第12話 自動車学校 その7

ついに土曜日、最終試験がやってきた。教室の前の方の扉を開けると、数十人の視線が一気に集まった。そしてそれは一瞬であり、お喋りしてた人はお喋りの続きを、本を読んでいる人は本を、スマホを弄っていた人は弄りを再開した。僕はギョッとしながらも前から二番目の席に腰を下ろし、「その時」を待った。二十分すると前のドアから二人のおじさんが登場した。一人は柄の悪そうなおっさんで、もう一人はその人に比べたら普通のおじさんだった。


「いいかお前ら、緊張しているだろうが、いつも通りやればいいだけだ。余計な事は考えるな。これは加点方式ではなく減点方式だ。ちゃんとやれば通る。それと、前々から運転しやすい様な靴や格好をしてんだろうなぁ?」と席と席の間を靴を確認しながら通った。


(ハイヒールなんて履くわけないし、ジーパンだし、楽勝だべや♪)


そんな時、柄の悪いおっさんが僕の横に止まって


「おい、靴見せてみろ」


と聞いてきた。てか疑ってきた。


「はい」


と左足を見せると、そのクソ野郎は


「ティンバねぇ……ティンバはダメだよティンバは」


とブツブツ言いながら、僕に注意するわけでもなく教壇に戻ってしまった。僕は頭の中が真っ白の中に「???」が溢れかえった。更に前の方に座っていたせいか、後ろから


「ねぇ、あの人試験受けれるのかな?」


「どんなティンバ履いてるんだろ?」


「てか土曜日の朝に来て受けれないとかwwwウケるwwww」


「ギャハハハww」


僕はその場から逃げたかった。しかし、「試験を受けれないよ」と言われたわけでもないわけで……。また教官達が来るまで耐え忍ぶ他なかった。それに僕はなぁ……僕はなぁ……ナイキのスニーカーなんだよ!!ティンバーランドなんて履いてないんだよ!目ん玉ついてんのか!馬鹿なのか?馬鹿だから間違えたのか!このぉ…………ばぁ~か!!!!!



そして先ほどの教官たちがやって来て、


「では2人で往復でここに帰ってくる事になる。名前呼ぶぞ!〇〇!森!」


僕は目ん玉が飛び出るくらい驚いた。そしてすぐに怒りが湧き上がってきた。


(ティンバ冤罪をかけたまま放置して、何事もなかったかの様に名前を呼ぶだとぉ?終わったらトゲトゲのきゅうりをケツにぶち込んで引き摺り出してやる!!)



待機場で30分ほど待っていると先ほどの〇〇さんと僕の名前が呼ばれた。ソファーに座っていたので顔を上げるとそこには……木村がいた。

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