5 足踏み式餅つき機
私の子供の頃は、12月28日が餅つきの日と決まっていました。8が漢字で書くと八で末広がりで縁起が良いからだと母から聞かされていました。
その日は朝から、家族総出で餅つきをします。
我が家には、足踏み式餅つき機がありました。
堅く重い木材で作られており、足踏み式でまるでシーソーのような原理です。
足踏みする反対側の先は杵になっています。足踏み式で杵を上下に動かし、丁度杵の先がその真下にある臼に届くようになっており臼の中に蒸しあげた餅米を入れてついていきます。
この足踏み式餅つき機は、蔵の中に入ってすぐ左側に設置されていました。
父と私達姉妹は代わる代わるに足踏みをして、臼の中の餅米は母が手水を付けて均等につくように回していました。踏む側とこねる側と呼吸が合っていないと、母の手の上に杵が当たる事になるので注意が必要でした。父も時々母と交代してこねる側に回っていました。
28日はペッタン、パッタン、ペッタン、パッタン…………。
朝からずっと餅をつく音が響きます。
私は子供心に足踏みするこの作業が面白く楽しかった記憶があります。
手でつくのとは違って足で踏むのは子供でも出来て楽でした。
もし、しんどくなっても姉が二人いるので交代すれば済むことでした。
さて、つきあがって餅になったら、母が一枚のテーブル位の大きさの板の上に餅粉を振ってくっつかない様にして、小さくちぎっていきます。
父と祖母と私と姉達は柔らかいうちに急いで、餅をこねて形よい丸形にしていきます。
丸めた餅は、木製の薄い厚さの木箱に並べていきます。
事前に母が炊いていた小豆のあんこも入れた餡入り餅も作ります。
鏡餅用の大きさのも作ります。床の間用、仏壇用、神棚用など。
1回に一升分の餅米をつくのですがそれを5~6回くらい繰り返してついていきました。
中に、豆を入れたり、青のりを入れたり、ピンクや黄色の色粉で色を付け、砂糖を入れた甘めのかきもちも作っていました。
殆んど半日以上かけて大量に餅つきをしてました。
こんなに食べるのかという位の量です。
でも、お正月には、親戚が泊りがけで来るし、お雑煮も一人、4~5個くらいお餅を入れて、みんなよく食べてました。
お正月三が日に食べるお雑煮以外にも、きな粉餅にしたり、砂糖醤油で甘辛く味付けて食べたり、醬油と海苔で磯辺焼きにしたりとお餅はよく食べていました。
お餅つきをしたお昼には、早速つきたての餡入りお餅を家族みんなですぐに食べていました。つきたての餅は柔らかくって美味しんです。自分で揉んで形作った餅は父や祖母に比べると綺麗な形ではないけれど、一番可愛く見えて「これはうち(私)のじゃけぇ」と言って得意げに食べてました。
あとはお正月用に、何枚もの木箱に重ねて保存してました。
この餅つきをするといよいよお正月が来るんだなって実感してました。
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