第150話 四大天使
「あとはお前達だけだ」
背後にずらりと並んだ配下の魔物たちを従えながら、残る5体の大天使に向けて指を指しながら告げる。
だが、奴らの顔色には、俺達の戦力や影の魔人達を倒された焦りのようなものは見えず、むしろ余裕さえ浮かべているように感じた。
「ミラ?」
大天使達の様子を見て、ミラへと頼んでいたことについて聞くと、ミラは首を横に振った。
「彼らの魂はもう…」
「そうか…」
俺は、影の魔人と化してしまった被害者達の魂を保護できるかどうかをミラに頼んでいたのだが…
「女神の魔力に汚染された魂は、肉体の崩壊とともにダンジョンに吸収されていたみたい」
「なに?」
ミラの話と大天使の余裕の表情から察するところ、影の魔人達が俺達によって倒されることは想定内…いや、あえて倒させたのかもしれない。
「ご苦労だったな。手間がはぶけたぞ。人間」
俺達の前にいるウリエルがニヤニヤと笑いながら、唐突に話し始めた。
「あの人の子らも女神様の元へと召されて幸せでしょう」
まるで、それが当然とばかりに悠然と語るのはガブリエルだ。
「うむ。彼らの献身によって、女神様の復活に貢献したのだ。彼らも満足に違いない」
ラファエルが不穏な事を言い出した。
「ええ。偉大なる、我らが創造主であらせられる女神ルフィア様の降臨も近い。神に仕える身として、これほど嬉しいことはありません」
そう締めくくったのはミカエルだ。
そういうことか…
つまりは、魅了されていた信者達はウリエルが砕いた水晶から発せられた黒い靄によって、強制的に女神の魔力に侵食されたのだ。
そして魔物と化した、その肉体が崩壊するとともに、女神復活のための生贄としてダンジョンに吸収されたのだろう。
「くそが…」
そのカラクリに気づいた俺の口から吐き捨てるように奴らへの怒りが漏れた。
「貴方方はそれなりに使えるようですね。女神様の下僕として我等の末端に席を並べたいと言うのなら、私が特別に女神様へとりなしてあげてもいいのですよ?」
「……」
ミカエルが上から目線でそんな馬鹿げた提案をしてくるので、しばし絶句してしまったが、ここははっきりと言ってやらないとな。
「馬鹿なのか?お前。あのクソ女神は俺達で滅ぼしてやる予定なんだよ。まぁ、土下座して命乞いするなら、助けてやってもいいぞ?」
こんな子供じみた、あからさまな挑発に乗ってくるとは思えないが…
「何だとっ!貴様っ!」
「まさか、ここまで愚かな人間がいるとは…」
「不愉快にも程があるな…」
ウリエル、ガブリエル、ラファエルが俺の言葉に激昂している。
どうやら、奴らの沸点は低いようだ。
「我等の創造主たる、偉大な女神様に対してのその不敬。許されざる所業です。我等が引導を渡して差し上げましょう」
ミカエルのその口上に、俺は思わず笑いが込み上げてきた。
「くっ…ふふふ、ふははははは!!」
「何がおかしいのです。気でも狂いましたか?」
「いや、ああ、悪い。お前の言い分があまりに滑稽だったので…つい…な。あのクソ女神が、創造主だって?奴は俺の作った
「何をわけのわからないことを…」
「わからないのか?要はお前らは俺が生み出した魔物の劣化
俺を囲むようにして現れた魔法陣から現れた人影が俺に対して膝をつき、頭を垂れている。
「我が神よ。お喚びにより参上致しました」
「全て見ておりました。我が神に対しての数々の無礼。もはや我慢なりませぬ」
「例え同族とはいえ、見過ごせぬ。こ奴らへ神罰の行使をお許し願えますか?」
「下劣な神を主と仰いでしまった彼らも不憫ではありますが…ここは我らにお任せください」
「元よりそのつもりだ。格の違いというものを見せつけてやるといい」
「「「「はっ!」」」」
四大天使が各々の相手を見据えて動き出した。
――――――――――――――――
「バカな!?」
「あの姿…我々と…同じ?」
「そんなことはありえぬ!我らは
「落ち着きなさい。我等の知らぬトリックがあるのでしょう。女神様の御力によってレベルの上限を超えた我等の敵ではありませんよ」
動揺を隠せなかった3体をミカエルが宥める。
「すまない…ミカエルの言うとおりだ」
「申し訳ありません。我等としたことが…みっともないところをお見せしました」
「ふっ…大方、幻術が何かで我等の動揺を誘おうという人間の浅知恵なのだろう。危なく術中に嵌まるところだったわ」
「では、女神様の名の下に、不遜な者共へ天罰を下します」
「「「おう!」」」
――――――――――――――――
ほとんど同じような姿で対峙する大天使達を見て、
「ゲームの2P対戦みたいだね」
などと、明璃が呑気な事を言い始めた。
「まぁ、あいつらは外見を作り込んだってわけじゃないからな。あの姿がデフォなんだから、仕方ない」
四大天使は大天使長であるルシフェルを生み出すために、系譜的に作り出さなければいけなかったんだよな…
「男性型の魔物だから、手抜きしてるとかじゃないでしょうね?」
咲希がジト目を向けてくる。
さっきのリリスの件もあるし、リーナやミラ達を見慣れているとそういう感想になるもんかね…
まぁ、否定はしないが。
「大事なのは
それより、気になるのは、奥に控えたまま、俺達に対して何の動きも見せないルシフェルだ。
どうやってあのスキルを使わせるかと考えていたが、信者達の惨状を見ているからな…おそらく奴の中のスキルが反応してるとは思うが…
と、少しだけ考え事をしているうちに、大天使同士の戦いが始まった。
――――――――――――――――
あとがき。
戦闘まで行けなかった…蹂躙劇は次回ですね。
不定期更新となってしまっていますが、最後まで書き切りたいと思ってますので、これからもよろしくお願いします。
『面白い』
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と思っていただけたなら、
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