二刀
林城 琴
二刀
彼は考えていた。
それについては折りに触れ気になっていたのだ。
刀。
彼が得意とし、また、この頃の男といえば、それを振り回すのが習わしのようになっているそれだ。
刀そのものが気になっているのではない。
問題は違和感だ。
刀は両の手で持つものではないかと思いはするが、片手に持って振りかざし斬りかかってくる者がしばしばいる。
また、状況によっては自分も片手で斬りかかるまたは応戦することがないではない。違和感はその時に発生する。
お互いに片手で刀を持っていた時のことを考えてみる。
斬りかかられる。受ける。これはそこそこ自然に出来る。
斬りかかられる。よける。そして斬りつける。ここでやややりにくさが出てくるのだ。
斬りかかられる。受けてはじく。切り返す・・・ここにもなにやら無駄が出る。この無駄がなんとも気持ち悪い感じがする。
なんとかならないものだろうか。
彼は片手で刀を振ってみる。二、三度振る。
次は、逆の手に刀を持って振ってみる。当然ながら振りにくい。精度も力もまるでつかない。角度もうまくない。
斬りかかられる。受けてはじく。切り返す・・・。ここの無駄。なんとか活かす方法はないだろうか。はじいて・・・。
宮本武蔵。
彼は生来左利きであった。
斬りかかられる。受けてはじく。はじきながら斬りつける。
右で斬りかかられたものを左で受ける。左ではじきながら右で斬りつければ、あの気持ちの悪い無駄が消えるどころか、より活かせることになりはしないか。
もちろん今の状態で、右の手でうまく刀を操れはしない。
しかしこれはひとつ、修練してみる価値があるのではないだろうか。
発想力と実行力。そして器用さと粘り強さ。彼にはそれが備わっていた。
二刀流の誕生である。
二刀 林城 琴 @Meldin
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