第2話クリスマス前の疑心
クリスマスが近付いた12月半ば俺は少し気落ちしていた。
12月24日は最終模試の日程となり、ほぼ1日潰れてしまう。同じ試験を恵美も受けるし、恵美は家族で外食する予定との事だった。
つまり、イブは模試で日中デートは出来ず、夜は家族との予定で逢えないのだ。
付き合い初めて最初のイブにはちょっと期待をしたが、こればっかりは受験生と考えれば仕方がなかった。
代わりに23日に図書館を早めに切り上げみなとみらいで映画を観る予定を2人で立てたので良しとするしかない。
俺はそう思いながら受験勉強の息抜きに久々に サッカー部に顔を出して軽くボールを蹴った。
急に誘われたグラウンドで軽くかいた汗は気持ちが良かった。
程よい疲れを抱え、着替え様とした時、制汗剤をロッカーに忘れたことを思い出し、俺は教室に向かうのだった。
教室が近付くと彼女の声とクラスメートの声が聞こえてくる。
扉に手を掛けようとしたその時だった。
「恵美は付き合わないの?」
「うん。受験生だし、彼氏は高校に入ってからで良いかなって」
「勿体無いおばけがでるよ」
「たしかに」
「もうやめてよ」
どうやら吹奏楽部の吉野さんと川藤さんが恵美と恋バナというヤツをしている様だ。
俺は辞めればいいのに興味本位で俺は聞き耳を立ててしまった。
「でも恵美は迅くんから告白の返事保留にしたんでしょ?」
健はこの言葉に驚いた。
迅くんとはクラスメートの西野迅のことだろう。
音大を目指している様でピアノが上手いらしい。
あと顔は所謂イケメンだ。
「保留ってわけじゃないって。今は受験もあるし考えられないって言ったの」
「でもそれって受験が終わったら検討するってことでしょ?」
「正直わかんない。いまは付き合うとか考えられないし、迅くんの事あんまり知らないし」
「そっか…。てっきり恵美のタイプじゃないのかと思っていたけど脈なしではないんだね」
「そうそう。恵美は健くんみたいな優しい感じの男の子が好きそうだなぁって思ったのだけど」
自分の名前にドキンとした。
「ないない。小学校一緒だから友達だけど、顔は迅くんの方が好みだし健の優しさは彼氏にしたら物足りなさそうだし」
「あー、たしかに健くんって勉強出来るしサッカー部で鍛えているけど優しそうなオーラ出すぎていてワイルドさはないね」
「それなら迅くんの方がギラギラしていて恵美の好みに合うと思うなぁ。」
俺は聞かなきゃよかったと思った。
流れに合わせただけの言葉かもしれないが、恵美は西野の方が好きになりかけているのかもしれない。
焦った。
飛び出したかった。
でも
出来なかった。
「ならさ。23日迅くん誘ってカラオケからのしゃぶしゃぶにいかない?人となりしれば付き合う付き合わない決められるじゃん」
「えぇ…。23日は勉強の予定だから無理よ」
そうだ。二人で出掛ける予定の日だ。
「部活卒業してから恵美と遊んでなさすぎてつーまーんーなーい」
「女の友情は儚いのかしら」
「うぅ…。わかったよ。23日はそっちに行くよ」
俺とのデートが流れた瞬間だった。
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