第151話 vs四大天使

「貴様も大天使なんだろう?」

 燃え上がるような赤い髪を逆立たせた、大天使が問う。

「見て分からぬのか?愚か者め。我が名はウリア。ウリア・イグニール。この世での最期の手向けだ。覚えておくが良い」

「ふんっ!戯言を。俺は大天使ウリエル!我が力思い知るがいい!」

 その台詞に違和感を覚えたウリアは神眼を発動する。

「そういうことか…哀れな」

 容姿は瓜二つ。鮮やかな橙色の髪を逆立たせたウリアの手には燃える大剣が握られている。

 それに対するウリエルの手から魔法が放たれた。

「焼き尽くされて灰となるがいい!業火インフェルノ!」


 ゴォォオオオオ!!!!


 炎の魔法がウリアの身体に直撃する。

「ふん!他愛もない…愚か者は貴様の方だったな」


 ほんの数十秒間、燃え続けた炎がやがて魔力の霧散と共に消え去ると、そこには…


「我に炎は効かぬ。その程度のことも見抜けぬとはな…」


 衣服に焦げ跡すら見られない、無傷のウリアがそこに立っていた。


「後学のためにお見せしよう。神気開放…紅炎プロミネンス!」

 ウリアの全身から立ち上る紅い炎の魔力が、その手に持つ大剣へと集まっていく。


 ふっ!とほんの一瞬の隙にウリアの姿はウリエルの前から消えた。

「なっ!どこだ?」

 キョロキョロと自身の周りに目を向けるが、ウリエルにはウリアの姿を捉えることができなかった。

「遅い!紅炎爆覇プロミネンスノヴァ


 振るわれた大剣が目に入ったとき、ウリエルの身体は袈裟斬りに斜めにずれ、崩れ落ちた。

「そ、そんな…バカな…この俺が手も足も出ない…だと…」


 床に倒れたウリエルの身体は、神属性を宿した紅炎によって燃え尽きた。

 ――――――――――――――――

「大人しくミカエルの提案に乗っておけば良かったのに…後悔しても遅いですよ?」

 青いサラサラの髪で片目を覆っているのは、大天使ガブリエルだ。

「無知な貴方に教えてあげましょう。世界にはレベルの上限というものが存在するのはご存知だとは思いますが…その上限を突破する方法があるのですよ」

 得意げに語るガブリエルを冷めた目で見ているのは、

 淡い水色のサラサラの髪をした男とも女とも見えるような中性的な大天使だ。皆からガフと呼ばれている、その名はガーフィールド・ジブリールという。

「我らのように世界を超えた者はレベル100の壁を破ることができるのです!」

「それで?」

 心底興味なさそうにガフがおざなりに聞き返すと

「同族に於いて、レベル上位者に、下位者は絶対に勝てないということです!」

 そう言いながら、ガブリエルが氷の魔法を放つ。


 ビュオォォォォォォ!!!!


 と吹雪が巻き起こり、氷の礫と冷気の風がガフを襲う。

「凍りついて、砕け散るがいい!はーっはっはっは!!」


「無知な貴方ですが、一つ真実を語ってましたね。レベル上位者に下位者は絶対に勝てない…と」

「は?」

 吹雪に覆われた中心から、ガフの声が響く。そして、次の瞬間、ガフを襲っていた吹雪が標的を変えた。

「ば、バカな!私の魔法が…」

 ガブリエルの放った氷の魔法が、威力を増してガブリエルを襲う。

「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!」


「そんなに驚くほどの事じゃありませんよ。稚拙な魔法の制御を奪うくらいは簡単なことです」

 特に難しいことでもないとガフが簡単に言うが、他者の魔法の制御を奪うには魔力制御の能力に絶大な差がなければ不可能だ。


 パリィイィーーーーーーンンン!!!


「おっと…もう聞こえてませんでしたか…」

 凍りついたガブリエルの肉体が砕け散った。

 ――――――――――――――――

「さて。我が神に対する数々の無礼…もはや許すまじ!潔く散ってください」

 エメラルドグリーンの長髪を靡かせた男が述べる。怒りを隠そうともしないその大天使の名は、ラヴィリア・イスラフィールという。

「何が我が神だ。魔王…いや、今ではただの人間に成り下がった下郎を神と崇めるなど笑止千万!私の魔法で斬り刻んであげましょう!」

 緑の髪の男、ラファエルがそう告げながら魔法を放った。

嵐の刃テンペストエッジ!」


 ゴォォォォォォォオ!!!!


