第八話 温泉のマーライオンって超S!アライさんも疲れるよな?

午前中はナメクジに襲撃されて大変だったアライさん達は日帰り温泉に到着していた。

外装は旅館にも負けないカニ系の豪華なガタイをしてアライさん達を挑発している。

これは入ってくれというお誘いなのだ。

いいぜ。アライさん達に拒む理由は無い、

のそのそ温泉にダイナミック入店した。

靴を脱いで銭湯にありがちなあの下駄箱に入れて鍵をかける。それから館内の雰囲気、匂いをガタイで分析しながら受付で入館料を払って奥へと進む。

レストランに漫画スペース、シアタールーム、仮眠室などがあるらしい。しかし、それはメインじゃない。温泉に入ってこその温泉だ。

3人は脱衣所に入り服という名の毛皮を脱ぎ捨てる。最近のフレンズ界隈は人間社会慣れした都会派フレンズだ。アニメのけものフレンズと違って普通に服を脱いで入るぜ。露天風呂には奴がいた。マーライオンだ。口から湯水を垂れ流している変態だ。アライさんはマーライオンが嫌いだ、あの死んだ魚なような目でひたすらに水を吐き出す様は不気味でしか無い。


「ま、マーライオンがいるのだ!?怖いのだ。あのマーライオンからアライさんを守ってほしいのだ。」


「相変わらずマーライオンがダメだね、アライさんは。ほら、手繋いであげるから」


「フェネックありがとうなのだ。」


「じゃあ尻尾で目隠しするのだ。せいやぁー!」


「もふもふなのだ。これでもう怖くないのだ!無敵の布陣なのだ!」


鉄壁のアライさん守護陣が完成するとアライさんに敵は無い。マーライオンは未だにこちらを睨みつけているが大丈夫だ。しかし、大丈夫はいつまでも続かない。マーライオンの口からジャパリコインが吐き出されたのだ。


「おや?あれはジャパリコインじゃないのだ?」


「間違いない、アレはジャパリコインだ!今収集家界隈で熱い超激レアのジャパリグッズ!手に入れた者には幸運が訪れるスピリチュアルパワーまで秘めていると言われる。」


「つまりお宝、お宝がそこにあるのか!?」


「そうだよ」


「周りの客は気づいていないみたいだし、取るなら今のうちなのだな。アライさんどうするのだ?」


「まさか、ガードを解除するのだ!?やめるのだ!マーライオンに喰われるのだ。」


「アライさんには頑張ってもらおうか、マーライオン慣れするかもしれないし」


「や、やめるのだ」


視界を尻尾で塞がれたアライさんが激レアというワードに反応する。が、マーライオンと対峙することになってしまった。アライさんメンタルのアライさんに耐えられるかは分からない。

そんなこと言っても二人はチョーSだからジャパリコインを拾いにマーライオン像に向かってしまった。

フェネックとカコミスルが離れた瞬間、奴はアライさんにギン目で睨みつけてくる。黒目の無い完璧な白目、不気味なのだ。そして奴はアライさんの精神に干渉してきたのだ。きっと夢枕に現れるずんだもんと同じ原理なのだな(笑)。


「おいアライさん、俺が怖いんだってな?」


「ウッス、この世の物とは思えないくらい怖いのだ。アライさんから出て行って欲しいのだ。」


「そうか、アライさん怖いのか?だが俺はSだから出て行ってやらないぞ?アライさんが苦しむ姿を見ると楽しいからな」


「そんな、どうしても出ていかないのだ?」


「いや、水中ブリッジ3分間できたら消えてやるぞ。そこにプールは用意してある。やるか?」


精神世界に20メートル以上プールが出現した。

何でもありかよ。温泉に来たはずなのに精神に軟禁されて白目剥いてしまうのだ。


「分かったのだ。できたら消えるのだな?」


「もちろんだ。マーライオンは約束を破らないって小学校で学ばなかったのか?」


知らねーよ。そもそもアライさんはフレンズだから小学校なんて行かねーよ。と思ったのだ。

それからアライさんはプールサイドに立った。

アライさんの精神力は金剛石ほどでは無いがそこそこ硬い、水中ブリッジだってきっと楽勝だ。


「アライさん、沈め」


「やってやるのだ!のだああああ!」


大きく息を吸いアライさんはプールにダイブした。出だしは好調だ。

深海魚のように脱力して酸素を温存しているとあっという間に1分が経過する。


(これなら行ける、正攻法で帰ってもらうのだ)


そう願った。しかしマーライオンはそんなに甘くは無い。


「ただのプールじゃ面白く無いよな?アライさん。流れるプールにしてやるぜ。」


ゴォオオオオォオオオオ!!


