第162話 総理訪問
「そうなのね…祖父はもう…」
悲痛な顔をして、報告を受けたのは美智子さんだ。
聖女を討ち、女神教の洗脳が解けてから、数日が過ぎた頃、光臣さんと神崎会長の紹介で、この国の総理大臣が直々に俺を訪ねてきた。
政財界に顔が利くと言っていたけれど、一国の総理が訪ねてくるレベルだとは…
話を聞くと、女神教の洗脳によって政権を得たことや、洗脳状態のまま、傀儡となっていたこと、そして、異世界や女神の存在やその目的を政府の見解として公式に発表し、今後起きるであろう異世界からの侵攻に対する警鐘を鳴らすそうだ。
確実に支持率は下落するとわかっていることだが、そのままにはしておけないと、強い覚悟を感じた。
「獅童真央くんだね?今日は君に頼みたいことがあって、恥も外聞も捨ててこうしてやってきたんだが…」
「頼み…ですか?」
「前政権が、君から不当に取り上げた
それは確か、早乙女博士とともに行方不明ということになっていたはずだが…
「女神教が台頭してから、あれは女神教の管理の下、厳重に保管され、レベルアップポーションの増産に使われていた。洗脳が解けた我々が回収チームを派遣したのだが…」
「もしかして…?」
「あぁ。全滅してしまった…迷宮核の研究施設内は影のような人型の魔物で溢れていたのだ…」
なるほど…研究者達も当然レベルアップポーションを服用していたわけか…
「頼む…研究施設から迷宮核を取り戻して欲しい。そして、できるのならそれの破壊もお願いできるだろうか?我々が君にこのようなことを頼めた義理ではないのだが…」
真摯に頭を下げる総理に、俺も誠意を持って答える。
「場所を教えてもらえますか?」
「では!」
「はい。あれはこの世界から消すべき存在ですから」
「ありがとう…ありがとう…」
礼を言いながら、ガシッと力強く総理は両手で俺の手を握った。
…
…
そして、俺達は研究施設内に徘徊する影の魔人達を一掃し、迷宮核を破壊した。
その中で、早乙女博士と思われる人物の遺品を見つけ、美智子さんへと報告しに来たというわけだ。
「では、今後はレベルアップポーションは出回らないということになるのですね?」
「今、市井に流れている分を除けば…ですけどね」
俺達以外の勢力が迷宮核を手にしている可能性がないとは言い切れないが、影狼達の情報網では、まだ確認されていないから、今すぐに心配することではないだろう…
「小夜さん達や、麗華さん達がレベルアップポーションの服用者を捕らえてくれていますので、私は全力で彼らの治療に当たります」
「よろしくお願いします」
美智子さんへの報告を終え、帰る前にハイエルフのエリーに頼まれて、世界樹へと魔力を注ぎ、護衛に就いている神狼のシルヴィと、フレスベルグのヴェルグを労った。
―――――――――――――――――
政府の公式見解が発表されてからの人々の反応は様々だった。
戸惑う者、憤慨する者、怯える者…
ただ、国民の大半が女神教の魅了下にあったため、異世界や女神の話を信じないという人は少なく、思ったよりも混乱は少なかったように思える。
そして…
グラララララララ………
「真央!」
「咲希も気づいたか。ついに始まったようだ」
世界が揺れるほどの強大な魔力を感知した。それも、一ヶ所だけではなく、世界中のダンジョンから…
(影狼達はダンジョンを警戒してくれ、異変があったら報告を。もし魔物が氾濫するようなら、討伐も許可する)
((((わかりました!!!))))
「真央くん…今のは…!?」
「会長。どうやら世界を繋ぐ扉が開いたようです」
「やはりそうなのか…」
「女神教の目的は、この世界の住人を生贄に女神を復活させることにあります。それ以外の異世界人は己の欲望を満たすだけの略奪者といったところでしょう」
「ふむ。どう動くと思うかね?」
「扉はダンジョンの奥深くで開いているはずです。当初の予定通りなら、まずは民間人はダンジョン付近からの避難を、そして、ダンジョンを封鎖してください」
「やはり
「おそらく、全世界規模で起きるでしょうね」
「わかった。国内は勿論、海外にも急ぎ通達することにしよう」
「そちらはお願いします。俺と仲間たちは溢れる魔物と侵攻してくる異世界人を対処します」
「うむ。君達の強さは信じているが、十分に気をつけてくれ」
「任せてください。奴らの思い通りにはさせませんよ」
―――――――――――――――――
(ルーファス!強い魔力を持った者の位置は分かるか?)
(少々お待ち下さい…)
…
…
…
(特に強い反応は5つ。私の知っている限りではその内の3つが我らと因縁のある輩かと…)
(場所は?)
(フランス、中国、アメリカ、そして日本に2つ…ですね)
日本か…女神の魔力が日本に向けて集まっていた事から、そこに女神の本体がいる可能性は高いか…
(わかった。日本に現れた奴は俺が出向こう。他の場所の差配は任せる)
(かしこまりました)
こうして、俺と俺の仲間達は世界中に散り、異世界からの侵攻に対処するべく動き出した。
―――――――――――――――――
あとがき。
更新が遅くなって大変申し訳ありませんでした…
不定期更新となってしまっていますが、もうそろそろ
次回は…
勇者パーティーと一人ずつ、戦っていく予定です。
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