第4話 ロシアを締め上げる各国の対露制裁について
2022年3月6日現在、ウクライナ侵攻を進めるロシアに対して世界各国が多種多様な制裁を課している訳ですが、その代表的なものを3つ紹介していきたいと思います。
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・SWIFTからの排除
先月27日、欧米各国は、SWIFTと呼ばれる国際的な決済ネットワークからロシアの特定の銀行を締め出す措置を実行することで合意しました。
ロシアの軍事侵攻に対して最も厳しい措置の1つとされる経済制裁に踏み切ることになり、この決定は各国の動向に重大な影響を及ぼしました。
SWIFTとは世界各国の金融機関が国をまたぐ貿易などの決済や送金に使うシステムで(国際銀行間金融通信協会という組織名でもある)、対象となるロシアの銀行を国際金融システムから切り離す事によって、世界的に活動する力を低下させるとしています。
具体的には、国際的な決済が不能になることで、ロシアの企業や個人は、輸入品の支払いや輸出品の受け取り、海外での借り入れや投資が難しくなるなどの影響が発生します。
アメリカやヨーロッパ、日本などは、ロシアに対して金融やハイテク分野の経済制裁を既に決めていましたが(日本は半導体の輸出を禁止している)、最も厳しい措置の1つとされるSWIFTからの排除をめぐっては、ロシアからエネルギーを輸入するヨーロッパなどへの影響や、世界的なエネルギー価格の上昇への懸念から一部の国が慎重な姿勢を示していました。
ですが、ロシアの軍事侵攻が開始された今、より強い対抗措置に踏み切る必要があるとの判断で各国の意思が統一された形となりました。
各国は対象となるロシアの銀行を決定して、数日以内に制裁を実施する事となっています。
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・スイスの対露制裁の参加
スイス政府は2月28日、ウクライナに侵攻を継続しているロシアのプーチンさんの資産凍結などを欧州連合(EU)が科した対露経済制裁をスイス国内でも全面的に適用すると発表しました。
スイスは言わずと知れた「永世中立」を国是としている国であり、これまで国際社会の対露制裁から距離を置いていましたが、状況の変化に伴って異例ともいえる強力な制裁措置に加わりました。
海外メディアによると、資産凍結額は1兆円を超えるとの事です。
スイスはこれまで、ロシア軍の侵攻を「最も強い言葉で非難する」としてきてはいましたが、EUの制裁対象となった富裕ロシア人と国内企業の取引を禁止するなどの限定的な措置にとどまり、国内外から批判の声が上がっていました。
ですが、これからは、EUの制裁を全面適用することで、プーチン大統領やラブロフ露外相らへの金融制裁が直ちに発効され、制裁対象のロシア企業、個人が保有する資産が凍結される事となります。
スイス政府はEUの制裁適用発表後の声明で、方針転換の理由を「欧州の主権国家に対するロシアの前例のない攻撃が決定的要因になった」と指摘しました。カシス大統領は記者会見で「ロシアは自由や民主主義を攻撃しており、受け入れられない。侵略者の術中にはまるなら、それは中立ではない」と語った。
このスイス政府の決定は大きな歴史の変換点であり、個人的には今後の動向を注視していきたいです。
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・ロシア非難決議
ウクライナ危機をめぐり、国連総会(加盟193カ国)が3月2日、ロシアを非難し、軍の即時撤退などを求める決議案を賛成多数で採択しました。国際社会でのロシアの孤立ぶりが浮き彫りになった形となります。
「私たちの先祖は、私たちの世代が戦争の惨禍から救われるようにと望んだ。だから国連を創設した。今、未来の世代を救えるかは私たちにかかっている」
2日の採決直前、演壇に立ったウクライナのキスリツァ国連大使はこう語りました。
更に、「この決議案はウクライナで悪魔が進むのを止める壁を築くものだ。その壁は皆さんを、特に若い世代を守ることにもなる」と訴え、青い国連憲章の冊子を掲げ、「賛成は、憲章の歴史的な再確認になる」とも訴えました。
結果は、141カ国の賛成多数で採択が決まりました。
「国連憲章に反する」(グテレス事務総長)と批判されても、核使用さえ示唆して侵攻を続けるロシアに対し、多くの国が「これは国際秩序の破壊だ」と危機を感じたことが圧倒的賛成に繋がったと考えられます。特に欧米や日本などは数日前から水面下で各国に賛成を働きかけていたとの情報もあります。
採択にロシアと共に反対したのはベラルーシ、シリア、北朝鮮、エリトリアの僅か4カ国のみでした。14年ではロシア非難採択に反対したキューバやニカラグアなどロシアと関係が深い国々は棄権し、「親ロシア陣営」は大きく切り崩された形となります。2月の安全保障理事会で同趣旨の決議案に棄権した中国とインドは態度を変えなかったが、アラブ首長国連邦(UAE)は賛成に転じました。
この採択に法的拘束力は存在しないものの、国連の存在意義を示すという意味では非常に大きな出来事でした。
第4話はここまでです。
次回、第5話では、ウクライナ情勢が日本に及ぼす影響について解説していきたいと思います。
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2022年3月7日 霊凰より
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