第6話高校でもう一度
反町に通いだしてからは授業レベルの高さや自由な校風に圧倒的された。
しかし一番驚いたのは、暴君である姉が生徒会副会長とかいう役職についていたことだ。
仮面をかぶり品行方正な役員みたいな顔をする姉には開いた口が塞がらなかった。
一年はあっという間に過ぎ、姉は卒業して獣医になるための大学に通っている。
俺はサッカー部と暴君に押し付けられた生徒会という二足のわらじで日々を過ごした。
姉曰く、沈んだ俺を気にした采配だったとか話していたが、体のいい駒が欲しかった説の方が有力だ。
クラスメートはいい奴らばっかりだし、頭がいい奴らは頭がどこかおかしいのか突拍子もないイベントがあったりと飽きることない高校生活だ。
でも隣には誰もいない。
冷静になればあの時もっと言葉を尽くせば、クリスマスに誤解をちゃんと話していればこんなことにはならなかった。
別れた後、美琴が怒っていた。
「二人は言わなくても通じるとか思い込み過ぎだ」と。
俺も恵美も先送りにしたからこうなったのだ。
そもそもどちらかが進路を我慢したらそれこそうまく行かなくなっただろう。
別の学校になったのは仕方がないのだ。やり方をミスしただけで。
やっぱり隣にいて欲しいのは彼女だけなのだ。
切ったのは自分なのによく言うと思いながら俺は夏のトーナメント表に記載された高校名を見る。
男は単純で、偏差値が上がっても思春期の衝動には正直な生き物だ。
3回勝てばシードの慶法が待つブロック予選に出れると書いてあったのだ。
疎遠にしてしまった恵美にはもう彼氏がいるかもしれないし、今更会って何になるとは正直に思う。
でも、それでも、あの日の気持ちが互いに残っているならもう一度だけと思った。
それに、お前が来なかった反町は良い高校だろうと見せたかった。
運良く部員のレベルが高い今年は、いつもは超えられない市の大会を突破した。
俺は遂に慶法の待つ県ブロックにまで歩みを進めた。この試合からスタンド付きで芝の試合となる。
もしかしたら吹奏楽部がいるかもと思い練習のピッチに出るのだった。
恵美side
泣いて帰った私を見たお母さんには事情を話した。
怒られた。
そして謝られた。気付かなくてごめんねと。
わんわん泣いて落ち着いた私は健に会いたくて仕方がなかった。
でも、それは違うと思った。
裏切った私がノコノコ会いにいくのは。
だから高校で頑張って今度は私が告白しようと思った。
絶対に断れないくらいかっこいい姿を見せつけて。
卒業後に吉彦くんに偶然会った。
彼は「アイツはたぶん不甲斐ないって思ってるんだ。自分が。そしてお前は周りを気にするくせに身内には甘える」と言う。
「だから互いに納得したらやり直し試してみろよ」
その助言は私の原動力となった。
入学してみると幼稚舎からの進学組など最初は壁を感じた。
しかし、クラスメートになればすぐに仲良くなれたし、再スタートを期して吹奏楽部に入部した。
健に教わった学習の型は演奏の練習でも集中することに一役買ってくれた。
上達した私は一年生でAチームに入れてもらえるくらいに進歩したのだ。
動機はバカをして振られた私がリベンジするという不純なものだ。
でも今の私はとにかく前に進む意欲があった。
隣にいないなら隣に連れてくるんだ。
そう思うようになっていた。
流石に部活にかまけた私が別の高校の男の子と接点などできず、ニ年生になっていた。
副パートリーダーとなりパートリーダー会議に出るようになった私は、運動部の応援スケジュール管理を任されることになった。
そのプリントには健のいる反町が慶法と当たる可能性があるとの記載があった。
私は全力で反町の勝ち上がりを祈って、私が参加できる様にスケジュールを組んだ。
結果私は今、スタンドにいる。スコアボードに書いてある対戦カードは『反町ー慶法』だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます