第117話 チーム皇帝
竜の巣の門が見える位置へと転移した俺達は、まず、ダンジョンの入場を管理する施設へ足を運んだ。
「チーム皇帝の皆さんはまだ来てないようですわね…」
「まぁ、俺達は転移で移動したからな…」
「相手を待たせるよりはいいと思いますわ」
「そんなことで怒るような奴らなのか?」
「
そんな話をしていると、
バラバラバラバラ…
ヘリか何かの
「どうやら到着したみたいですわね」
外に出て、空を見ると、その機体の姿が見えた。
「オスプレイか…初めて見たな」
着陸した機体から降りてきたのは、動画で見た3人と1人の女性だった。
麗華が俺達を代表して挨拶をする。
「Hallo!Mr.Falcon.」
麗華が右手を差し出すと、青髪の男がそれに答えて握手する。
「日本語で大丈夫ですよ。貴女がミス麗華ですか?」
流暢な日本語でファルコンと呼ばれた男が返事を返してきた。
「え、ええ。今回はよろしくお願いしますわ」
そんな和やかな雰囲気だったのだが、後から続く、赤髪の男が、麗華とファルコンと呼ばれた青髪の男の握手の間を強引に通り抜け、こちらに近づいてきた。
俺の前に立ち止まり、手を振り上げる。収納から出したのだろうか?その手には戦斧が握られており、振り上げられた戦斧が俺の首めがけて振り下ろされた。
俺の目には当然のように、それは視えているので、素手で戦斧を掴み、受け止めた。
その突然の凶行に、仲間達は一瞬呆けていたが、すぐに武器を構えて臨戦態勢を取る。
「おいおい…物騒だな…何のつもりだ?」
「ふん!足手まといは要らねえからな…試してやっただけだ」
「やめなさい!ドレイク!」
制止するのが遅いんじゃないか?と思ったが、3人と一緒に降りてきた女性が声を上げる。
「おいおい、ミチコ!そんな怖い顔するなよ…こんなの、ただの挨拶じゃねぇか」
挨拶だと?受け止められなければ、首が飛んでたぞ?
「兄ちゃんも、なかなかやるじゃねぇか…よっと!」
戦斧を引き、身体を一回転させて、再び俺の首を狙ったようだ。
2度も好きにさせるかよ…
俺も収納から、竜牙刀を抜き、赤髪の男の肘から先を斬り飛ばした。
「なっ!」
制止しようとした女が躊躇いなく相手の腕を斬ったことを驚いている。
「ああ、すまない。欧米流の挨拶には慣れてなくてな…避けれない方が悪いんだろ?」
「てめぇ!…ブッ殺す!!」
「いい加減にしなさい!!」
ミチコと呼ばれた女が激高している。
「HEYHEY!ナイジェル〜みっともねぇ姿晒してんじゃねぇかよ」
笑いながら、小瓶を投げてくるのは、ベンと呼ばれてた金髪の筋肉男だ。それを受け取り、グイッと飲み込めば、無くなった腕が再生した。
さすが、トップランカーともなると、
「なんだと、ベン!てめぇも俺とやり合おうってのか!?」
「おお、怖い怖い。そのやる気は
「ちっ!いいか!てめぇは必ず俺の手でブッ殺す!覚えてろよ?」
俺に向かって指差しながら、捨て台詞を吐いているが、世界トップがこんな野蛮なやつだとは思ってなかったな…
そして赤髪の男はそのままダンジョンに併設されたビルの方へと向かって行った。
「ごめんなさい…いつもの彼はあんなに見境なく攻撃を仕掛けるような人じゃないんだけど…」
「あんたは?」
「私は
なるほど…チーム
「早乙女というと、もしかして…」
「ええ。早乙女進は私の祖父です」
「あなたもレベルアップポーションを飲んでるんですか?」
「いえ…私は…あれを手にした時に、危機察知スキルが微かに反応したので躊躇ってしまって…」
「危機察知ね…良いスキル持ってるじゃないか。そのことをあいつらは?」
「彼らにも、祖父にも伝えたんですが…」
「なるほどね。正直、俺もあれはヤバいと思ってる。飲まなくて正解だよ」
「ミチコサン〜。自分ばっかり喋ってないでさ、そろそろ、俺達にも紹介してくれよ。彼女らが今回のバックアップなんだろ?」
「ええ、そうね、ベン。彼がリーダーの真央、そして、麗華、隆、真由子、零士、咲希、明璃」
「OK!俺はベンジャミン・K・クルーマーだ。気軽にベンって呼んでくれ」
自己紹介をした、ベンって男の視線は、俺達ではなく、メンバーの女性陣にしか向いていなかった。
「OK!OK!麗華、真由子、咲希ね〜。君たちは今夜、俺のテントに来なよ〜。これは命令だ」
「は?」
何言ってんだ?こいつ?
