第十三話 「Сговор на торгах(談合)」

「編集長....」


藻須区輪亜部新聞、3F、会議室―――


「わ、私を呼んだのは何故でしょう―――?」


「―――――、」


すでに、社屋の外には夜の景色が広がり、


室内を薄暗く照らし出す蛍光灯の光が輝く中


第四編集局の編集長である隆和、


太田、そして三咲の三人は


第四編集局の他の局員達が


すでに帰宅している時刻にも関わらず、


この3Fの会議室に集まっていた....


「な、何故私がここに呼ばれたのでしょう―――?」


すでに退社時刻も過ぎた時間ではあるが、


隆和、太田によってこの会議室へと


連れて来られた三咲は、広く、


ガランとした中央に置かれている


円卓の席に着き、思い思いに


適当に席を離してを座っている


隆和、太田に視線を向ける


「―――お前も、分かっているだろう」


「な、何がですか?」


普段とは違い、どこか重苦しい雰囲気の


隆和の口振りを見て三咲は


困惑した表情を浮かべる


「昼間の礼文――――」


三咲と一つ椅子を飛ばした隣の席、


ちょうど隆和の向かい側の席に座っていた


太田が、隆和に合わせる様に口を開く


「昼間の、礼文―――...」


「れ、礼文くんがどうかしたんですか」


「――――....」


"ガタッ"


「・・・・?」


"カタタタタタ....


「・・・」


三咲の言葉に自分の体を円卓に向かって向き直すと、


太田は卓の上に置かれた自分のパソコンの


キーボードを軽く指でなぞる様に弾(はじ)く


「本社からの直接表彰―――、


 そうですよね? 江母井編集長?」


「ん」


隆和は、太田の言葉に


仏頂面(ぶっちょうづら)を浮かべながら


短く返事を返すと、室内に向かって声を上げる


「―――ここの所の、礼文の記事の掲載率は


 今、この会議室に集まったこの場にいる


 俺達三人の記事の掲載率を大きく


 上回ってる...」


「そ、それが何なんですか?」


「―――――、」


"コッ コッ コッ コッ――――


「そして、今度は、本社からの直接の


 表彰だ――――」


「・・・・」


"コッ コッ コッ コッ....


「・・・・」


あまり感情を見せず、無表情で何故か


広い会議室の円卓の周りを歩いている隆和を


三咲は無言で見る....


"コッ!"


「―――このまま、礼文が


 このモスクワ支局で記事を

 

 掲載され続けて行ったら


 どうなると思う―――?」


「ど、どうって―――、」


突然、自分の席の前で立ち止まった隆和が


自分を見下ろしているのを見て、


三咲は椅子の上で体を少し後ずらさせ


思わず距離を取る....


「アロ!・コムソモーレツへの掲載率―――、


そして、Earth nEwsへの記事の掲載―――...」


「・・・・」


「更に、ヨーロッパ管区統括部長である、


 河野総局長にも、礼文は


 気に入られている様だ――――。」


「更に、今度は本社からの表彰ですか――――」


「・・・・ん」


自分の言葉に合わせる様に


太田が言葉を続けたのを見て、


隆和はまた、短く返事をする....


「このまま行けば、礼文はどうなると思う―――?」


「―─―っ・・!」


自分の顔の前に顔を寄せて来た隆和に、


三咲は目を大きく見開く――――....

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る