恋愛その三~神話の悲恋に物申す~
古代の神話でも恋愛ものは多くありました。
我が国の物ではなく他国の神話ですが、全治全能の神が本妻の女神の目を盗んで浮気を繰り返す話が物語としてコミカルにまた悲恋として描かれているのは実に御見白いです。王国ではこういった神話がありませんから新鮮ですわ。
「本妻の女神様は本当に旦那様を愛していらしたのですね。浮気相手に対しての嫉妬の表われがその証拠ですわ。よくぞここまでの情熱をかけられるものです」
「お嬢様、感心する処ではありません!怖すぎますよ!」
「あら、ミリー。だって、浮気相手を不幸にするためだけに時間も労力も権力もあらん限りの力を使って追い詰めるのよ!痛快です!その上、ご自分は浮気ゼロの貞淑な妻でいる素晴らしい忍耐力の持ち主。このような女性は人間の中でも稀ですわ!」
「…お嬢様。そのような三角関係処か、四角関係、五角関係……多角関係のドロドロものよりも、『オルフェウスとエウリディケの悲恋』の方が泣けますし、素晴らしいですよ」
「ミリーは悲恋物が好きなのですか?」
「いいえ!その、悲恋が好きというよりも『純愛』に心惹かれるんです」
「オルフェウスですか。彼は頭が足りないバカですから『悲恋』にも『純愛』にもなりませんわ」
「お嬢様?」
「わざわざ黄泉の国に行って、冥界の神に特例という形で妻を
「お、お嬢様!オルフェウスは本当にエウリディケが自分の後ろをついて歩いているか不安だったんですよ。だから、ちょっと見て安心しようとしたんです」
「それこそ馬鹿げていますわ。不安という事はオルフェウスは冥界の神を信じていない証拠ではありませんか。オルフェウスよりもずっと高位の神が約束を違えると思う事の方こそ不敬です!しかも約束を破っておいて『もう一度チャンスが欲しい』などふざけた事を言ってるんですよ?冥界の神が慈悲深くなければ、約束を違えた時点でオルフェウスごと亡者にしていてもおかしくなかったと言いますのに!本当に図々しい者は神にも人にもいるんですね!」
「…お嬢様…」
「しかも悲劇の主人公の如く振る舞う姿がよけに腹立たしいですわ。何ですか?絶望して世界を彷徨うって?意味が分かりません。エウリディケを想うなら自決でもして自分も黄泉の世界に逝けばいいものを!悲劇によっているとしか思えません!それに比べて東の国の『イザナキとイザナミ』の神話は実にスッキリとして分かり易いですわ!」
「え!あれはその……理解することではないのでは?」
「イザナキとイザナミ夫婦の方が実に健全です!」
これは文化の違いでしょうか?
東の国の神話はドロドロ感が少なく感じますわ。
この国だけかもしれませんが、兎に角、読んでいて胸のモヤモヤがありません!
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