第五話 王城



「おい、アルフィア。話がある」

「…………」


 王城内で呼び捨て、しかも『おい』ですか?精神年齢が子供のままなのでしょうか。


「おい、聞いているのか?」

「なんでしょうか。見ての通り急いでいるのですが?」

「そんなもの後に回すか部下に頼め。話があると言っているだろう?」


 は?『そんなもの』?『後に回すか部下に頼め』?そんなものではないですし、部下には出来ないことしか私はやっていませんが?


「そのように出来ないことですから私がやっているのです。そのような言い方は如何なものかと思いますが」

「お前……口答えするのか?」


 口答えって…………!何を言っているのですか?


「あらあら……。駄目ですよー?アルフィアさん。グリード様がそう仰っているんですから従わないと……ねぇ?」


 『ねぇ』って……メルレットさん……貴女は何様なのですか……?


「…………」

「返事くらいして下さいよー?」

「時間がないって言ってたのはお前だぞ?何黙ってんだ?」


 ああ、少しくらい……少しくらい許して下さい。もう我慢の限界です……!


「……だ……よ。」

「「は?」」


 面倒ですね。


「黙れって言ってるんですよ。……グリード。貴方何様なんです?従姉妹だからってこのような言い方は許されませんよ?しかも、仕事を部下に回せですって?貴方が適当に書類を処理したから私がその後始末してんですよ?そんなこと言うくらいだったらちゃんと公務やってくれます?それにメルレット。」

「な、なんですかー?呼び捨てはやめて下さいよー次期王妃なんですからー!」

「そもそも下級貴族の貴女が私の許可なく話しかける権利すらありませんし、私に“さん”を付けるとは……貴方の身分なら“様”が妥当ですよ?しかも次期王妃?笑わせてくれますね?陛下にも王妃様にも許可をされていないのにもうグリードの婚約者気取りですか?」


 メルレット嬢は顔を歪ませました。


「……グリード様、私帰ります」

「あ、ああ」

「そういえば、」


 と声を張り上げる。


「良かったですね?“王子様ルート”に入れて?」

「……!貴女は……!」


 そう言ったがそのまま走り去って行きました。あとは1人。


「グリード。貴方、メルレット嬢を追いかけなくて良いんですか?」

「……!お前、許さないからな」

「それはご勝手に。私にはまだ幾つものカードがありますから」

「ーー!」


 殿下はメルレットが消えた方へと走り去って行きました。

 あー疲れました。少し怒ってしまったのは反省点ですね。ま、さっさと仕事を片付けるしかありませんか。頑張りましょう!



   ◇



 あー疲れました!早く!家に!帰ります!


「あれー早くないっすか?」

「疲れたんですよ。さ、今日の報告をしてもらってもいいですか、グレイ」

「いいっすよー。まず、お嬢と別れた後に恨み言をめっちゃ言ってましたねー気をつけた方がいいかもしんないっすね。あと、メルレット嬢の家は禁止物を輸入しているみたいなので、ここは気をつけるしかないっすねー」


 成る程……意外と厄介ですね。禁止物については勉強しておくとして。明日からは屋敷に籠りますか……。


「まあ、明日からは屋敷に籠るからなんかあったら来てくれればいいですよ?」

「まじすか」

「危険だし、禁止物について学んでおきたいからですけど、ね?」

「その方がいいと思うんで、そうしてください」


 そう言ってグレイは去っていきました。

 明日からは大変そうですが、頑張るしかありませんね……!

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