭和のヒーロー達が縦横無尽に駆け巡る中、女神 九天玄女が小町に念を押すかのように助言する。


「では、最後にもうひとつ、小娘に伝えておくことがある」


「こむすめ、小娘って、さっきからイラッとくるわねー」

「黙って聞いておきなさい、小娘! 其方のためになるのだから」

「もういいわ! で、何なのよ」


「其方は、〝詠唱の守護者“なのだから法術、魔術、呪術といった類の能力はズバ抜けて高いということは既に理解しておろう。それは複数の精霊の加護を受けておるという生まれながらにラッキーな小娘守護者ならではのスキル。つまり、超絶にスーパーな大賢者並みの能力を生まれ持っておるということじゃ。それを上手に使うことで、この先に待ち受ける様々な困難など余裕で乗り越えて行けるはず。このことをゆめゆめ忘れないことじゃ」


「未だになんだかよくわからないし、そんな実感は全くないけど、やれば良いんでしょ。で、その魔法の使い方はどうするわけ?」


「詳しいことは、そこの諸葛亮がよ〜く知っておるから、しっかりと教示してもらうが良いぞ」


 小町は九天玄女が指差す方に振り返ると亮が微笑んでいる。その亮の微笑みがニヤケ顔に見えてしまい、少し前の嫌な記憶が蘇る。


「でも、こいつってばスカート捲りする術とか、ろくでもないエロ魔法くらいしか知らないんでしょー!? 見た目もなんだかムッツリな感じだし、こんな奴でホントに大丈夫なのかしら?」


「ちょっとちょっと、大町さん、あれは誤解というか想定外の事故なのですよ。何度もそう話したじゃあないですか! あと、僕はムッツリではありませんし、ひどいですよ」

珍しく、少しだけ慌てる亮に小町は上から目線で返す。


「でも、まあ亮だったら教え方もわかりやすいから問題なさそうね……で、残りの男どもは何かの役に立つのかしら」


 小町の言葉に史龍が真っ先に反応する。


「このバカ女! 黙って聞いてりゃあイイ気になりやがってぇ! 俺たちはお前の付き人とかジャーマネじゃあねえんだぞ。亮、お前も何か言い返してやれよ! だいたい……」


 史龍の次の言葉を遮って九天玄女が告げる。


「彼らは其方の盾となる騎士ナイトのような存在なのじゃよ。一人ひとりが武に長けておるから、行く先々で其方のガーディアンとして存分に力を発揮するであろう」


「えっ! この赤いツンツンがあ、騎士ナイト〜??? 冗談でしょー」


「冗談はそこのデカハゲのヒーロー話だけであろうが……まあ、善い。そのデカハゲを含めて、赤毛のツンツン頭とキザなちょっとイケメンの三人は天罡星36星の中でも選りすぐりの強者なのじゃ。何を隠そう、我が其方らを創造したのだから、よ〜く知っておるのじゃよ」


「------! はあ? 何だって? 俺たちを創造した……だと??」

「どういうことだい??」

「俺はハゲではないのだが……」


 驚く野郎三人とは違って、亮だけは九天玄女の言葉を既に知っていたかのように冷静に受け止めている。


「やはり、そういうことでしたか」

そう呟いて困惑する野郎三人の前に進み出ると、拱手して一礼する。


「九天玄女様、今回はここにいる素晴らしい仲間達とチームで挑むのですが、私の方術も解禁ということでよろしいのでしょうか?」


「解禁も何も、其方が自ら封印したのであろう。まあ、ついでに其方の奇門遁甲のパワーをもう少しランクアップさせておこうぞ」


「………それは有難い……」亮がそう呟くや否や、九天玄女の全身が輝き出す。


「「「「――――――――」」」」


 辺り一面を眩い光で覆われて、その場の全員も光の眩しさに目を伏せる。


 亮だけでなく、この場の全員がその眩いながらも温かな光を全身に浴びたせいなのか、得体の知れない、しかし神の加護のように優しい波動を感じた。


「諸葛亮よ、我の力の一部を与えたぞ。以前から其方が望んでいた最高位の術式はこれで完成するであろう」


「ありがたき幸せにございます」亮は目を閉じたまま顔を上げて謝辞を述べた。


「私の加護を加えたことによって其方の術式は、“どこにも属さず、誰にも属さない究極の術式”となろうぞ」


 女神が与えた波動によって、亮の身体中に神の力が駆け巡っているかのような感覚を覚えた。


「ついに究極の“slashed zero”へと進化を遂げたかのようだ..........次こそはSixRoadを制覇することをお約束いたします」


 亮の言葉にフッと微笑んだ九天玄女は、両腕を大きく左右に開いた。

「では、其方らに幸運と栄光、そして神々の加護があらんことを!」


 いつの間にか、亮たち五人の足元に円形の大きな魔法転移陣が出現し、白く輝く光の柱が天を貫くかのように立ち登ってゆく。

その光の柱の中で、史龍が叫ぶ。


「ちょっと待ってくれ! あんたが俺たちを創造したってのは、どういうことだよ!!」


 白い光の円柱は、さらに輝きを増している。


「その話は、また次回何処かで再会できたら、ゆっくりと話そう……無事を祈っておるぞ」


「おい、ちょっと、いま聞かせ…………」


「いい加減、早よ行けい!」


 史龍の言葉を途中で遮って、白い光の円柱が五人の渡り人を飲み込むと、その空間一帯が一瞬で消え去った。


「なかなかに面白い奴等であった……期待しておるぞ」


 女神九天玄女は、静かに呟いた。




〜出会いと旅立ちの章 完〜



★次回新章突入

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