第2話 ドキドキマーキング
「おはよう藤原くんに絵里奈。ホントに仲良いのね」
校門に着くと挨拶してきたのは風紀委員の梶原さん。
「えへへ〜そうなの!」
俺に腕を絡ませたまま、だらしのない顔をして絵里奈は言った。
「風紀委員として心配だわ」
「大丈夫、健全な付き合いだから!ね?
フラッシュバックするのは毎朝繰り広げられる光景だ。
朝起きると美少女が跨って好き放題してるのである。
心臓に悪いというか股間に悪いというか……とにかく青少年の健全育成に悪い。
「……お、そうだな」
「意味ありげな間が気になるところね」
梶原さんは疑うような目付きで俺を見た。
「大丈夫だ、問題ない」
「ま、そういうことにしておいてあげるわ。でもそれ、死亡フラグよ?」
そう言うと手をヒラヒラと振りながら風紀委員の仕事へと戻って行った。
◇◆◇◆
「ちょっと薄くなって来ちゃったんじゃない?」
昼休み、いつも通り空き教室にやってきた瞬間、絵里奈が俺の首を見て言った。
襟で上手く隠しているキスマークのことを言ってるのだろう。
いつの間にか絵里奈の腕が後ろから回ってきてワイシャツのボタンを外していく。
「こんなところでやめろよ」
「いいじゃん!誰か来たら見せつけてやれば!」
躊躇なくボタンを外すと絵里奈は俺の前に回った。
「う〜ん、やっぱり薄くなってる!」
「目立たなくなって何よりだ」
誰かに見られたら変な噂経つこと間違いなしだ。
「かぷっ!……んっ」
そんな俺の考えはお構い無しに絵里奈が首筋に吸い付く。
「家帰ったら好きなだけやらせてやるから今はやめてくれ」
「……ちゅぱっ……れろ」
吸うだけじゃなくて舐めてるし……。
てか、この教室に向かってくる足音が聞こえるんだが……。
どっかに隠れないと!
とりあえず俺の首を舐めることに夢中の絵里奈を抱きかかえる。
どっか隠れられる所は!?
部屋を見渡すと――――――あった!
掃除用具入れだ。
ラッキーなことに空き教室だから掃除用具は入ってない。
何とか二人入れるな。
ゼロ距離ってぐらいに絵里奈と近いが日常と化した異常行為がバレないために今は我慢だ。
掃除用具入れには、あっという間に女の子らしい甘い匂いが充満する。
「なんかラブコメみたいだね!」
目線を下げるとニマニマと笑う絵里奈と目が合った。
「さっきこの教室に入ってく人を見たのだけれど」
教室の扉を開けて入ってきたのは梶原さんだった。
「気のせいかしら?」
隈無く探す、とばかりに教室を歩き回る梶原さん。
頼むから早く出てってくれ。
「気のせいじゃないですよー」
小声で絵里奈が言う。
そして俺は気付いた。
俺の腹部で踊る柔らかな感触に。
梶原さんにバレないことも大事たけど理性を保つ方が今の俺にとっては大事かもしれない。
「あれ、黙っちゃってどうしたの?」
下から上目遣いに見上げる絵里奈。
そして何かに気付いたのか、胸元を不用意に俺に押し付けた。
「これが気になっちゃうのかぁーほれほれ!」
服越しにもわかる柔らかな感触、これはもうダメかもしれない。
何としてもこの状況から脱却しないと!
そう思って脳裏をよぎった言葉を口にする。
「俺も男だぞ?」
掃除用具入れの中に漂う沈黙。
少しして急に顔を赤らめた絵里奈は言った。
「大夢になら、襲われてもいいよ……?」
恥じらいながら言う姿が本音なのか演技なのかはわからない。
でも一つわかったことがある。
これ以上は、本当にダメだ。
「もう、無理だぁぁぁっ!」
掃除用具入れの扉を蹴り開けて外に出る。
「ってヤバい!梶原さんに見つかる!」
あぁ終わったぁぁぁぁ。
なんて言い訳しようか。
男女で掃除用具入れの中にいた経験がない俺のマニュアルには、対処法が乗っていない。
どうしよう、どうしよう。
「大夢、
えっ……?
絵里奈の言う通り既に梶原さんの姿は教室になかった。
「あー、面白かったー!」
んーっ、と伸びをして自由気ままな猫のような絵里奈は笑った。
マーキングしたがり幼馴染とマーキングされたがり妹が離れてくれないんだが ふぃるめる @aterie3
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