そう奴が言った瞬間だ。プールに水流が発生、アライさんは流され始めた。

いつもなら能力で水流操作してやるところだが精神世界じゃ使えない。


「んぐぼぼぼぼぼぼ」


アライさんは急な水流に対応できず酸素を漏らしてしまう。ブリッジ体制は維持できているが回転して大変なことになっている。


「おいアライさん、気持ちいいか?」


コイツ、変態級のSだ。ジャパリパークには変態のスタッフがたくさんいるがその比ではない。狂人だ。


しかしアライさんも負けない、新テクを開発して精神力で酸素を作り出すことに成功。窒息の危機を回避する。あとは気力を持たせるだけだ。


「精神力で酸素を、そんなこともできるなんてエロいぜアライさん」


何言ってるか分かんねーのだ。さっさと勝って永久追放してやるのだ。マーライオン界にアライさんに手を出すとヤバいことを教えてやるのだ。


「あと1分だな。よく頑張ったと褒めてやりたいぜ。だがここで終わりだ。これを見ろ」


チラッと見えたそれには見覚えがあった。昔研究所で作ったアライさんになれる薬だ。とは言ってもアライさんになることはない、代わりに超強力な媚薬になってしまっている。あのゴジラですら痙攣して吠えまくって白目剥いて失神するらしい。速攻で廃棄命令が出た劇物だ。


「くたばれ、アライさん」


プールにキメものが投げ入れられるとすぐにアライさんに異変が現れる。


「んおおおおおおおおおおおおお」


全身が熱を持ち痺れるような感覚に襲われる。

それはもはや快楽では無いのだ。雷に打たれた感覚に近いだろう。フェネックの幻覚まで見えてくるし淫獣のように白目を剥きそうになる。

絶叫で酸素をほとんど吐くし集中力を維持できないので酸素も作れない。絶対絶命だ。

アライさんが悶え苦しんでいると残りは30秒、


「誰か助けてなのだ!」


アライさんが心の中で叫ぶ!!


返事は無い、アライさんだってヒーローは必要なんだよ。このままアライさんが白目剥いて失神したらどうする?ドジョウの総理大臣が産まれてしまうのだ?カオスになる意識でアライさんは何度も助けを願う。


「まったく、最近助けて呼びすぎなのだ。アライさんは弱いのだ。」


「すんだ、もん?」


現れたのはずんだもんだ。アライさんを危機から救いに来てくれたのだ。


「アライさんは弱点突かれると何もできないのだ。そんなんじゃヒグマも倒せないのだ。もっと鍛えろなのだ。一応なのだ使いだから助けるけどずんだもんはいつでも来れるわけじゃないのだ。」


そう言うとずんだもんはアライさんの口に仙豆をぶち込んだ。全身の痺れが取れ正気を取り戻す。そして3分が経過した。体感30分だ。


「すごいぜアライさん。よく耐えたな。約束通り消えてやる。また水没プレイしような?」


そう言うとマーライオンは姿を消した。

それと同時にアライさんは現実世界に戻ってくる。フェネックとカコミスルがジャパリコインを取るところだった。精神世界の3分は現実の1秒にも満たないらしいのだ。SF映画みたいだぜ。


それはそうとマーライオンを見る。

すると...


バギィいいいん!!


なんと爆発四散して砕けたのだ。

近くにいた二人は目を丸くして驚いていた。


「師匠何してんの?」


「いや、何もしてないのだ!勝手に爆発したのだ!」


それからは温泉の人を呼んでマーライオンの件は終わった。

そして見つけたジャパリコインは愛好家のツチノコに鑑定してもらうことにした。もし本物なら高値が付くらしい。


しかし、アライさんはマーライオンと戦って分かった。アライさんはまだまだ弱い。ナメクジの時もそうだったのだが弱点を突いてくる相手には何もできなかった。もっと強くならないとなのだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る