仕上げの学園 

 

 聖王学園は、別名「完成された学園」とも呼ばれています。貴族の子息と令嬢の“最終仕上げを行う場所”という意味が込められています。

 貴族令嬢にとって、聖王学園を卒業したということは名誉であると共に『いつ嫁いでも可能な淑女である』といった、ある種のお墨付きがついたことを意味します。


 学園で令嬢達は、婚姻前に備えておかなければならない社交界でのお付き合いに必要な教養、マナー、社交術、家政科などを全般的に学びます。学園に通う前に、お抱えの教師によって既に学んでいる令嬢は数多くいます。ですが、この学園は一流の教師達揃い。より高度なものを要求されるのです。


 文学、芸術、音楽、歴史など多岐にわたり深く学びます。特に重点に置かれているのが社交のスキルです。授業内容にも公式な外交や社交の場で必要とされる実践的な礼儀作法、言葉遣い、会話、社会への貢献、語学などが含まれております。


 子息方は令嬢よりも更に専門教育が施され、ここで文官か武官の分かれ道ともいわれております。


 学園は男女ともに三学期制。

 学期の終わりごとに試験があり、その結果発表が掲示されるそうです。


 それも一番から最下位まで。


 私も試験は初めてなので緊張してしまいましたわ。

 結果は中の上。

 まあまあの成績でほっとしました。

 あまりに成績が悪いようなら両親にも恥をかかせてしまいますからね。

 それにしても掲示は何故か。建物も別ですが、男女分けて発表した方がいいのではないかしら?


 疑問に思っていた後日、婚約者様から呼び出しがかかりました。と言っても、私が公爵邸に赴くだけですが。学園に入って以来、会う事もままならなかったので、会うのは数ヶ月ぶりです。




「どういうことだ」


 メイドから受け取った紅茶を一口含んで、早々に放たれた言葉。


「なんのことでしょう?」


 何故か、婚約者様は不機嫌なまま。

 どうやら怒っているようです。声色が既に怒りに満ちてます。けれど、怒られる理由には思い当たらないのですが?


「お前の成績の事だ。なんだコレは?平均点しか取れていないのではないか。お前はこんな成績で恥ずかしくないのか。かりにもスコット公爵家の一員になるというのに。少しは自覚を持て!こんな調子じゃあ、友人達に披露できないじゃないか!」


 私の成績の悪さに怒っていました。

 そうですか…平均はダメですか……。


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