恋愛その二~悲劇の愛に物申す~
今日は友人と劇を見に行きました。
バレエの新作が発表されるので楽しみにしていたんです。なにしろ、前評判から凄かったのですから。身分違いの悲恋ものとして。
恋愛を勉強中の私には見るべき劇だと判断したのですが……。
「不誠実な男が救われるなど世の中間違っていますわ」
「お嬢様、どうなさったのですか?今日の劇は良くなかったのですか?前評判は良かったはずですが……」
「ミリー、実はね……」
私は早速この胸のムカムカの理由をミリーに打ち明けたのです。
――ジゼル――
村娘ジゼルはとある青年と恋人になった。ところが、青年アルブレヒトは良家の子息で、しかも婚約者までいた。
ショックで狂い亡くなったジゼル。
アルブレヒトはジゼルの墓参りの訪れ、そこで精霊になったジゼルと再会するが、精霊女王の怒りを買ったアルブレヒトは殺されそうになる処をジゼルが必死にアルブレヒトのために命乞いする。
「馬鹿みたいですわ」
「お嬢様、ジゼルはアルブレヒトを死ぬほど愛していたんですよ」
「まあ、実際、死んでしまいましたけど。自分の嘘のせいで殆ど狂い死にしたも同然の恋人の墓参りによくこれましたよね? 神経が図太いといいますか。一体何を考えていたんでしょう?」
「亡くなった恋人の墓参りですからそう仰らずに」
「のこのこ墓参りしたせいで精霊女王から殺されかかった場面は実に小気味良かったです!なのに、ジゼルが命乞いして生かすんですよ?興ざめです!あそこは八つ裂きにする場面でしょう!」
「愛するアルブレヒトを守りたかったんですよ」
「自分を騙して裏切った男ですよ?」
「言いだせなかっただけです」
「?元々婚約者がいましたから、村娘のジゼルは弄ばれてしまった側です。仲間になったジゼルに生前とはいえ、そんな目に合わせた男に怒りをおぼえない精霊はいません。まったく、あのまま精霊達に殺されれば、名実共にアルブレヒトはジゼルだけの物になりますのに!」
「生きて欲しかったんです」
「アルブレヒトを生きて返せば、彼は婚約者と結婚していずれ子供も生まれて、きっと普通の家庭を過ごして年老いて亡くなるでしょう。その時に
「ジゼルは自分の分まで生きて幸せになって欲しかったんです。そこに損得はありません」
「被害者側の家族や友人からしたらアルブレヒトを私刑したかった事でしょうに」
「お嬢様」
「恋とは難しいですわ。」
本当にジゼルが一人娘だったなら親はやりきれないでしょうに。
村人が貴族に歯向かう事など出来ませんから泣き寝入りです。
精霊女王もそこら辺を理解した上でアルブレヒト殺そうとしたのかもしれませんね。精霊女王からしたら精霊は我が子同然。末娘にジゼルの恋を実らせてあげたい気持ち半分、娘を弄んだ男に対する報復半分といった処でしょう。アルブレヒトが死霊になれば、ジゼル付きの死霊にしてあげたかもしれませんね。
親の心子知らずとはこの事です。
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