すさびる。『男子ってホントこういうの好きよね』
晴羽照尊
男子ってホントこういうの好きよね
――二年二組の教室にて――
「っしゃあ! 気合い入れていくぜ!」
そう言って火ぶたを切るのは、
誰もが憧れる、もっともメジャーな二刀流だ! たいていはクラスのムードメイカーが務める! むしろ平均以下の生徒がそれを名乗ろうものなら、その日の掃除がなんだか気まずい雰囲気になるぞ!
「ふっ……ごみは俺が確実に受け止めよう」
そう言って腰を落とすのは、
見た目は地味だが、花形である
「いいからとっとと終わらせようぜ~」
気怠い声を上げた、その男。そして彼の後ろに控える二人を含めた三人こそが、
日々
「…………」
そんな騒がしい者どもを冷めた目で一瞥し、自らの職務に戻るのは、
粉まみれになるので倦厭される役職だが、その実、仕事内容は簡単だし、チームワークもクソもない! ゆえに、チームプレイの苦手な、クラスカーストの低い男子がなんとなく押し付けられるぞ! でも、担当する彼は自らの職務に誇りを持っており、それでなけなしのプライドを保っていたりする!
「ひゃっはー! おらおらおらおら!」
明らかにヤバそうなのが、
黒板を綺麗にしている
「じ、じゃあ、ボクはごみ、捨ててくるから……」
誰にも聞こえない声でぼそりと呟くのは、
最底辺のいじめられっ子が、空気を読んで担当する役職だ! 最初は押し付けられていたけれど、いつからか自ら率先して行うようになるぞ! ごみ収集場の臭いや、重いごみ袋を持ち長い廊下を進むのは気が重くなるが、誰とも関わらなくてよく、技術も必要としないこの仕事は、意外と適材適所だったりする!
こうして各々の役回りは決まり、清掃はわちゃわちゃと進む! ときには野球が始まり、あるいはチャンバラごっこも織り交ぜつつ、業務は、滞りまくって日が暮れる!
「ちょっと男子! ちゃんと掃除しなさいよ!」
大声とともにクラスへ闖入する彼女こそが、
もはや意味が解らない! なんでこの子、メガネふたつかけとるん!? どうしてその姿で凛として男子に注意できるの!? 本来ならそのようなツッコミをかます場面であるが、彼女の剣幕に押され、男子たちは押し黙る! さわらぬ神に祟りはないぞ!
「ホンット! 男子ってこういうの好きよね! なにが楽しいのか解らないわ!」
なにが楽しいのか解らないのはこっちの気持ちだよ! そう、男子たちは思った! なんでこの女子、メガネふたつかけとるん!?
そう思うと、なんだか腹が立ってきた! 本当に! なんで! メガネふたつかけてんだよ!!
「うるせえよ! 掃除はちゃんとやってるよ!」
リーダーの言葉に、「そうだ! そうだ!」と
「あっそう?」
ふふん、と、笑って、
「……全然掃けてない。雑巾がけもしてないね。ていうか、黒板に関してはさっきより汚れてる」
的確な指摘をする、
「覚悟は、できてるね?」
くいっ、と、
「くっ……やれるもんなら、やってみろ!」
決して、正論などには屈しない! そう決意し、
そうして、見つめ合うこと、二秒!
「せ~んせぇ~! 高橋くんたちが、掃除サボってま~す!」
ふと、
「こぅらああぁぁ!! なにサボってんだ、高橋いいぃぃ!!」
けたたましい雄叫びとともに、
ある日、唐突に現れた
ぎゃあああああぁぁぁぁ――――!! 阿鼻叫喚が、教室を埋め尽くした。免れたのは、偶然、ごみを出しに行っていた
二年二組は、今日も平和だった。
すさびる。『男子ってホントこういうの好きよね』 晴羽照尊 @ulumnaff
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