第四話 遭遇

 

王城に行ったグレイが帰ってきました。


「グレイ。どうでしたか。」

「あーやばかったすね。正直言うとカオスって感じ?」


 いやカオスって……そんなになんですか?


「詳しくどうぞ。」

「おーっす。えっとすね、まずメルトリア嬢は怖いっすね。何か裏がありそうなんで調べとくわ。殿下は気が付いてないっすね。王子教育をちゃんと受けてたらそうなんないはずなんすけどねー。あと多分うちに援助を頼みに来ると思うっすね。対策はしといた方がいいっすね。」


 わあー……面倒なことになる予感しかしませんね……。


「分かりました。じゃあメルトリア嬢に関してはグレイがお願いします。早速宜しく頼みますよ。何かあったらすぐに教えてくださいね。」

「おっす。じゃ、失礼。」


 スッ……って消えましたね……。はあ……色々考えないといけませんね。


  コンコンコン


「あぁ、フィーネ?入ってくれて構いませんよ。」

「……ひっ!は、はい!」


 私って怖いんですかね……専属侍女にも怖がられるっておかしくありませんか?


「それで、何かあったのですか?」

「ティーナ様とマリエッタがいらっしゃったのですが……」


 いや、貴女達……来るの早すぎやしませんか……?


「……行くしかないでしょうね。少し待っていて下さいと伝えておいてもらえます?」

「……はいっ!」


 正直なところは行きたくないのですが……特にマリエッタは……。まあ、行くしかないのですが。さて、早く準備して応接室に行かないといけませんね……。


   ◇


「お待たせしましたね……」

「別に構わなくってよ」

「押しかけたこっちが悪いのですからお気になさらないで?フィア」


 相変わらずですね、マリエッタもティーナも……。


「それは良かったです。で、どうかなさったのですか?」

「フィア……私から宜しいかしら?」


 ……?何かあったのでしょうか?


「マリエッタ?いいですけど……?」

「それがですね…………殿下に『虐めの作戦を練って……ティーナに入れ知恵をしたのは、お前だよな?』などと言われたのです!有り得ませんわよ!」


 …………は?いや……殿下どうしたんですか。本当に。


「……嘘って言ってください」

「「本当です」」

「……はぁー……今すぐ王城行って抗議したいレベルですね」


 後で王城行かないといけませんか……行きたくないです……。


「陛下にお聞きになって下さいとは言いましたけど。護衛も担っている貴女が陛下に報告してくれているのではと思いまして」

「護衛よりも友人の要素の方が断然多いですけれど……でもまあ、大体は報告してますね」


 事実ですからね……?


「友人……!嬉しいです!グリード様に陛下のお名前を出しておいたのは間違っていなかったようで良かったです……」

「友人……まあ貴女のことは私もそう思っておりますわ。ええ。私も陛下のお名前を出しておいて良かったですわ……」


 一応幼馴染なんですが……最近は何があったのか分からないくらいですね。次期宰相のお兄様に聞いてみるのが確実……かもしれません。


「ま、それは私がどうにかしておくしかなさそうですね。叔母様とも相談してみます」

「「ありがとうございます……」」

「……さ!この話は終わりにして楽しく話しましょう?」

「「……!そうしましょう!」」


 そうしてお茶会は長々と続きました。王城は明日行きましょう……。


   ◇


 ふあぁ…………ねむ……。昨日は遅くなりましたから仕方がないのですけれども。さ、朝食を食べたらすぐにお父様に頼み込んで王城に行きましょう。さて、ご飯……ご飯。


「あ、お兄様。お父様。おはようございます……?どうかなさったのですか?」

「ああ、おはよう。フィア」

「ああ、おはよう。そのだな……殿下がお前を連れてこいなどと言っていてだな……」


 ……使えるじゃあありませんか。


「私も王城でやることがありますから丁度いいですね。」

「「行くつもりなのか!?」」


  バァン!


「旦那様もオリヴァーも声が大きいのよ!」

「「……すいません」」


 お、お母様……?


「私はね、貴女が行くというのなら止めないわ。でもね、これは覚えておいて頂戴。私達家族はいつでも貴女の味方ですからね。それを覚えていてくれるのなら、行ってきて頂戴」

「……はい。ありがとうございます」

「あら、家族だもの。当然よ?……さ、早く朝食を食べないと大変なことになってしまいますから早くお食べなさい」

「「「……はい」」l


   ◇


 ……というわけで王城に行きますよー!……って、無理矢理気分を上げようとしても私の気分が落ち込んでいくだけですね……。あぁ…………本当に嫌です。


「旦那様、お嬢様。着きました」

「ああ、分かった。さあ、フィア。行くぞ」


 嫌ですけど……ここまで来たらもう引き返すなんてことできませんからね。


「はい。」


 頑張るしかありません。


 さてと……早速陛下のところへ……って、ん?反射でさっと隠れてしまいましたが……あれは殿下とメルレット嬢?こんなところで何を……?


「ね、殿下。今日、協力してくれそうな方をお呼びしたのですよね?」

「あぁ、そうだが……どうかしたのか?」


 ふふふっ、とメルレット嬢が笑います。


「お会いしてお話しをしてみたいのです。構いませんか?」

「うーん……まあ許してくれるだろうからメルも行こうか」


 ぱあぁっとメルレット嬢の目が嬉しそうに輝いて殿下を見つめ、親しげに話しながら2人で去って行きました。

 あんなメルレット嬢が同席するなんて有り得ませんし、そもそも嫌なのですが?しかも私の気持ちを勝手に決めつけるのは如何なものかと思いますが……?……ああ。徐々に憂鬱になってきます。さて、陛下の執務室前に着きました。入らせて頂きましょう。


 コンコンコン……


「入りなさい」

「陛下、失礼致します。宰相家が長女、アルフィアでございます」

「ああ。座りなさい」


 じゃあ、お言葉に甘えて座らさせて頂きます。


「早速だが……今回は本当に愚息が申し訳ない」

「いえ、陛下が謝る必要はございません。……ですが、お願いがございます」

「何だ。言ってみなさい」

「……殿下には私が報告した2人の令嬢の様子をそのまま……ありのままをお伝えください。伝えたところで聞かないでしょうが」


 陛下はキョトンとしたあとハッハッハッと笑いました。


「そんなことか。別に構わないよ」

「ありがとうございます。それでは……やることもありますのでこれで失礼いたします」

「ああ。また」

「はい」


 そう言って急いで廊下を歩いていました。

 やることがあるので急いで廊下を歩いていましたが、周りに気をつけていなかった私は声を掛けられるまで気がついていませんでした。


「おい、アルフィア。話がある」


 と、呼び止める殿下に。

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