第3話クリスマス戦線異常あり


音もなく教室から離れた俺はフラフラと家に帰った。


今日は元々二人で帰る約束もなく別々に帰宅する予定だった。だから急に誘われたサッカー部に顔を出したのだ。

何も考えられなくて熱いシャワーを浴びた。

正直、しんどかった。


浴室から出るとメッセージアプリの通知が届いていた。

予想通り恵美のアカウントだった。


『ごめん!23日どうしても断れない形で楽部の友達に誘われちゃって…。映画は別の日にできないかな?』


その言葉に今日の会話が頭に浮かぶ。

それでも盗み聞きした罪悪感というか負い目が心を支配して飲み込むしかなかった。

『OK年明けまでやってる映画だからまた合わせていこう!』

『うん!』

すぐに返ってくる返信に落ち着きを取り戻すという自分のチョロさに辟易としながらも、やっぱり恵美が好きなのだと再確認するのだった。


23日は一人模試対策をして過ごし、24日は模試本番だった。

恵美と同じ学習塾で受ける為、クリスマスプレゼントは鞄に忍ばせてきた。

前に雑貨屋で欲しがっていた栞とちょっとだけ背伸びした紅茶の茶葉だ。


模試は順調に進み、お昼休憩は吉彦と美琴を含め4人でワイワイ楽しんだ。

その場で恵美にプレゼントを渡すとめちゃくちゃ喜んでくれたし、恵美からのプレゼントは前に欲しいと話をしたボールペンだった。

覚えていてくれた事が嬉しくて心からありがとうを伝える。

余韻を楽しむには短すぎるお昼休憩が終わり午後の模試もつつがなく終わった。

一緒には過ごせないけれど互いに大切と思い合っていると思えた良い1日だった。そのはずだった。


夕食を終えた俺はアイスが食べたいと叫ぶクリスマス前に彼氏と別れた姉の横暴で駅前のアイスクリームショップまで自転車を走らせていた。

「パチパチするアイスはあそこにしかないのよ!」と夕食後に弟を駅前まで送り出す命令をする姉は暴君だが、逆らえないのが我が家のルールだ。

「お駄賃として好きなアイスを買っていい」と渡された千円札でチーズケーキのアイスを買った。前に恵美から教えてもらったアイスでそれから密かにハマっているのだ。

暴君からの任務を達成し自転車にまたがった。その時だった。


家族と外食のため、イブにはデート出来ないと話していた彼女が西野迅と二人で歩いている姿を見たのは。

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