第九話 ジャパリコインで狂った後の絶叫鑑定マシーンツチノコ
あれからアライさん達は拠点のアライさん邸に戻った。
次の日の朝、これからツチノコにジャパリコインを見てもらうのだ。ツチノコの家はアライさん邸のすぐ近くにある。ジャパリコイン鑑定をやってるらしく出来のいいジャパリコインは高値で買い取ってくれるのだ。
「アライさん、コインは持った?」
「もちろんなのだ!ポケットにバッチリ入っているのだ!」
「そんな所に入れてたら絶対落とすのだ。手提げかばん使えなのだ。」
「ぐぬぬ、分かったのだ。よしっ!ツチノコ邸に向かうのだ。」
「ウッス」「ウッス」
と言ってアライさん邸を出て10分ほど歩くと大きい庭付きの洋館が見えてくる。ツチノコ邸だ。庭にはリアルツチノコの像が備え付けてあって曲線がエロくなっている。アライさん達はよく来るから珍しさは感じないが初見さんはきっと驚くのだ。
アライさん達は庭を抜けると洋館のチャイムを鳴らすと、
「んおあ?眠...アライさんか?土曜日の朝から一体何の用なんだ?」
目を擦りながら寝起きのツチノコが出てきた。爬虫類のフレンズは朝が弱いのだ。
「いいもの持ってきたよ。きっとツチノコも白目剥いて吠えまくるはずだよ。」
「上物、なのだぞ。気にいるはずなのだ。」
「その感じ、ジャパリコインか?相当に自信があるようだな。お前達の目は確かだからな。よし、入ってくれ。中で話そう。」
「お邪魔するのだ。」
ジャパリコインと聞いた瞬間、ツチノコの目に鬼が宿ったような気がした。鑑定の鬼だ。ツチノコはジャパリコインの話になるとこうなる。専門家としての血が騒ぐのだろう。
ツチノコ邸の中は豪華だ。世界中から集めた宝物が美術館のように飾られていて正面玄関にはデカイ階段がある。赤をベースにした内装はまるで某弾幕ゲームの紅魔館のようだ。
最近Vtuberで成功していてコレクションの資金にしているそうなのだ。
そして、デカイテレビがある部屋に案内されると4人は高そうなテーブルに腰掛けた。
「それで、どんなジャパリコインなんだ?見せてくれよ!」
目を輝かせ尻尾を振りワクワク全開な様子で聞いてくる。宿ったのは鬼じゃなくてプロ級ジャパリコインマニアだったのだ。
「これだよ、アライさん。」
「これを見るのだ。」
アライさんはカバンから布の巾着袋を取り出すと、その中からジャパリコインを5枚取り出した。直径は5cmほどで割と大きい。それを見たツチノコは興奮を隠せない。
「んおお〜はぁあああ!?これは、大ジャパリコインじゃないか!?しかも5枚も!?色も光沢も素晴らしいぞ!こんなのどこで手に入れたんだ?闇カジノか?」
「マーライ温泉で見つけたのだ。あのマーライオンから出てきたのだぞ。特殊なパワーもあるかもなのだ。」
「誰かの落とし物でもないみたいで貰ってきたんだよね。」
「2人のおかげなのだ。」
「アライさんは何かしたのか?」
「アライさんはマーライオンと戦っててそれどころじゃなかったのだ。語ろうか?なのだ。」
「マーライオンと!?いや、話が脱線してしまう。後で聞こう。しかしマーライオンとジャパリコインか、面白い組み合わせだな。」
そう言うとツチノコはジャパリコインを手に持った。質感と重さを確かめているのだ。
「んえぉっほおっ!!?」
「ツチノコさん!?」
「これはすごいぞ!ジャパリパーク創設日のジャパリコインじゃないか!」
「「「創設日?」」」
「そうだよ、このコインが発売された直後にセルリアン事件が起きたせいでたったの20枚しか出回らなかった幻のコインなんだ!分かるだろ?めちゃくちゃレアなんだよ!」
「そんなに!?なのだ!?」
「ああ、やばい。本当に譲ってくれるんだな?」
「もちろん、私たちよりツチノコが持ってた方がいいと思うよ。」
「ありがとう!買取額計算してくるからお茶でも飲んで待っていてくれ!」
そう言ってツチノコは部屋を出て行った。それからしばらく部屋を見ることにした。ツチノコ邸は宝箱のようだ、くるたびに面白いブツが増えている。
「純金カコミスル...私もメタリック化してたのだな。」
「純金師匠なのだ!シュワッチ!シュワッチ!」
「マジかよ、だね。強そう」
「小さいけど2人の純金像もあるのだ。」
「マジなのだ!?」
「私まで!?」
何と3人の純金像があったのだ。ギリシャ彫刻のようなイケメンに仕上がっている。きっと有名な彫り師が作ったに違いないぜ。アライさんは自分の像を手に取るとあることに気づく。アライさんの像に鍵穴のようなものが空いているのだ。使える穴はアライさんだけだと直感した。
「これ、お宝の匂いがするのだ。朝の星占いは3位だったからきっと近くに鍵もあるのだ。」
「え?ツチノコに無断でやるのはマズイのでは?」
「大丈夫、中を見たらすぐ戻すのだ。バレないってへーきへーき、なのだ。」
「鍵ならこの辺りで見たのだ。」
「何!?それは本当か?アライさんの新テクで探し出してやるのだ!水の波動!」
この世の物質は全て独特な波動を放っている。その波動をアライさん自身が持つ水の波動と共鳴させることで物の材質、形、重さを知ることができる。要するにシャチの超音波みたいな技なのだ。
「あったのだ!」
鍵は洋風の棚の中にしまってあった。鍵は全身に金箔を塗ったガタイのいいビルダーのフィギュアだ。金のアライさんに金の鍵、何も起こらないはずはない。
アライさんは金箔のビルダーを手に持つと純金のアライさん像のケツにビルダーを突っ込んだ。
その様子をフェネックは引き気味の表情でギン目で睨む、するとアライさん像の上半身が爆発四散すると同時に白煙が広がった!
「ぐほっ!ぐほっ!アライさん大丈夫なのだ!?」
「うっへ!大丈夫、だけど何か爆発したのだ!このパターン、嫌な予感しかしないのだ」
「アライさん、その予感当たったみたいだよ〜あれを見るのさ」
「「な、なんだあれは!?」」
3人が見つめる先には頭がヤギで長身、上半身半裸の色黒ビルダーがいた。この雰囲気、こいつはただのビルダーじゃないニンジャビルダーだ!!!
「ワッショイ!ついに出られたぞ!あのアライグマの化け物に封印されて10年、キツかったぞ」
「お、お前は誰なのだ!?」
「ん?ああ、君たちが封印を解いてくれたのか。感謝する。私の名前はビルダーニンジャ、見ての通りニンジャだ。ところで、ん?...おい待て、そのシマシマの尻尾は!?」
「アライさんの尻尾なのだ?それがどうしたのd...」
そう言う前にビルダーニンジャがすさまじい速さで腰のニンジャソードで斬りかかった!!
「アライさん!!」
「ヤバイ!せいやぁー!!」
ドガッ!!ガッシャアアアン!!
間一髪カコミスルのカラテがビルダーニンジャの脇腹を捉える!!そして奴はツチノコ邸の窓ガラスを突き破り庭に吹き飛んでいった!
「危なかったのだ。アライさん、怪我は!?」
「た、助かったのだ?」
何が起きたか分からずアライさんは寝起きみたいな表情をする。
「アライさん、師匠、構えて。アイツかなりヤバイよ。話通じないタイプの匂いがする。」
「分かってるのだ。アライさん、立てるか?」
「ウッス、やれるのだ」
3人がニンジャのいる庭に出ると、奴は殺戮オーラを放ちながらこちらを見ていた。
「アライグマ、個人的に嫌いなんだよな。農作物荒らすし変な道具で緊縛監禁プレイ、家を勝手に改造して激エロロボットにしたり。駆除しないとダメだよな?」
農作物はともかく激エロロボットとか訳わかんねーのだ。アライグマにそんな能力はあり得ない。だが、敵だというならアライさん達は容赦をしない。
「そんなにアライさんと戦いたいなら相手してやるのだ。3vs1でな!!あれをやるのだ。」
「あの新テクか。相手はニンジャ、不足はないのだ。」
「そうだね。やっちゃおうか」
「アライグマあああ!微塵切りパーティにしてやるぜぇええええええええええええ!!」
「正体現したのだな!狂人め、ニンジャだかモンジャだか知らないがアライさん達は負けないのだ!」
「アライさん、来るよ!」
次の瞬間ビルダーニンジャはニンジャらしい素早さでアライさんに接近
「まずはダルマあああ、ああ!??」
だが、アライさんに攻撃は届かない。強力な風がニンジャを吹き飛ばしたのだ!
