野空登場!

 ピットレーンを競歩くらいのペースから小走りくらいのペースまで上げて第二コーナー途中の合流地点で一時停止。念の為左右、最後にもう一度第一コーナーの方を確認。

「安全確認ヨシッ!」


「ボァァー」っとコースイン。後ろからは「パァーッア」とケセラちゃん。

 右コーナーで膨らんだラインを下りながら次のヘアピンに向けて修正。ヘアピンをインベタでクリアした後、左コーナーから上りストレートを駆け上って最終コーナーに。


 速い常連モト娘さんたちは一周23秒で周ってしまうという、ここインターサーキット。

 スタートラインを通過したら右コーナー、立ち上がりからすぐに下り始めて続く左右S字コーナーの後、下りながら進入する左ヘアピン。ヘアピンを縁石に乗り上げながらクリアしたら次の左コーナーまでは平坦な短いストレート、左コーナー立ち上がりから上りの最終ストレート、左の最終コーナーは出口で少し回り込む複合コーナーになっていてコーナー終わりがゴールライン。

 全体を通して右コーナーは二箇所しかないミニサーキット。左のブーツだけすり減っちゃいそう。


 まずは20秒台後半くらいのペースを目指して数周ほど身体を慣らします。

 2〜3周走ったらケセラちゃんと前後を入れ替えてまた2〜3周。一旦ピットに戻ってお互いに気付いたことを話し合いますブリーフィング


「イタっ、痛たた」

「どないしてん?」

「なんか視線が刺さって……」

 炬燵から出たモト娘さんがこちらを見ながら屈伸運動をしてウォーミングアップ中。ラバー素材のブルーメタリックのジャケットにオレンジと赤のライン、胸には大きくREPSOLの文字。なんて派手な服装。


「常連さんがコースインするみたいやな。ウチと同じツーストローク。うちらも行くで! お手並み拝見や」

「なんで上から目線なの? そこは胸を借りる的な気持ちの方がいいんじゃない?」



 数分後、ポケバイ勢と交代。

 そしてピットには汗だくで仰向けになって転がっている私たち。

「ゼェゼェ……何? あの速度。本当に私たちと同じモト娘?」

「か、関東も関西に負けんくらいレベル高いんやな……」

「ケセラちゃん、息上がったままでしかもその体勢は説得力ゼロ」


 そんなことを話していると、ふいに私たちの視界が遮られて、さっきまで一緒に走ってた、ううん、何回もラップされたから一緒にって訳じゃないかな、その彼女が私たちを覗き込んで一言。


「あなた達見ない顔ね。はじめまして。私は野空。あなたと同じH社のモト娘よ。ヨロシクね」

「えぇっ? 見た目と走りはアグレッシブなのにこの人、超フレンドリー!」(影布です、宜しくね先輩)

「うちはK重工のケセラ、こいつは影布。案じょーたのんま」


「二人とも、次のヒートも一緒に走らない?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る