第120話 竜の狩猟場
地竜を倒したことを確認した麗華と零士がその場にヘタリと座り込んだ。どうやら、あの攻撃を躱し続けるのにかなり精神を消耗したらしい。
「お疲れさん。今からここに拠点を設置するから、そこで休んでくれ」
俺は疲れて座り込んでいる麗華と零士にそう告げて、アルスの収納から、空間拡張テントを取り出して設置する。
「拠点というのは、これのことですの?」
「普通のテントじゃないか…」
「まぁ、中に入ればわかるから。入った入った」
訝しむ二人をテントの入口から中へと押し込む。
「こ、これは…?」
「何だ?一体どうなっている…?」
大体、初めて入るやつはみんなそういう反応になるよな。
「咲希、麗華を案内してやってくれ」「わかった。麗華先輩、わたしについてきて下さい」
「何が何だかわかりませんけど…よろしくお願いしますわね」
「零士はこっちだ」
「あ、あぁ。説明してくれるか?これは一体何なんだ?」
「あぁ、俺が異世界にいた頃に使ってたテントだよ。空間魔法の付与で内部の広さを拡張してある」
「そんなことが…できるのか?いや、実際これを見たら、できるんだろうな…相変わらず非常識な…」
「便利なんだからいいだろ。そういう物だと思って使ってくれ」
「わかった」
麗華と零士にテント内を案内して、彼女らには風呂にでも入ってもらっている間に、こっちはこっちで食事の準備に取り掛かる。
母さんが、
「これが竜の肉なのね〜」
どうやら、俺達が、異世界の食材を食べていたことは見ていたようで、興味があったみたいだ。
風呂から出てきた麗華達と一緒に、テーブルにつき、ドラゴンステーキを堪能する。
美味しい料理は食べ慣れているはずのお嬢様ですら、目を見開いて驚いていたが、それが異世界で手に入れた竜の肉だと告げると、零士がむせて
「なんてものをお嬢様に食べさせるんだ!」
などと怒っていたが、お前、さっきまであまりの美味さに、絶句してたじゃないか…説得力がないぞ。
食事の後は、今後の方針について話し合う。
まずは、アルスと影狼たちをダンジョン内に放し、地形の把握をしてもらっていることをみんなに説明した。
チーム
みんなで集まってミーティングをしていると、
「グォアァァァァァァァァァァ!!!!!」
と、大気を震わせるような先程の地竜とは比べ物にならない程の咆哮が聞こえてきた。
「どうやら、やってきたみたいだな」
俺達は横穴から出て、空を見上げる。そこでは地上を見下ろしながら、優雅に旋回を繰り返す、赤銅色の巨大な竜が空を舞っていた。
俺達に気づいた竜の口に魔力の高まりを感じる。
「父さん!」
「任せろ!」
そんな物で防ぐつもりか?とでも言うように、竜が
父さんが
「魔物鑑定」
【名前】なし
【種族】竜神皇
【LV】99
【HP】10000/10000
【SP】3500/3500
【力】999
【知恵】350
【体力】999
【精神】360
【速さ】540
【運】99
【スキル】
王権、竜言語魔法、王の威圧、咆哮、竜息吹、竜鱗、言語理解、念話、高速思考、並列思考、物理攻撃耐性、炎無効、魔法攻撃耐性、精神攻撃耐性、状態異常耐性
「これは…父さん達が戦った頃より進化してる?」
ボソッと呟いた、俺の独り言に麗華が反応する。
「どういうことですの?」
「種族は竜神皇、レベル99だ。このステータスなら、前回戦った時の父さん達の強さなら全滅しててもおかしくない」
「そんな…」
自分も強くなって、今回は
「か、勝てますでしょうか…?」
「問題ない」
(っていうか、多分、父さんと母さんだけでも勝てる気がする…)
空飛んでるのが厄介だな…
「リーナ!」
「お任せくださいな!」
神狼化して、蒼銀の輝きが尾を引きながら、ジャンプする。
雄大に空を舞う竜の上を取り、
「
その手から、輝く鎖が放たれた。
「グオォ!」
(獣風情が、生意気な!)
竜の言葉が頭に響く。
念話か…
「我らが主に臭い息を吹きかけた無礼の方が許せません…万死に値します!身の程をわきまえぬ愚か者め!そのまま地に伏せるがいい!」
ズドォォォォォォォォォンンン!!!
大きな音とともに落下した竜はそのまま地に伏せ、
「グルゥオォォォォォォ!!」
「情けないですわね…仮にも王を名乗りながら、仲間を呼ぶとは…」
今の咆哮は、配下の竜を呼び集めたということか…
竜の狩猟場に地響きが伝わり、空には夥しい数の影が集まってくる。
出発前に竜の群れの心配をしていたが、群れどころではない数の竜達が集まってきているようだ。
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