第144話 チーム皇帝の末路

 宗次さんが逮捕されたが、彼の行方はそれ以来わからなくなってしまった。

 問い合わせても、チームメンバーが面会を申し込んでも、警察からの返答はナシの礫だ。


 宗次さんの行方は気になるが、俺は俺のすべきことをするために、女神教の本拠地とされるダンジョンへ向かうことにした。

 場所は都内の某所にある高層ビルが塔型ダンジョンへと変貌したところだ。


「本当に来るのか?」

「やっぱり私じゃ足手まとい…かな?」

 咲希が不安そうに答える。

「いや…そういうつもりじゃないんだけど…もしかしたら、人と戦わなくちゃいけなくなるかもしれないから…」

「大丈夫。覚悟はできてるから!」

「わかった。そこまでいうなら、俺は何も言わないよ。一緒に行こうか」

「うん!」

 そうは言ったが、なるべく、咲希が戦わなくていいようにするつもりだ。

「あたしも行くからね!」

「明璃…?いや、お前はダメだぞ」

「なんでよっ!?」

「妹に対人戦を勧めるわけ無いだろ?父さんと母さんだって、ダメだって言うと思うぞ?」

「ふふーんだ。お父さんとお母さんには、おにぃと一緒ならいいって言われてるもーん」

「なん…だと?」

 俺に対する信頼度が高いことを喜ぶべきか…

 両親のお気楽さを嘆くべきか…

「はぁ…しょうがないやつだな…」

 俺がため息とともに、諦めて同行を認めると、

「やった!」

 明璃が喜んでいる。

「危ないと思ったら、ドルフに転移させるからな?」

「うん。わかった」

 返事はいいんだよな…


「やっぱり門があるか…」

「真央はライセンスを失くしたままだったっけ?」

「美智子さんのおかげで、俺にかかってた容疑は晴れたみたいだから、再交付はしてもらえるだろうけどな…会長の話だと、今のギルドも信用できそうにないからな…」

「どうするの?おにぃ…?」

「方法はあるよ…ただ、気になることもある。とりあえず、隣の入出管理ビルへ行ってみよう」

「「わかった」」


 俺達はダンジョンの入場手続きをしている管理ビルへと向かった。

「それでは、こちらの書類に必要事項を記入してもらえますか?」

 受付のお姉さんがいかにも怪しい笑顔で書類を差し出してきた。

「あっ!すみません…忘れ物をしたみたいなので、出直してきます!」

「えっ!真央?」

 俺が咄嗟に断って、建物から出ると、咲希と明璃は訳が分からない様子で付いてきた。

「おにぃ?どういうこと?」

「あの紙、魔術契約書になってたぞ…内容はわからなかったけどな」

「魔術契約書?」

「まぁ、簡単に言うと、あれに書き込むと、何らかの制約を受けるようになるってこと…ダンジョンに入った冒険者が全員信者になるって話に関係してるかもな」

「怖っ…」


「さて…正規の方法で入るのは無理そうだな…どうするか…」

 俺達は作戦を練り直すことにした。


 ――――――――――――――――

 一方、その頃…


「む?どうやら客がやってきたようだな」

 世界樹の天辺で監視をしているヴェルグが邪な気配を感じた。


 ドカーン!


