第122話 謀略
「何だあの化け物竜は…?」
空を埋め尽くす竜達を、たった一撃で消し飛ばした様を見て、チーム
「いや、今はそんなことより、あっちだぜ」
目を移すと、拘束され、地に伏せた赤銅色の巨大な竜がチーム
「や、やりましたわ!
竜の巨体が砕け散り、降り注ぐ氷の結晶の中で、一人の女が勝鬨をあげている。
「どうやら、終わったようだな…」
空と陸を埋め尽くすほどの竜が、ボスが倒されたことで靄となって、かき消えていく…
「勝負は私達の負けですね…」
美智子がそんなことを口にすると、
「何を言ってるんだ?ミチコ。依頼を受けたのは俺達で、奴らはバックアップなんだぜ?」
「そんな!約束を破るつもり?」
「そもそも、俺達はそんな約束なんてしてないぜ?お前が勝手にやったことだろ?」
「さて、それじゃ行くとするか。奴らから迷宮核を受け取って、依頼終了だ」
ドレイクが先頭をきって、戦闘を終えたばかりの彼らに近づいていく。
「よう!見てたぜ。なかなか見事な戦いだったじゃねぇか!」
気さくに声をかけてくる、赤髪のドレイクに対し、明璃が
「ふふーん。勝負はあたし達の勝ちよ!」
と自慢気に勝ち名乗りをあげると、
「はぁ?勝負だ?何を言ってんだ?それより、お前、その手に持ってる魔石を渡してもらおうか」
「な、何を言ってるんですの?これは、
「おいおい…麗華さんだったか?大事なことを忘れていないか?日本国政府から依頼を受けたのは俺達で、あんたらはただのバックアップだ。それとも何か?国へと渡す、依頼完了のアイテムを持ち去るつもりかよ?」
「そ、それは…」
「ああ、そうかい。渡す気がねえっつーんなら、力づくで取り返すしかねぇわなぁ!!」
戦斧を振り上げたドレイクが麗華に迫る。
「危ないっ!」
それを見た俺が咄嗟に間に入り、戦斧を受け止めた。
「ちっ…やっぱり邪魔だなぁ!てめぇはよぉっ!」
「それはこっちの台詞だ!」
今、こいつは間違いなく麗華を殺す気で戦斧を振り下ろしていた…
相手が殺意を持って攻撃してくるというのなら、こっちもただ手をこまねいて見ているってわけにもいかない…
ドレイクと対峙する俺の心が冷えていく…冷静に冷酷に…敵意には敵意を…殺意には殺意を…
先に動いたのはドレイクだった。
「狂気開放…限界突破…真・狂輝閃斧!!」
振り上げた戦斧が輝き、内包されたエネルギーが敵に炸裂した瞬間に大爆発を引き起こすのだろう。
俺のステータスなら、直接食らっても問題ないとは思うが、ここは奴の攻撃の後の先を取り、こちらから攻撃を仕掛ける!
「魔闘一閃…瞬雷!」
このタイミングなら、俺の竜牙刀が先に奴の身体を斬り裂く!
「ここだ!忍法、変わり身の術!」
「なっ!」
眼の前で、戦斧を振り下ろそうとしていたドレイクの姿が、無防備な美智子と入れ替わる。
(くっ…ダメだ…止まれない!)
「え?」
突然目の前の光景が変わった美智子も今の自分が置かれている状況に混乱している。
俺の斬撃はそのまま、美智子の身体へと吸い込まれ、逆袈裟に斬り上げられた美智子の身体から大量の血が吹き出した…
「そ…そんな…どうし…て…」
ドシャリ…
殺意の乗った俺の攻撃で美智子の命の灯が消えた。
「うおぉぉぉぉ!!ミチコっ!てめぇ!よくもミチコを!絶対に許さねぇ!!」
「落ち着け、ナイジェル!!迷宮主との戦いで疲弊している今の俺達じゃ勝てん!ここは退くぞ!」
「くそっ!覚えてろよ…てめぇ!ミチコの仇は、必ずこの俺の手で討ってやるからな!!」
そんな台詞を残して、チーム
―――――――――――――――――
「ハイ、カットぉ〜!!なかなか名演技だったじゃねぇかよ、ナイジェル〜!」
「はんっ!こんなことしなくても俺は負けねぇ!!」
「そう言うなって…これで俺達に逆らうようになってきた邪魔なミチコも始末できたしな」
「そうだな!後のことはジーン、任せたぞ」
「わかってるさ。これで奴らも終わりだ」
「フフフ…」
「ハハハ…」
「奴らがどんな顔するか…楽しみだぜ…ククク」
―――――――――――――――――
「おにぃ!」
「わかってる!ミラ!頼むぞ」
「お任せください。アルス、まずは傷の修復を」
「オッケー」
アルスの超霊薬状態の身体へ美智子の遺体を収容し、傷を治す。
「
…
「どうしたんだ…?目を覚まさないが…」
「はい…仲間に裏切られたショックで魂がダメージを負っていたみたいで…」
「まさか…蘇生に失敗したのか?」
「いえ、蘇生は成功してます。ただ、傷ついた魂が覚醒を拒んでいるのかもしれません…」
「そうか…後のことは会長に任せよう。ドルフ!」
「はっ!」
俺とドルフは美智子さんを連れて、会長宅へと移動した。
…
「そうか…そのようなことが…」
「はい。美智子さんのことはよろしくお願いします」
「うむ。任せておけ。早乙女は知らぬ仲ではないからの。して、真央くん…これからどうするつもりかね?」
「もう一度ダンジョンへ戻って、迷宮核を砕きます」
「そ、それは…Sランクなのじゃろう?大丈夫か?」
「わかりません…でも、遅かれ早かれやらなければならないことですし…それに…あっさり退いた奴らのことが気になるんです…」
「そうか…気をつけるんじゃぞ。力不足ですまん…」
「いえ、会長には会長にできることをお願いします」
「わかった…」
神崎会長に美智子さんのことを任せて、俺は再びダンジョンへ移動した。
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