Kick off the Sunday shoes
「ほなやろか」
アスファルトに両手をついたケセラちゃんが道路にすぅっと線を引くような仕草で右手を横一文字に動かしながら、ゆっくりとクラウチングスタートの姿勢を取りました。
私と蓮浦ちゃんでケセラちゃんを挟むような形に並び、私たちも
ぺぺぺぺッと蓮浦ちゃんの静かな音、私のポポポボッという音、そしてパンッパンッパンッというケセラちゃんの甲高い音。三者三様、私たちのアイドリング音。
「ウチはいつでもええでぇ」ケセラちゃんが私の方を向いてぼそっと呟きました。
「あぁっ! 大変っ! え、待って待って! 靴紐解けてる!」
「な、なんやの? とことん緊張感のないやっちゃな。
そもそもなんで
「オッケー!」
「ほな……」
「アッカーン! 反対の紐も解けてるじゃんやわ」
「ムッカドッタマー! エセ関西弁やめや! んでなんでさっき見ぃへんかってんな?」
「オッケー!」
「ほな……」
「あっ! そうだ、誰がスタートの合図出すの?」
「だぁあーっ! 誰でもえーやないか!」
「それなら麗子さんに頼んじゃおっか?」
「じゃあいい? 私が投げたコインが地面に落ちたらスタートね」麗子さんがコインを空高く放り投げます。
行っくわよー! マスターと二人であんなに練習したんだもん、スタートミートだけは誰にも負けないんだから!
「キィン」と麗子さんが投げたコインの着地音と同時に地面を蹴る!
私が一番好スタートを切って飛び出せた。トー然! 続いて蓮浦ちゃんが追いかけて来てるけど100メートルなら
んで、ケセラちゃんは……。
「ケホッ、ゲホッ、な、なんや? なんでや?」後方、咳込みながらスタートでもたついているケセラちゃんの声。
「ケセラちゃん、そんなピーキーな高回転向きのチャンバーでずっとアイドリングしてたらプラグ被っちゃうんだよー!」
「ぬかせ、ボケー! ワレわざとのらりくらりしよってんやな!」一際甲高い音を響かせながらケセラちゃんが猛ダッシュしてきます。どんどん追いついてきて蓮浦ちゃんと並びました。
「気合いじゃあ! 一気に行くでー!」ケセラちゃんがさらに力強く地面を蹴ったその時、踏み込んだ足が滑って前のめりに頭からアスファルトに突っ込みそうに! それでもなんとかギリギリで体制を整えてゴールラインを通過。
順位は、私、影布・蓮浦ちゃん・ケセラちゃんの
「くっそ、姑息な手ぇつこうてからに。せやけどウチの負けは負けや、素直に認めたるわ。まぁ最後にウチが転びそうにならへんかったらアンタら纏めてブチ抜いとったけどな」
「ケセラちゃんは勝てなかったよ」
「なんやて?」
「だって、そんなレーシーなタイヤでずっと長い時間走ってなかったでしょ? 冷え切った状態だと普通のタイヤよりグリップしないのはトー然だよ」
「なっ⁉︎ アンタただのレジャーバイクやないんかい? なしてそないな事知っとんのや?」
「だって、ウチのドクターってメカニック畑の人じゃなくってライダー畑、そしてなんと元GPチャンピオンなんだからね!」
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