 荒れ狂う暴風の嵐が鋭利な刃と化して、ラヴィリアへ襲いかかった。


 ピシッ…ピシッ…


 風の刃がラヴィリアの頬に傷をつける。

「いつまでそんな余裕でいられるかな?綺麗な顔に傷がつきますよ?」

 嗜虐趣味サディスティックを感じさせる歪んだ笑みを浮かべながら、ラファエルが問う。

 ラヴィリアは何も答えずに、一歩、また一歩とラファエルへと近づいていく。

(おかしい…私の魔法なら、手足の1〜2本、斬り飛ばせていても不思議ではないはずなのに…)


 よく見ると、ラヴィリアの頬についた傷が、柔らかな風が吹くと共に消えていく。

(回復魔法か!)

「なるほど…その余裕。なら、これでどうだっ!」

 込める魔力を増やすことで、魔法の威力が増す。


 ザシュ!!


 ラヴィリアの片腕が風の刃によって斬り飛ばされた。

「ふっ!どうですか?」

 ラファエルが勝ち誇ったような顔をするが、次の瞬間、何事もなかったかのように、ラヴィリアの腕が元通りに治る。

「ば、バカな…!?欠損を即座に回復だとっ!?」


「何をそんなに驚いているんですか?大天使ラファエルの名を冠するなら、与えられた権能は回復に特化していることくらい知っているでしょうに」

「回復など、弱き者が縋る力よ。我らのような強者には必要ない!」

「愚かな…」


 最早、交わす言葉はないと言わんばかりに、ラヴィリアが反撃に出る。

暴風神の死刃ボレアスリッパー

 濃密な魔力が込められた、死の気配を纏った風の刃がラファエルを捉える。


 ザシュ!スパッ!バシュッ!ズバッ!


 両手両足を斬り飛ばされた、ラファエルが床を舐めるように這いつくばった。

「うあ…うぐぁぁぁぁ」


「さぁ。立ちなさい。その程度の傷、回復できるでしょう?」


 流れ出る血が止まる気配はない…


 やがて、ラファエルの目から光が消えた。


「まさか…あの程度の回復も会得していないなんて…」

 回復は弱者が縋るものと切り捨てたラファエルを憐れみながら、

 ラヴィリアは仲間の命を繋ぐ治癒の力を与えられたことを誇りに思うのだった。

 ――――――――――――――――

「こうして同族にお会いするのは初めてとなりますが…さようなら。魔王様の名の下に、貴方方へ神罰を執行します」

「その言葉、そのままお返ししますよ。我らが女神様に対しての不敬、その身をもって知るがいい」

「我が名は、エルシエル。エルシエル・ド・ミカエリス。裁きを下す者なり」

「私は大天使ミカエル。女神ルフィア様の忠実なる下僕にして、天罰を行使する者です」


「…神眼」

【名前】なし

【種族】大天使(ミカエル)


「…そう…貴方達は、名すら与えられていないのですね…」

「何を理由わけのわからない事を!」


絶対魔法防御結界アンチマジックシールド絶対物理障壁アンチマテリアルシールド


絶対魔法防御結界アンチマジックシールド絶対物理障壁アンチマテリアルシールド


 二人同時に防御魔法を使う。

「まぁ、こうなることは予想できましたが…どうします?このままでは千日戦争サウザンドウォーズは避けられませんよ?」

「そうでもないさ…天雷」

「ふっ…無駄なことを…」


 バリバリバリバリ…ドカーーーン!!!


