第156話 継承

「そうして、俺は身体の自由を奪われたまま、女神教の尖兵として、戦場へ送られるようになったんだ」

「なら、あの世界は女神教が支配して平定したのか?」

「いや…奴らにはそもそも世界を平和にするなどという目的はない」

「どういうことだ?」

「勇者という戦力を抱えていた王国が崩壊し、再び世界は群雄割拠の戦乱に巻き込まれた。そして、女神教は女神への信心の深さと称して、より多くの寄付をした勢力に味方したのさ」

「お金のある国の味方になったってことなの?」

「敵国がより多くの寄付を払えば、手のひらを返して、昨日まで味方をしていた国に牙を剥く。そんなふざけた連中だよ」

「何それ!ひどい!」

「国々は女神教への寄付を集めるために、徴収という名の略奪を繰り返すようになり、世界中が疲弊していったんだよ」


 そして、世界がそのような状況に陥ったことが、こっちの世界への侵攻へと繋がったのだそうだ…

「大神官が神託を受けたと宣言した。人族の争いを憂いた女神が、自由に略奪する地を用意すると言ったらしい」

 そんなくだらない理由でこっちの世界へちょっかいをかけているってのか!


 俺の中で、クソ女神に対しての怒りが再燃した。


「それで、リヒト。お前はこれからどうするんだ?」

「やつらの計画を食い止めたい…と言いたいところだがな…」

 そう言いながら、崩壊し始めている手を見せる。

「次元牢の中でだけは思考の自由が戻ったから、何とか隷属を解けないかと術式の解読をしていたんだが…な…不完全だったようだ…」

「そうか…」

 次元牢はアルスの次元収納と同じで、次元の異なる空間に隔離するからな…隷属魔法の支配力まで遮っていたんだろう。


「勝手なお願いで悪いが…後のことは任せてもいいだろうか?」

「わかった…」

「ありがとう…俺の身体が崩壊する前に、あなたからを返そう」

 そう言いながら、リヒトが立ち上がり、剣を構えた。

 その目に宿る決意を感じ、俺も同じように刀を抜いて対峙する。

「おにぃ?」

「真央?」

 剣呑な空気を纏う俺達二人に、咲希と明璃が動揺している。


「いくぞ!」

「来い」

「おおおぉぉぉぉぉ!!!」

 気合と共に振り下ろされた、リヒトの上段からの一撃を俺は半身をずらして躱し、すれ違い様に振った刀の残心を解かぬまま、一瞬、二人の時が止まったかのように静けさが場を支配した。


「さすがだ…ぐふっ!」

 リヒトが前のめりに倒れ込む。

 俺の一太刀は、残されたリヒトの生命力を奪い去った。


 俺がリヒトの側へと駆け寄るが、倒れたリヒトの身体は生命力を失うと同時に崩れて一欠片も残さずに消えてしまった。

 リヒトが消えた場所には一振りの刀と宝珠が残されていた。

「これは…ドロップアイテム?ってことか?」

 それらを拾おうとした瞬間に世界の言葉が聞こえる。


“勇者と魔王の因果が発動します”


「これは…!!」

 俺の身体に物凄い力が流れ込んでくるのを感じる。

「ステータス」

【名前】獅童 真央

【職業】召喚士

【LV】999(300up)

【HP】210749/210749(55375+55375+99999)

【SP】330177/330177(115089 +11 5089 +99999)

【力】31975(10988+10988+9999)

【知恵】34009(12005+12005+9999)

【体力】30917(10459+10459+9999)

【精神】33991(11996+11996+9999)

【速さ】32529(11265+11265+9999)

【運】2295(1098+1098+99)

【スキル】

 鑑定(NEW)、契約、召喚、送還、魔物言語、魔物探知、複数召喚、遠距離送還、魔力操作、召喚魔力半減、魔物強化、能力共有、神気開放、魂の絆、武神(NEW)、魔神(NEW)、限界突破(NEW)、気配察知(NEW)、魔力感知、絶隠密(NEW)、未来予知(NEW)、縮地(NEW)、空歩(NEW)、無詠唱(NEW)、思考超加速(NEW)、並列思考(NEW)、身体能力超強化(NEW)、超再生(NEW)、回復量増加(NEW)、魔力超回復(NEW)、魔力回復量増加(NEW)、物理耐性(NEW)、魔法耐性(NEW)、精神攻撃耐性(NEW)、全状態異常耐性(NEW)

【契約中】

 1000/1000(242up)

【称号】

 帰還者、世界を超えし者、元魔王、ダンジョン踏破者、魔物を率いる者、神に挑む者、限界を超えし者、竜殺しドラゴンスレイヤー世界旅行者ワールドトラベラー悪魔殺しデーモンスレイヤー、鬼殺し、英雄、賢者(NEW)、殲滅者ジェノサイダー、救世主、逃亡者、神殺しゴッドスレイヤー迷宮破壊者ダンジョンブレイカー、想いを継ぐ者(NEW)、全てを超えし者(NEW)、知識を求めし者(NEW)、武神(NEW)、魔神(NEW)


「預かっていた物…か。律儀な奴だ…」

 魔王として勇者に討たれた時、魔王としてのステータスが勇者へと還元された。その逆も然り。

 リヒトのステータスが真央の基礎ステータスへと上乗せされたのだ。


 急激なステータスの増加にふらつくが、残されていた刀と宝珠を手に取る。

「これは…俺の…?」

 その刀は、魔王として君臨していた時に使っていた、真央専用の最強装備だった。

 そして、宝珠は…

「鑑定」

【魔王の宝珠】

 魔王の因子を持つ者が使用すると、種族を魔王へと変える。


「ははっ…」

 その効果に思わず乾いた笑いが漏れてしまう。


 望んで魔王になったわけじゃない…

 そして、今、再び人間としてこっちの世界で大切な家族と暮らす未来が得られたのだ。

「俺は…、人として生きる」

 真央は魔王の宝珠をそっと空間収納へと仕舞った。


「おにぃ!リヒトさんは…」

 俺とリヒトの勝負を離れて見ていた明璃と咲希が近寄ってきた。

 聞くまでもなく、この現状を見れば分かるだろうが…聞かずにはいられないのだろう。

 俺が何も答えないことで、明璃はこの結末を受け入れようとしているようだ。

「彼の無念は私達で晴らしてあげよう」

 リヒトの境遇を聞いたからか、咲希も奴に同情しているようだな。


「そうだな…だが、無念を晴らしたいなら自分でやれと言ってやるといい」

「真央?それは…どういう…」


 リヒトは言っていた。憤怒のスキルの効果で魔人になったと。

 そして、が魔物と化したあいつにのだ。


契約コントラクト」―――――――――――――――――

 あとがき。


 リヒトさん、仲間になります。


 不定期更新で申し訳ないですが、これからも頑張って最後まで書き切りたいと思ってますので、お待ち下さい。


 次回は…

 逃げた聖女の方に話を戻します。

【第6章】女神教編がようやく終わるかも?


『面白い』

『続きが読みたい』

 と思っていただけたなら、


 フォローや☆☆☆評価をよろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る