「俺が3人まとめて抱いてやるって言ってるんだ。光栄だろ?」
下品に腰を振りながら、そんなふざけたことを言っている。
「はっ?ふざけんな!」
俺が怒りの抗議をすると、
「男としょんべんくせえガキには用はねぇんだわ」
そんな事をいいながら、女性陣へと近づこうとするので、竜牙刀で牽制する。
ベンとかいう、大猿が俺を睨み、
「おいおい…俺の
さも当たり前のように言い放つこの猿の思考が俺には理解できない…
「あらあら、うふふ…」
剣呑な光を瞳に宿す母の身体から魔力が溢れている。
「真由子さん、こんな害虫は消し炭にしてもいいと思うよ」
父さんも怒りが抑えきれないみたいだ。
「母さんも、父さんも、それじゃ一瞬で終わっちゃうじゃないか…ここはグリムに任せて…」
俺がそう言うと、魔法陣から怨念を伴った霊気が漏れ始める。
「ちょっと待った!おにぃ!流石にグリムさんはまずいよ!」
「そ、そうですわ、真央さん!落ち着いてくださいまし!」
「そ、そうだぞ、真央。私達がこんな奴について行くわけなだいろう?大丈夫だから、なっ!」
みんなが必死で止めるので、少しだけ冷静になり、大猿の動きを刀で牽制したまま、女性に話しかける。
「美智子さん、とか言ったな。さすがにこんなやつらと一緒じゃ、ダンジョンアタックなんてできないぞ?」
「そ、そうね…ベン!あなたも、いい加減にしなさい!失礼でしょ?」
「なんだよ、ミチコサン〜。だったら、今夜は君が俺の相手をしてくれるのかい?」
「そういう話じゃない!ファルコン!ベンを連れて先に行っててくれる?」
「全く…お前ら…問題起こすなよって言っただろ?ミチコ、こいつらは任せて話しを纏めといてくれ」
「わかったわ」
「ほら、行くぞ、ベン!」
「わかったよ、ジーン!そんな怒るなって…」
ベンもファルコンと呼ばれた青髪の男に連れられて、施設へと向かった。
この場に残ったのは美智子と俺達だ。
「で、どうするんだ?さっきも言ったけど、あいつらと一緒ってのは無理だぞ」
「そ、そうよね…ベンも、彼は確かに女好きだけど、この場であんな事を言うような人じゃないんだけど…」
その話を聞いて、俺の中で何かが繋がった気がした。
「レベルアップポーション…」
ポツリと呟いた俺の一言を、美智子は聞き逃さなかった。
「え?」
「いや、ドレイクもベンも、いつもと違うって言ってたから、もしかしたら、何らかの副作用でも出てるんじゃないかってな…」
「そんな…いえ…でも…確かに、彼らの様子が少し変だなって思うようになったのは、あれを飲んでからかも…」
どうやら、美智子にも心当たりがあるようだった。
そこで俺は一つ提案をする。
「なら、いっその事、別行動にしないか?」
「それはどういう…?」
「どっちのパーティがボスを倒しても問題ないだろ?競争にしないか?って話だ。もちろん、戦利品は倒した方の物ってことでな」
暫く考えていたようだが、あの状態のチームで合同攻略は不可能だと思ったのか、美智子も俺の提案を了承した。
「わかったわ。では、出発は一時間後。私が彼らに説明するから」
「OKだ」
こうして、俺達はこの
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