第118話 竜の巣攻略

 それから一時間後。


 俺達は門の前でチーム皇帝と睨み合っている。

「お前らは前回失敗したんだろ?おとなしく、俺達に任せて待ってりゃいいんだよ!」 

「ふっ…俺の挨拶も避けれないやつが、随分とデカい口叩くじゃないか!」

「なんだとっ!てめぇ!」


「やめなさい!ドレイク!」

「ちっ…(いつもいつも口うるせぇ女だ…)」

 美智子さんに止められたドレイクは渋々といった感じで引き下がったが、その目にはありありと不満と怒りが浮かんでいた。


「おい、ベン、ジーク…耳を貸せ」

 ドレイクに呼びかけられたジークとベンが何やら話をしている。

「…で、…だから…、…するのはどうだ?」

「いいんじゃねぇの?俺に靡かない女なんて…」

「俺達とのレベル差も開いてしまったしな…」

「よし、決まりだな」

「…なら、こういうのはどうだ?」

「…へっ。そりゃあいいな。ジーク…そのタイミングはお前に任せる」

「…任せておけ」

 3人の話は真央達と交渉している美智子の耳には届かなかった。


「ごめんなさいね。それでは、私達、皇帝エンペラーと貴方方、魂の探索者ソウルシーカーのどちらが先に依頼のあった竜を討伐できるか?競争ということでいいですね?」

 美智子さんが改めて確認し、開始の合図をすると同時に、皇帝の面々がダンジョンの先を目指して走り出した。


「おにぃ…行かなくていいの?」

「こっちには地の利があるからな、父さん達が襲われた場所までまずは行ってみようと思うんだが…」

 行ったことのない場所へは転移できないからな…今回は案内してもらうほうが早い。


「っと、その前に…麗華と零士にはこれをやる」

 渡したのは刀身から冷気が漏れる両刃の長剣、『氷の魔剣アイスブリンガー』とナックルガードの付いた漆黒の双剣、『影の刃シャドウエッジ』。

 二人には相性の良い武器だと思う。

「これを私達に?」

「ああ、言いたくはないが、俺達の中では、お前らのレベルが低すぎる」

「レベルが低いだと?バカを言うな!あの吸血鬼のダンジョンで私もお嬢様もレベル70を超えている!」


「ステータスオープン」

【名前】獅童 真央

【職業】召喚士

【LV】124

【HP】101609/101609(1280+330+99999)

【SP】102471/102471(1965+507+99999)

【力】9124(258+66+8800)

【知恵】10321(256+66+9999)

【体力】10325(259+67+9999)

【精神】10310(247+64+9999)

【速さ】10320(255+66+9999)

【運】223(99+25+99)

【スキル】

 魔物鑑定、契約、召喚、送還、魔物言語、魔物探知、複数召喚、遠距離送還、魔力操作、召喚魔力半減、魔力自動回復、魔物強化、能力共有、

 神気開放、魂の絆(封印中)

【契約中】

 258/258

【称号】

 帰還者、世界を超えし者、元魔王、ダンジョン踏破者、魔物を率いる者、神に挑む者、限界を超えし者


「理解したか?」

 俺は唐突に自分のステータスを公開し、説明を省く。

「レ、レベル124?な、なんですの?この数値は…」

「貴様…化け物か?」


「俺が化け物かどうかなんてのはこの際どうでもいい。ただ、足りない分は装備で補うしかないだろ?」

「わ、わかりましたわ」

「くっ…」


「気にしちゃダメだよ。おにぃのステータスはあたし達から見ても、おかしいんだから」

 明璃がフォローしているようだが、確かに俺も自分のステータスはおかしいと思っているので、特に言い返すこともない。


「なら、出発しよう。零士、道案内頼めるか?」

「わかった。任せろ」

 前回、ぎりぎりの撤退戦を指揮したのは零士だと聞かされている。なら、今回の道案内は、彼が適任だろう。

 零士を先頭に、補佐として影狼を零士の影に潜ませておく。


 山頂の門から入ったはずの俺達は、見たこともない火山の麓から歩き出す。


 遠くの空に見える影は竜なのだろうが、零士の集団隠秘のスキルでパーティ全体に隠匿ステルスをかけ、各々の影の中に潜ませている影狼による絶影によって、気配を完全に消している俺達は空の竜に気づかれることなく、数時間で目的の場所へと到達した。


 そこは火山の麓にある平原だった。

「ここがそうなのか?」

「ああ。この場所で俺達は見たこともない竜に襲われたんだ」

 撤退する時に追撃を受けなかったという話から、領域守護者フィールドボスだと思っていたが、どうやら少し認識が甘かったらしい。

 なぜなら、そこに目的の竜の姿がなかったからだ。


 領域守護者フィールドボスなら、そのボス専用の領域フィールドに人が入り込めば、現れるはずが、暫く待っても姿すら見えない。

 この事から、移動するタイプのボスであることがわかる。そして、零士達の撤退を追撃しなかったことを考えれば、戦闘フィールドが複数あるタイプのボスなのだろう。


「竜の狩猟場か…」


 ポツリと呟いた俺の声に

「おにぃ、それは何なの?」

 明璃が質問を投げかけてくる。

「竜は縄張り意識が強いって話をしただろ?」

「うん」

「ボスクラスの竜だと、巣穴と狩り場の2つの戦闘フィールドを移動する場合があるんだ」

「巣穴と狩り場…」

「同レベル帯でボス討伐を狙うなら、巣穴にいる時を狙うのがセオリーだな」

 狩り場のような広いフィールドで空を飛ぶ竜を相手にするのは甚大な被害が出るからな…

 まぁ、それは生物としての竜の生態なんだけど、こっちのダンジョンで模倣された実態のない竜にもその習性が適用されてるとは思ってなかったな…


「なら、ここじゃなくて、巣穴を目指して移動するんだね?」

「いや、同レベル帯ならそうするけどな、俺達ならレベル差があるから、ここで待って仕留めるって手もある」

 そこで、この竜の討伐にこだわっていた、麗華の意見を聞いてみる。

「麗華はどうしたい?超えなければならない壁とか言ってたよな?なら、巣穴を目指すか?」

「いえ、ここで待っていれば現れるのでしょう?なら、ここで迎え撃ちますわ!」

 やる気は十分だな。あとは、いつ現れるか…?だが。


「魔王様…あちらに…」

 周辺の偵察をしてくれていたドルフから、拠点を構えるのに良さそうな場所があると報告を受けた。


「ここで待って迎え撃つなら、拠点を構えた方がいいと思う。ちょうど良さそうな場所をドルフが見つけたから、移動しよう」

 みんなを連れて移動した先に、一段下がった窪みと横穴があり、その横穴の中には1匹の敵の反応がある。


「中にいるのは地竜だな」


「前哨戦ですわね。わたくしに任せてもらえますか?」

「では、お嬢様、私も共に参ります」


 麗華と零士が地竜との戦いを買って出た。


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