7 汲み取り式トイレ

 生まれた時から、我が家のトイレは、汲み取り式トイレでした。

日本で使われてきた落下式便所の一つで、別名「ボットン便所」と呼んでいました。

若い方が聞いたらビックリΣ(゚Д゚)でしょうね。

だってね、下を覗いたら、見えるわけですよ。「お〇っこ」や「う〇ち」が……。

一応、使用しない時は便器に蓋が出来るようにはなっているんですけどね。

当然、臭いはするし、夏なんかハエやハエの幼虫のウジ虫も湧いちゃったりして。今、考えてもゾっとします。

でも、これが当たり前だったんです。

私は田舎だったので、そうだったんですが、同じ頃の人でも都会だったら違っていたのでしょうか?

トイレットペーパーはもちろんありません。

「落とし紙」といって探したら今でもある(かなり紙の質は昔より向上している)みたいなんですが、やわらかい四方20センチほどの白い薄い紙を重ねて使っていました。使用後、そのまま便槽に落とす(捨てる)ので「落とし紙」と呼ばれていました。

紙なら何でも「落とし紙」になり、新聞紙を手で揉んで柔らかくして使っていた時もありますΣ(゚Д゚)

 

 昔は人の糞尿ふんにょうを肥料にしたものを下肥しもごえと言い、畑などの肥料として使っていました。汲み取った糞尿を肥溜こえだめなどで暫く寝かせて、腐らせてから利用してました。

 肥溜め(野壺のつぼとも)とは、伝統的な農業設備の一種。農家で出た糞尿を貯蔵し、下肥しもごえという堆肥たいひにする為の穴(外見は井戸に似ている)です。


 昭和30年代に入り、化学肥料の普及と共に使用は急減しましたが、私が小学校の頃までは、我が家もトイレから汲み取って畑にある肥溜めに貯蔵して畑の肥料として使っていました。

 父が時々、トイレから柄の長い柄杓ひしゃくみたいなもので、糞尿を汲み取って筒形の桶に入れて畑まで運んでいたのですが、私はそれがとても嫌でした。臭いがあたり一面に充満して我慢できなかったのです。そして今は父が元気でやっているけど父が出来なくなったらいつか私もこの作業をしなければいけなくなるのかと思うと恐怖でした。

 幸い、中学校になって家を新築したら、家にはバキュームカーが来て汲み取ってくれるようになったのでホッとしました。その時から畑で使用することもなくなりました。やれやれです。


 今は和式トイレから洋式の水洗トイレに変わり温水洗浄便座ウォシュレットになりましたね。トイレに関してはあの頃が懐かしいとは思いません。断然今が良いです。

お気に入りの壁紙を貼ってお気に入りの雑貨を飾って我が家のトイレもおしゃれになりました。


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