君の隣に

@nishikida00

第1話初恋・告白・夏休み



間山健中学三年生。

俺には自慢の彼女がいる。

そう。吹奏楽部の伊藤恵美だ。


小学校三年生の夏に転校してきた彼女は、持ち前の明るさと可愛らしい笑顔であっという間にクラスの中心になっていた。

いつしか仲良くなり、幼なじみの吉彦と美琴を含めた四人組で遊ぶ機会も増え、自然と隣に居ることが増えていった。

そして、卒業アルバム委員として放課後に2人で雑用をこなすうち、人気者の彼女に恋心を抱くようになったのは健全な男子ならば避けられぬものだったと思う。

小学校を卒業し中学校も同じ公立に通う様になった時は嬉しかったし、どんどん綺麗になる彼女にますます恋をした。


だからこそ、今のままでは友達のまま終わってしまうと一念発起した中1の夏休みから勉強とサッカー部の活動に全力で臨むようになった。

女の子に振り向いてもらいたいという不純な動機ではあっけれど、思春期の男子にとっては良い人参だったのだ。

気が付けば、学力では県内トップ校の合格がある程度見える位になっていったし、身体も筋肉がついて男っぽくなった(部活は市大会二回戦敗退だったが)。

それでも若干のヘタレ気質は抜けず、仲のいい男友達ポジションに安穏とした日々を過ごした俺は、中3の夏休みに恵美が告白されている場面に遭遇してしまった。

自分がこのままポジションを維持する行動を取り続けたら後悔すると、強く意識した俺は必死に勇気をかき集め彼女を夏祭りに連れ出し思いの丈をストレート過ぎる言葉で伝えた。

「ずっと好きだった!俺と付き合ってください!」

びっくりした表情をした恵美は笑って答えてくれた。

「こちらこそ宜しくお願いします」


世は真夏、心は桜満開の春だった。



恵美と付き合い始めてからの夏休みは毎日が楽しかった。


受験生ということもあり、遊ぶというよりは野毛の図書館で勉強会をしてその後に横浜を歩くことがデートの代わりだった。

恵美に「勉強を教えて」と言われるのが嬉しかったし、2人で取り組みだしてからお互いの学力は一段上がった実感があった事も充実した夏休みとなった理由だったかもしれない。


夕立が酷い日に逃げ込んだ喫茶店では、実は紅茶に詳しいという事を知ったり、食事の好みが似ていたり、雑貨の趣味は真逆だったりと知らない彼女をどんどん知った。

どれも楽しく輝いて見えた。


そんな夏休みの最終日に恵美から提案があった。

「付き合っていることはナイショにしよう。みんな受験生だし浮かれた姿は見せたくないし」

これは俺も同意見だった。

「確かに。夏休み遊んでいた様に見えちゃうかもな」

頷きあって、笑った。

「でも美琴には教えたいな。戦友だし」

「なら俺は吉彦には伝えようかな。親友だし」

その日小学校から仲のいい友達に付き合い出したと報告した。凄く喜んでくれた。


俺には、最高の彼女と最高の友人がいる。その事実がどこまでも嬉しかった。

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