《一葉のクローバー》ムスリカ

母親が入院している病院に着いた。突然のことで僕の思考は停止した。体が硬直寸前までいっており、利き手の逆の左手が、かろうじて動く状態だったのだ。昨日、


「ちゃんと料理をして、バランスの取れた食事を食べなさいね!すぐ退院するから」


思わず心の中で


『嘘つき………』


そう思ってしまった。(これからどうすればいいのか……)


もちろんそう思っているのは親父も兄貴もそうだろう。僕たちはお母さんに励ましの言葉をかけてあげようとしたが、声が出てこなかった。


(このような時、なんで励ませば……)


そしてザシコは悲しそうに壁からからこちらを見ていたのであった。今日は廊下から響き渡るナースコールの音だけがやけに大きく聞こえた。

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