Please Call Me Movy !
「ねぇドクター。もう私半世紀はここに居るんじゃないかしらって錯覚してるんだけど? 本当に錯覚よね?」
「……ぇえ? なんか言ったかぃ?」
「いいえ、何にもっ」
ここゴッドアップルリバーシティはお隣のイーストキャピタルと比べるとまだまだ田舎。そりゃあ、イーストキャピタルだって、タマに奧の方に行ってみるとお猿さんが出てきちゃうような田舎風景を楽しめるけど。ここゴッドアップルリバーではそこかしこに田舎風景があるってこと。
で、何が言いたいかっていうと。そんな田舎のこんな閑静な住宅地の中にぽつんと紛れてるモトコセンターなんかに、将来私の
ドクターも
まだ見ぬ私のマスターっ! イケメンだといいな。
「チリン、チリン」
お昼過ぎ、春の日差しが暖かくなってきたのを実感出来るほど眠気もマックスな時間。扉に付けられた鈴の音が響きました。今はママ
「あのー? そこのバイクに書いてある値段ってあってますか⁇」
入店して来たのは大学生くらいの男の子。そう言えば近くに大学があったわね。うちの店の近くにはその大学の付属短大の女子学生用のボロアパートしか無いから、そこに出入りしてる彼氏が偶然通りかかったのかしら?
「いらっしゃい、あなたモトマスターを目指してるの?」ドクが手を離せないので私が接客。
「は、初めまして。最近は
彼はそう言いながら店内をキョロキョロと不思議そうな顔つきで見渡しています。私の姿を見て驚かなかったってことは以前にもモト娘と旅をしてたってことね。彼に聞かれる前に私が彼の疑問に答えてあげる。
「あなた前はどんなモト娘と旅をしてたの? ここは見ての通り中型のモト娘をあつかってるモトコセンター……、なんだけど。もう何十年もここにいるのは私だけ。昔はY社のロゼやK重工のキールなんてモト娘もいたんだけど。残念ながら今のこのお店には目の前にいる私だけ」
「あ、あの。250ccなのにその値札って本当に間違ってないんですか?」
「ええ、本当よ。但し、見ての通りよ」私はゆっくりとくるりと回って、所々破れてる青色のスカートや、顔に付いた傷跡、お尻に付いている赤錆まみれの三本の尻尾を見せました。
「その、もし良ければ僕と一緒に走ってくれませんか?」ボロボロの私の姿を見せたから、てっきり帰って行くと思ってたからびっくり。
「え、私でいいの?」
「はいっ! 恥ずかしながら全然お金無くて……。それにさっき前を通ったときに何故かすごく惹かれて。初めてのモト娘もH社だったからかも」
「私は
「わかりました。モビー、これからよろしく」
「よろしくマスター」
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