新橋ガード下
「って言う感じのゲームなんだけど」
金曜の夜、大学の頃からの腐れ縁バイク仲間三人で新橋のガード下で飲んでいる。
小さなゲーム会社に勤めている奥島が、社内コンペの為に考えたスマホゲーム、そのざっくりとした内容を話し終えたところだ。
「てか、出てそうなもんだけどな。バイク擬人化ソシャゲなんて」
「それが意外と出てないんだよ。マンガやネット小説なんかだとあるんだけどね」
「やっぱ課金要素満載なん?」とは八田。こいつは俺たちの中で一番年下(ま、大して変わんないんだけど)で、歯に衣を着せない話し方だがなぜか憎めない。
「それに関しては考えがあってさ。せっかくバイクなんだから、GPS情報使って移動距離でポイント加算がいいかなって思ってる」
「あのヤー公捕まえるゲームみたいに?」俺が言ったのは数年前一気に流行ったが、今もやってるプレーヤーは一定のコアな層のみに落ち着いているチンピラ仲間を集めるゲーム〝ヨソモンGO〟のことだ。実際の街と同じマップを使い、繁華街などを練り歩いて自分の
ところがリリースされた当時は、車やスクーターでの〝ながらスマホ〟による交通事故が社会問題になった。
「ながら運転を助長するとかで問題なんじゃねーの?」
「バックグラウンドで立ち上げてないと加算されないようにするんだよ。プレイ画面表示させとくとカウントされなくしてさ。
だからツーリングの時とかに立ち上げとけばポイントが溜まるのよ。
んで実在する峠とかサーキットをバトルの舞台にすんだよ。一度でも行ったことがある場所なら遠くてもポイント消費してバトル出来るようにしてさ」
なるほど。流石に俺のような素人が思いつく心配事なんかは既に織り込み済みか。
「根本、八田。お前ら最近走ってるか?」
奥島の言葉に俺と八田が目を合わす。
「何だよ急に?」
「このゲームのさ試作版のモニターやってみないか? そろそろ走るきっかけが必要な頃だろ?」
確かに、社会人になって俺たちはバイクに乗らなくなっていた。
このまま乗らなくなるか、乗り続けるか?
奥島の言葉で俺たちは分岐点に立っていることに気付かされた。
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