第三話 あの騒動の回想
〜数日前にグリード殿下が主催したパーティーにて〜
ザワザワザワ…………
「……フィーナ・シニストラ侯爵令嬢。前に出てきて下さい。」
「……?あ、はい……?」
「お前とは婚約破棄だ!メルを馬鹿にしたこの悪女め!そして、俺はメルレット・リベルテ男爵令嬢と婚約をする方向で調整をしているところだっ!」
ザワザワザワ…………コソコソ……
何処が、何処が悪女なんですの!?優しく諭すのは悪女がやることでしたか!?あら、失礼。今のは聞かなかったことにしてくださいませ。
「何故なのです?根拠はおありなのですか?」
「メルがそう言っていたのだ!それだけではない!俺の側近からの情報もあるぞ!」
「そうなんです!ティーナ様は私を虐めてくるんですっ!」
いや阿呆ですの?……おっとこれも聞かなかったことにしてくださいませ?
「はい?いや、……はい?」」
いやそうなりますわよ、流石のティーナでも。それで抑えられたことの方が驚きですわよ。え、あ、ちょ……側にいらっしゃるフィアが倒れましたわよ!?え、殿下も側近の皆様もスルーするのですか!?あ、オリヴァー次期公爵様が運んで下さいましたわ、良かった。
「はい?じゃないだろう!?しらばっくれるなっ!お前、メルを虐めていただろう!?」
「違いますが……?」
「嘘を吐くな。白々しい。」
いや、いつ、何処でどんな時に虐めていたのですか!?殿下は日頃のティーナ様をご覧になっておいでだったのですか!?あの優しくて生徒会に入っているだけでなく、殿下のせいで王妃教育を受けていらっしゃるから忙しくしている方ですわよ!?有り得ないですわよね!?
「そうですか。そのようにおっしゃるのなら、陛下にお聞きになればよろしいですわ。経過報告はされているはずですから。……婚約破棄の件はかしこまりました。まあ、学校の成績も下から数えた方が早いメルレット様にあの王妃教育が務まるとは思えませんが、ね。」
怒ってらっしゃるわ……あの優しいティーナが!
「酷いですー!!助けて下さい、グリード様ー!」
「ああ、そうだな。さっさと出て行け悪女め。」
言い方というものがあると思いますわよ、殿下。……ふう、ここまできては救いようというものがありませんわね。屋敷に帰ったらお父様とご相談しませんと。
「ええ、それでは失礼致します。」
「「「「よく仰って下さいました、殿下!」」」」
「「「「…………。」」」」
ああ……本当にパーティーが台無しですわ。顔が真っ青な人、歓喜で興奮している人……。ああ、陛下がいらっしゃることができればこんなことには……ならなかったのでしょうね。
「さあ、俺が主催したこのパーティーを楽しんでくれ!乾杯!」
『乾杯。』
食事も美味しく感じられませんわ……。折角仕事から抜け出させてもらって久々に来た王城でこんなことがあるなんて思いもしなかったわ……。ああ、まだ仕事をしていた方が良かったですわね。って……挨拶に行かないといけないようですわね……憂鬱ですわ。
「よく来てくれた。話は変わるが……。虐めの作戦を練って……ティーナに入れ知恵をしたのは、お前だよな?」
入れ知恵って……?はい?
「何を言われているのか、全く検討すら付かないのですが……?」
「しらばっくれるな。虐めの作戦を練ったのはお前だろう?」
「……?何を言われているのですか?……気分があまり良くありませんので失礼致しますわ。」
「……!お、おいっ!逃げるなっ!」
「逃げないで下さい!」
「やっておりませんわよ!そんなに私を犯人にしたいのなら陛下にお聞きくださいませ!?」
そう言いながら全力で逃げるしかありませんわ……。いや、しかしまさか巻き込まれるとは……。
ああ、フィア……助けてくださいませ……。
ああ、神様。あの2人を罰してください……。
フィアの体調が良くなったらお話ししなければならないことが増えましたわね……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます