ハイはいHi!
炬燵から出てきた野空先輩が軽く屈伸運動をした後、ゆっくりとコースに向かいます。私たちも後を追います。
うぅっ、緊張でガソリンがオーバーフローしそう。
野空先輩、一周目はまずはゆっくりペース、ヘアピン後の短いストレートでタイヤのグリップを確認する様に右に左に蛇行しながら走ります。
ケセラちゃんは静かに後を、私も大人しく後を追います。
少しずつペースを上げていく先輩。三周目辺りからケセラちゃんがややぎこちなくなって先輩のペースについていけなくなってきました。
「おわっ、あっかーん!」
最終コーナー立ち上がり少し足元がもつれたケセラちゃんがゼブラゾーンに乗り上げる。
無理に立て直そうとして私と絡むのを避けたんだ!
「だいじょぶ?」
声を掛けながらもケセラちゃんの右側を抜けて野空先輩を追いかけます。
クラッシュ音も聞こえずにケセラちゃんもコースに復帰した様子。背後の気配から多分コーナー一つ分離れた感じ。
よーし、今はひたすらに野空先輩を追いかける!
野空先輩はコーナーの侵入で一気に減速、コーナーリング中はそのままのペースをアクセルでキープ、出口が見えたら一気に立ち上がっていく。
私の方が立ち上がりは遅いけど、コーナーの侵入速度は少し上。それにバンク中ももっと加速出来そうなそんな気がする。
もう先輩は全開ペースなのかな?
「えーい、ままよ!」
最終コーナー、先輩の突っ込みにアウト側から侵入して身体半分程私がリード。
やや奥からバンクして先輩の頭を押さえて私が先頭!
先輩はアクセル一定でキープ。私は早めに加速!
やりぃ! イケる、行けるっ!
立ち上がり、車体を起こすタイミングで外側の足が滑る!
左足、堪えてっ!
だけどこっちもダメっ!
アクセル戻して、復帰を……
「キャッ」
急に滑るのが止まった右足を軸にしてコーナーの外に向かって転がる私。
背中からコース上のアスファルトに叩きつけられる。
「ぐえっ」
さらに転がって行き、積み重ねられた廃タイヤにぶつかって止まる私の身体。
「ぎゃん」
「やりおった! いけるか?」少し後ろを走ってたケセラちゃんが慌てて右腕を上げてピットロードに。
ケセラちゃんに肩を貸して貰ってぶつけた脚を引き摺りながらピットへ。
とりあえず、レーシングスタンドに座らされる私。
「きゃあっ!」改めて自分の身体の状態を見て驚いた。
ジャケットもシャツも破れてはだけてブラが丸見え。スカートもかろうじて布が巻いてある程度。パンティも露わに。
「おま、
ケセラちゃんに言われて
「あぁっ! ……って、ごめんケセラちゃん。これパッド」
「アホかっ! どんだけ見栄張っとんねん!」
「ごめんごめんてー、ってあれ?」何回裏側から押し戻してみても元に戻らずまた凹んでしまいます。
「なんか凹み癖ついちゃったみたい……」
「パーン、パパパパ」と、一周回ってきた野空先輩もピットに入ってきてくれました。
「影布ちゃん大丈夫? って、あぁっ! 胸が……」
「先輩! これ胸パッド。あー、なんかすいません」
こうして私のサーキットデビューはトホホな結果で終わったのでした。
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