12 鼻ありバスと車掌さん

 私が初めて乗ったバスには鼻がありました(鼻とは何ぞや?)

昔は鼻があるバスが主流でボンネットバスと呼ばれていました。

「となりのトトロ」で見たことがある人もいると思います。

あんなファンタジーな猫バスとはちょっと違いますが、バスの前が鼻のように出っ張っていました。

更に運転手さんの他に車掌さんがいて、バスの中で切符も販売していました。

車掌さんが肩から掛けていた車掌カバンは、がま口型でパカっと開くようになっていました。

カバンの中には、覗き込んだことはありませんが、恐らく、販売用の切符、切符を切るパンチ、釣銭用のお金と切符を販売して得た乗車賃など入っていたと思われます。


 車掌さんは乗客への切符販売と案内、乗降用扉の開閉など行っていました。

バスの中で車掌さんは、中扉のすぐ後ろに、乗務する場所がありました。

お客さんが乗ると、切符販売にやって来るのですが、走行するバスの中で立ったまま販売するので、結構大変だったのではないかと今にして思います。

停留所では、車掌さんが扉を開閉します。

扉を閉めて、発車の準備が整うと、ブザーを鳴らしたり「発車願います」とアナウンスをして運転手さんに発車の指示をします。


 私の通っていた小学校は、家から約2.5㎞で、歩いて通っていました。

全校生徒の中でも割と遠方の方でした。

姉達とも歳が離れていたし、同じ年頃の子供が近くにいなかったので、小学1~2年生の時は姉達と一緒に学校に行っていましたが、姉達が中学校になると一人で学校に行くことが多くなりました。


 それで、雨が降った時など、たまにですがバスに乗って学校に行った事があります。

我が家に、車がなかった時代です。

始めて一人でバスに乗った時は小学3年生くらいだったと思います。

日頃からバスに乗る事に慣れていない為、乗っている間中緊張して、ドキドキしてました。

それまでに、親と一緒にバスに乗った事はあるはずなんですが記憶にないんです。

一人だと座席に座って居ても落ち着かず、ソワソワです。

車掌さんが切符の販売に来られ、「何処まで?」と聞かれて「〇〇です」とおどおどしながら言うのがやっと。お金を渡すのも恐る恐る。手のひらは汗ばんでいました。なんて初心うぶだったのでしょう( ´艸`)

兎に角、バスに乗ってから降りるまでは落ち着かなかった事をよく覚えています。

普通、子供は乗り物に乗ったらワクワクするんでしょうけど、私はどちらかというと怖い印象でした。

初めて乗ったバスは私の中では動く大きな箱の中に閉じ込められた感じだったんです。ちゃんと目的地で降ろしてもらえるのだろうかと不安でした(笑)

車掌さんが「次は〇〇、次は〇〇、お降りの方はお知らせください」と私が降りたい停留所の名を告げられると私はすくっと立ち上がって

「降ります」と小声でささやきました。

他にも降りるお客さんがいたので(良かったぁ~)と思い、その後ろに並びました。

車掌さんがドアを開けてくれて無事、バスから降りた時はホッとしました。

開放感でいっぱいでした(笑)

今、思うと笑ってしまうような可笑しな子供の頃の初バス乗車体験話です。


 最近では、田舎という事もあり、車は必需品です。

殆んどの人が車の免許が取れる年齢になったら免許を取得し、一家に成人した人数分車があるのが当然のようになっています。

そのせいで、バスのローカル線は一日、3~4便位しか運行していません。

下手をすると、お客様が一人も乗車してない場合もあります。

私自身も車がある為、バスに乗る機会は殆んどありません。

しかし、今、あの頃の鼻ありバスがあったら、乗ってみたいなって思います。




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