「風神拳、拳で気流を乱してバリアを作った。カラテ技らしいのだ。」
吹き飛ばされたニンジャに大きな隙間が生まれる。それをカコミスルは見逃さない。
「今なのだ!師匠!」
「任せるのだ!本気で固めた拳は金剛石より硬いんだよ!喰らえ!白目剥パンチ!」
「ぐわああああ!!」
ニンジャはカコミスルの拳をミゾに喰らい白目を剥いた。もちろん本気なので甲冑なんてバキバキに破壊された。しかし、ニンジャの体力は膨大だ。そこでフェネックの砂地獄で白目剥いて痙攣するニンジャを緊縛プレイすると、3人の合体テクでトドメを刺しにいく。
「2人とも、私に合わせるのだ。」
「アライさんはいつでもいけるのだ。」
「こっちもいいよ」
カコミスルが目を閉じカラテの構えを取る。正拳突きの構えだ。その両隣にアライさんとフェネックがいる。
そして十分に気を溜めたところでカコミスルが開眼!
「カオスアタック!」
強力なカラテを放つと巨大な黄色い握り拳がロケット拳のようにニンジャに向かう、そしてフェネックとアライさんは放たれた拳に強力なパワーを送ると爆発属性が追加されて赤色になった。
これを喰らって生きていられる生物はいない!
ニンジャに拳が突き刺さると大爆発!!
「アイエええええええええええええええええええええ!サヨナラァアあああああああああああああ!!!
白目剥いてるはずなのに敗句は詠むのかよ。そう思った。そしてニンジャは跡形もなく消え去った。
「ハァ、ハァ。やった、のだな。群れの力に勝てるわけないのだな、わっはっは...ってアレ!?2人共どこ行ったのだ?」
気づけばアライさん1人になっていた。それに周りの様子もおかしい。
「ふぇっ!?何だこれは!?ツチノコ邸が、草が、地面が、塵になって消えていくのだ!!もしかして幻術!?ハメられた!?」
ひとり叫ぶアライさん、だが状況はチョーSだ。
周囲は全て塵と化し、アライさん自身も足元から塵になり始める。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!アライさんは、アライさんは死んでたまるかあああああ!!!......」
頭の先まで消えたアライはそのまま思考が動かなくなった。アライさんは死んだのだ?
「おい!目覚ませ!オラァ!!」
ガンッ!!
「痛ったいのだぁ!!」
「ゴリ押しが効いたのだ!」
「師匠、名案だったね〜。本当に起きるなんて」
強烈な衝撃でアライさんの意識は帰ってきた。
壁際まで吹っ飛んだアライは重そうに腰を上げた。
「一体何なのだ?ニンジャは?アライさんは消えたはずじゃ...」
「おい、何言ってんだ?そうか、やはり幻覚を見せられていたんだな。まぁ、状況は説明するから。そこに座ってアーモンドウォーターを飲むんだな。」
「ありがとう?なのだ?」
アライさんはそのまま椅子に座らされテーブルの上のアーモンドウォーターを飲むよう言われた。そして金のアライさん像とビルダーフィギュアが置いてある。
「アライさん、この像にビルダーを刺したんだな?」
「そうなのだ。そしたらいきなりニンジャが出てきて大変だったのだ。」
「そいつは幻覚だ。」
「ッ!?」
「まず、あの像は強力な呪物だ。ビルダーを差し込んだ人間に幻覚を見せる。その中で死ぬと2度と目が覚めないんだと。」
「でもアライさんは起きた。」
「そうだ、幻覚から抜ける方法は2つあるんだ。まず一つは幻覚の中で死の原因を消す、もう一つは無理やり外から起こす方法だ。アライさんを起こした方法だな。」
「アライさんはそんな危険な状況にいたのだな...助けてくれてありがとうなのだ!あのニンジャに負けていたら今頃...ホラーなのだ。」
「ま、フレンズ助けは基本だからな」
「ところでアライさん、ニンジャって何なのだ?」
アライさんは幻覚での出来事を三人に話した。
「甲冑にニンジャソード!?それを三人で倒したのだ!?どこにいても私達三人は最強なのだな。」
「自画自賛だねぇ。そのニンジャ?と渡り合うアライさんも流石だよ、幻覚だけど」
「まぁ、アライさんだから当然なのだ。」
「アライさん、ニンジャってどんな姿をしてたんだ?動きは?すごく聞きたいぞ。」
「落ち着くのだ」
それからは、ニンジャと遭遇するレア体験をニンジャトークをした。今日の体験はパークに広がり、あの同人作家のタイリクオオカミのネタになることだろう。
「それじゃあ、ツチノコ。またねぇ」
「ああ、気をつけて帰れよ。それとアライさん、アーモンドウォーターは忘れずのむんだぞ。精神が不安定になっているしな。」
「分かったのだ。」
「またコイン見つけたら来るのだ。それじゃ」
「ああ、またな。」
こうしてアライさん達は帰路についた。ジャパリコインはというと過去最高のジャパリコインだったらしく結構な額を貰えた。アライさんハウスの夢が少し近づいたのだ。
ニンジャ、いつか本物にも会ってみたいのだな。
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