10 編み機と足踏みミシン

 我が家には家庭用編み機がありました。

幅110㎝位、丈20㎝位、重さはかなり重いものでした。ケースに収まるようになっていて取っ手も付いていたので、持ち運びには便利になっていました。

手編みの棒針やかぎ針は針の太さを毛糸の太さによって変えますが、編み機はダイヤルで調整できるようになっていました。

編んでいて何段編んだか分かるように、ハンドルが付いた編む部分を左右に動かすと、カウンターの数字が増えていくようになっています。このハンドルを右から左に、左から右にと動かしながら段数が増えていきます。 


 私の母は冬になるといつも、この編み機を使って編み物をしていました。

ハンドルを動かす度に、ジャージャーと音がしていました。

毎年、母が姉2人と私に毛糸のセーターとかカーディガンを編んでくれていました。

編んでる様子を見るのが面白く、よく母の編んでいる姿を傍で見ていました。

どんなのが出来上がるかワクワクしながら見ていました。

模様が入ったおしゃれなものをよく作ってくれていました。


 私は三人姉妹の末っ子なので、だいたい服は姉のおさがりでした。

ただセーターなど母が編んでくれたものは、私専用に編んでくれていました。

だからとても嬉しかったのを覚えています。

 毛糸の服は着れなくなったら、解いて再利用していました。

解きながらクルクル丸く巻いていきます。解き終わった毛糸はやかんの蒸気などを利用して縮んだ毛糸を直していました。蒸気を通した毛糸は新品のようにふっくらしてきます。その毛糸を再び巻いていきますが、その時はいつも手伝っていました。母の目の前で両手を30㎝位広げたままにしておくと、母が私の手を使って右から左へと巻いていきます。私も上手く巻いて行けるように左右交互に手を動かします。この時真ん中を八の字に交差しながらもつれないように巻いていきます。

そんな作業も楽しいものでした。


 我が家には足踏み式ミシンもありました。

この足踏み式ミシンは、ミシンの足元にある踏板(ペダル)を足で踏んで上下させると、ピットマン棒やクランクが連動して動き、針が上下するしくみです。踏板の上下運動が針の動きへと変換されるため、踏板が上下させるスピードが早いほど、針が上下するスピードも早くなります。

 ミシンは天板(蓋の役目にもなる板)の下に収納できるようになっていて、蓋(蓋は真横に開きテーブルとして使える)を開けてミシン本体を持ち上げて取り出します。取り出したミシンを固定することが出来るようになっていました。


 母は若い時に、洋裁を習っていた事があり、手作りは得意でした。

夏には毎年、必ず1着は手作りのワンピースを作ってくれていました。これがレースのフリルなどがついて可愛いデザインで子供心にすごく嬉しかったものです。

毎年、行われる子供会の海水浴には、母の手作りのワンピースを必ず、着て行っていました。


 今はこの編み機も足踏み式ミシンも処分されて、我が家にありません。

足踏み式ミシンなどは今ではインテリアとしても人気があるので、あったらよかったのにと残念です。


 私が小学校の頃、母が服を手作りしてくれていた懐かしい思い出です。

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