「ぐわっ!そ、そんな…私の魔法防御は絶対のはず…それを貫くなんて…」

「別に驚くほどのことではありませんよ。我が神を守護する御方アルス様に比べたら、大天使ミカエルの結界など、児戯に等しい。当然、我々にはそれを破るだけの力も与えられていますから」

「そんなバカなことがあってたまるものですか!偉大なる女神様でもそのようなスキルを授けては下さらなかったというのに!」

「言ったでしょう?我々の本当の創造主はあそこに控えられている御方なのだと」

「そ、そんな…そんな事…信じられません!!」

「貴方が信じるか信じないかはどうでもいいのです。おや?どうやら、他の皆も終わったようですね」

「何を…」

 見渡すと、他の大天使達の戦いに決着がついていた。

 その事実はミカエルの心を折るのに十分な結果となり、ミカエルは膝をつき、項垂れた。

 最期の希望を持って、自身らの長である、大天使長へ助けを求めようと視線を向けるが、ルシフェルは動こうとしない。

「そんな…ルシフェル様…どうして…?」


「さぁ、終幕です」

 ミカエルが絶望する。


火雷剣ホノミカヅチノツルギ

 エルシエルの手には聖炎と天雷を纏わせた長剣が握られている。


 ザシュ!!


 胸を貫かれたミカエルの口から、ツーっと赤いものが流れる。

「ゴフッ…」


 エルシエルがミカエルの身体から剣を引き抜き、刀身に付いた血を振り払い、納刀する。


 ドシャリ。


 倒れたミカエルの目から光が消え、物言わぬ骸となった、その身体を聖なる炎が燃やし尽くす。


 最後に残されたのは、一握りの灰だけだった。

 ――――――――――――――――

【名前】ウリア・イグニール

【種族】大天使(ウリエル)

【LV】850

【HP】26000/26000

【SP】38000/38000

【力】4500

【知恵】3600

【体力】2400

【精神】3100

【速さ】2200

【運】99

【スキル】

 太陽の権能、剣術、神炎魔法、付与魔法、身体強化、限界突破、神気開放、

 HP自動回復、HP回復量増加、SP自動回復、SP回復量増加、

 神眼、念話、言語理解、気配察知、魔力感知、並列思考、高速思考、無詠唱、

 物理攻撃耐性、魔法攻撃耐性、精神攻撃無効、全状態異常無効


【名前】ガーフィールド・ジブリール

【種族】大天使(ガブリエル)

【LV】850

【HP】25000/25000

【SP】40000/40000

【力】3800

【知恵】4100

【体力】2300

【精神】3200

【速さ】2100

【運】99

【スキル】

 魔操の権能、杖術、神氷魔法、付与魔法、身体強化、限界突破、神気開放、

 HP自動回復、HP回復量増加、SP自動回復、SP回復量増加、

 神眼、念話、言語理解、気配察知、魔力感知、並列思考、高速思考、無詠唱、

 物理攻撃耐性、魔法攻撃耐性、精神攻撃無効、全状態異常無効


【名前】ラヴィリア・イスラフィール

【種族】大天使(ラファエル)

【LV】850

【HP】26000/26000

【SP】38000/38000

【力】3100

【知恵】3700

【体力】2500

【精神】3300

【速さ】2000

【運】99

【スキル】

 天癒の権能、弓術、神風魔法、付与魔法、身体強化、限界突破、神気開放、

 HP自動回復、HP回復量増加、SP自動回復、SP回復量増加、

 神眼、念話、言語理解、気配察知、魔力感知、並列思考、高速思考、無詠唱、

 物理攻撃耐性、魔法攻撃耐性、精神攻撃無効、全状態異常無効


【名前】エルシエル・ド・ミカエリス

【種族】大天使(ミカエル)

【LV】900

【HP】31000/31000

【SP】48000/48000

【力】3000

【知恵】4900

【体力】3000

【精神】4600

【速さ】3300

【運】99

【スキル】

 守護の権能、剣術、神雷魔法、神光魔法、付与魔法、身体強化、限界突破、神気開放、

 HP自動回復、HP回復量増加、SP自動回復、SP回復量増加、

 神眼、念話、言語理解、気配察知、魔力感知、並列思考、高速思考、無詠唱、

 物理攻撃耐性、魔法攻撃耐性、精神攻撃無効、全状態異常無効

 

 ――――――――――――――――

 あとがき。


 更新が遅くなって申し訳ありません。

 各天使に特色を持たせながら圧倒するという描写がなかなか難しくて…


 不定期更新で申し訳ないですが、これからも頑張って最後まで書き切りたいと思ってますので、お待ち下さい。


 次回は…

 残されたのルシフェルがどう動くのか?


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