 大きな音とともに、ゲートが破壊される。

 そこには3人の外国人が立っていた。

「ううう…」

「ぐがが…」

「ぎぎぎ…」


 目の焦点はあっておらず、薄っすらと身体から黒いオーラが出ている。

 手に持った斧で入口のゲートを破壊したようだ。


 強引な侵入者に、施設内に警報が鳴り響く。

 何があったのか確認するために、美智子が入り口付近のモニターを見ると、そこには自身のよく知る3人の姿があった。

「彼らがどうしてここに…?それにしても…様子が変だわ」

 急ぎ建物の外へと駆け出して、問題の起きている場所へ向かった。


「止まりなさい!」

 美智子が、元チームメイトの3人に呼びかけるが、自我のない彼らは返事などしない。

「ジーン!どうしたの?こんなこと、貴方らしくないわ!」

 美智子はチームの作戦指揮を取っていた司令塔に声をかける。

 綿密な作戦を立てるタイプの彼が、このように、力任せに何も考えずに襲撃してくるなど考えられなかったからだ。

 だが、やはり返事はなかった…

 更に近づこうとすると、銀色の狼と真っ白な大鷲が美智子の行く手を塞ぐ。

「それ以上は行かない方がいい」

「やつらからは女神の力を感じます」

 2匹の忠告を受け、美智子は再び彼らの様子を観察すると、目の焦点は合っていないし、言葉も理解していないようだとわかる。


 そして…


「うぉおおおおおおお!!!!」

「ぐがぁああああああ!!!!」

「ぎぃがぁぁああああ!!!!」


 3人が、雄叫びなのか、悲鳴なのか、叫び声をあげると、彼らの顔面にヒビが入った…


 ピシッ…ピシリ…バリリリ…


 顔面のヒビが大きく割れ始め、ついには、彼らの身体が真っ二つに裂けた。

 そして、その中から黒い影が現れる。

「どうやら、完全に女神の力に飲み込まれたらしいな…」

「禍々しい魔力を感じますね…」

 2匹の見解に、美智子は言葉を失う…ようやく状況が飲み込めた時、

「あれが、レベルアップポーションを飲んだ者の末路なの?」

 一つの答えに到達した。


 人から変異した黒い影…さしずめ影の魔人といったところか。その姿は迷宮核を砕いたときに現れる、低ランクの女神のかけらに酷似している。

 違うのは、女神のかけらに比べて、内包する魔力が弱いことと、各々が、人間だった時に使っていた武器を手にしていることくらいか?


「URyyyyyy…」

「GRruaaa…」

「%@#$&**@%…」


 奇声を発する3体の影がゆらりと揺れ、

「が、合体した?」

「それでも、我らのやることは変わらん!行くぞ!」

 3つの影が一つとなり、その姿はまるで三面六臂の阿修羅のようにも見える。


 ヴェルグが空中から、先制攻撃とばかりに、風魔法を放つ。

風刃エアブレイド

 斬撃強化によって鋭さを増した風の刃が影の魔人に直撃する瞬間、

 影は3つに分かれ、風の刃を回避した後、再び一つの影へと合体した。

「厄介な…なら、これで動きを封じます!神の縛鎖グレイプニル!」

 シルヴィが光り輝く鎖によって、影の魔人の動きを封じる。


 影の魔人は自身を縛る鎖から逃れようと藻掻くが、その度、神の縛鎖グレイプニルは影の魔人の拘束を強めていく。

「無駄ですよ。ヴェルグ!」

「任せろ!」

 シルヴィの呼びかけにヴェルグが答える。


 ヴェルグが空中高く舞い上がり、地上から見たその姿が豆粒ほどになったところで上昇をやめ、急降下を始めた。


 それを見たシルヴィが神の縛鎖グレイプニルで拘束したままの影の魔人を空中へと投げ上げる。


 高速飛翔に、落下の速度を加え、そのスピードは音速を超える。

「飛翔斬撃…疾風乱舞!」

 その翼に、風の刃を纏ったヴェルグが空中に投げ出された影の魔人を切り刻む。


「GYA&*%aa#$&aa%※@aa!!!!」


 断末魔の声を上げ、影の魔人は細切れとなって霧散した。


「終わった…の?」

 その一部始終を見ていた美智子が、独りごちる。

「みんな…助けてあげれなくて、ごめんなさい」


――――――――――――――――

 あとがき。


 更新が遅くなってしまいまして、申し訳ありません…


 不定期更新となってしまっていますが、最後まで書き切りたいと思ってますので、これからもよろしくお願いします。


『面白い』

『続きが読みたい』

 と思っていただけたなら、


 フォローや☆☆☆評価をよろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る