《一葉のクローバー》アリウム

学校に着く直前、僕は考えた。


(ザシコをどこかに縛りつけても、絶対解いて仕返しにイタズラしまくるだろうし、仮にその勢いで校外にでも出ようものなら、余計面倒になりそうだ……)。僕は、


「自由にして良いけど人を傷つけたり、学校の外に出たりしないこと。良い?」


との一方的に約束事を言い、ザシコと別れた。


「限りなく努力をしよう(ニヤリ)」


顔は視なかったが、別れ際のあの何か企んでいるような言い方。


(あの顔は何かやる気だな………あぁ、もうどうにでもなってしまえ)


僕は何言ってもやるんだろうと予測し、半端諦めの表情で教室へと向かった。なんか疲れてしまった。ここ数日、自分の人生は一体どうなってしまったのだ。特に特徴もない一般的な高校生とその家族だったはず。お母さんも優しく元気だった………。親父は威圧感があり、怖いが、でも意見を尊重してくれるし、『The 漢』という頼り甲斐のある尊敬できる人物で、更に仲の良い兄貴がいる、世間から見ても幸せな家庭だったはず。それが今では、母は病で入院し、何故か家に座敷童子がいて、しかも視える。でも、個人的な意見だが、座敷童子がいるのだから悪くはない環境なはずだ!それは間違いない!なのに何故なんだ!!あくまでも妖怪の類だからなのか?


一日中色々考えているうちに学校が終わり、校門にはザシコが退屈そうに座っている。


「病院に……ついて来るか?」


「もちろんじゃ!」


ザシコはニッコリしていた。僕はお母さんへの土産話に、この座敷童子のザシコのことを話して楽しませてあげようと思った。だが、そんな淡い期待は病室に着いた瞬間にガラスのように砕けてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る