第7話

 ――――。

 …………っ。

 ……ああ、結局このままか……。


 眠った間に離してくれないかと思ったがそうはいかない。抱きしめられたまま、朝を迎え真冬より先に目が覚めた。

 さて、この状況をどうしたもんか。動けるか?

 真冬を引き剥がそうと試すがびくともしない。すると、


「んんっ。うん?」


 真冬が起きた。そして、僕と至近距離で目と目が合う。


「…………えっ?」

「おはよう……」


 一応、挨拶をしてみる。


「――っ⁉」

「うげっ⁉」


 途端に、僕を突き飛ばしベッドから転げ落ちた。

 脇腹とお尻を床に打ちつけ痛みが全身に走る。酷い仕打ちだな、おい⁉ いきなり、突き飛ばす奴があるか!


「い、言っとくが僕は――」


 ……ひっ⁉

 冷え切った眼差しで僕を見下ろす真冬。その手に持っているのは昨日、買った屍人を倒す武器の鞭。


「弁明を聞こうかしら? ねえ、ナイ」

「えっ……あ、いや、えっと……」

「ねえ、ナイ」

「ひひぃっ⁉」


 僕が悪いのか⁉ この状況、おかしくない⁉

 でも、説明しないと今この場で僕が殺される!


「わ、分かった! 説明するから!」


 と、夜のことを話す。真冬が泣いていたことは敢えて言わず。が、それが逆に怪しまれる結果に。


「そう。ナイを、私がベッドに連れ込んでこうなったと?」

「あ、ああ」

「そこは理解したわ。でも、どうしてナイが部屋に入ってきたわけ?」

「そ、それは……」

「それは? そもそも、ナイが部屋に来なければこうはならなかったでしょ?」

「うっ……。そうですね、はい……」


 気になって様子を見に来たら泣いてて、泣き止ますために部屋に入ってこうなった、なんて言えない! 余計に怒りそうだし!


「私に何もしてないわよね?」


 鞭をしならせ、目が笑っていない笑顔を向ける真冬。


「何もしてないです」

「……そう」


 鞭を仕舞う真冬。ほっ、と胸を撫で下ろす。

 抱きしめられて、色々と考えてしまったことは胸の奥に仕舞っておこう。

 朝の一悶着を終え、東三番街へ向かう準備を整えいざ出発。

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