第106話 女神のかけら
「全員召喚!」
辺り一面に輝く魔法陣から、配下の魔物達が姿を現す。
「魔王様、万が一があるかも知れませんので、ドルフと共に退去を」
ミラが俺の身の安全を気にかけてくれる。
「いや、たかがかけらにお前らが苦戦するとなると女神との戦いが絶望的なものになる。瞬殺してみせろ!」
「!!かしこまりました。アルス。魔王様の側を片時も離れてはなりませんよ」
「わかってる。ボクはその為に生まれてきたんだから」
そう言ったアルスが俺に覆い被さり、俺の身体はアルスの体内に取り込まれた。吸血姫戦でみんなを守っていた観戦モードといったところだ。
「では、みなさん。魔王様は瞬殺せよとの仰せです」
「ええ。魔王様の前で無様は晒せないわね」
「オ任セクダサイ」
「御意」
「クカカカカ!彼奴の魂はどんな絶望を
「ワォン」
「「了解!!」」
まず動いたのはガルムだ。
「ワオォォォォォォン」
母の置き土産で未だ女神のかけらを燃やし続けている神の焔を
火勢が増し、女神のかけらは焔から脱しようとするような動きを見せる。
「逃しませんよ。
リーナの手首に巻かれている、細い鎖のようなアクセサリーが光り輝く
神を喰らう獣ですら、その動きを封じることのできる鎖は女神のかけらの動きを完全に封じている。
どうにか鎖から逃れようと女神のかけらが悪足掻きをする。黒い魔力の風を刃にして、全方位に無差別に飛ばしたのだが、それでも
全方位に放たれた黒い刃はリーナやドルフ達、素早さが高い魔物は軽々と避けたが、レオンやアルスはその刃を身体で受け止めた。
「グオッ…」
レオンは腕を交差させて刃を受け止めた為、その両腕に傷がついている。
「かけらでも、神ってことか…ボクがダメージを受けるなんてね…」
アルスがダメージを受けた?
【名前】アルス・グラトニア
【種族】アルティメットスライム
【LV】999
【HP】98999/99999
【SP】24500/24500
【力】3200
【知恵】2400
【体力】9999
【精神】9999
【速さ】1800
【運】99
【スキル】
分裂、合体、分解、吸収、合成、変化、擬態
超再生、HP自動回復、HP回復量増加
念話、言語理解、気配察知、魔力感知、熱源探知、並列思考、高速思考、次元収納、
物理攻撃無効、魔法攻撃無効、精神攻撃無効、全状態異常無効
咄嗟にアルスのステータスを確認する。
「アルスの防御力で一撃で1000ダメージだと?」
やはり、かけらと言っても神なんだな…
神属性の攻撃は全ての防御を貫通する上に、回復阻害の効果まである。レオンの傷はしばらく治らないだろうし、アルスのHPも少しの間回復することはないだろう。
「輝煌剣…
レオンカイザーが黒い刃の放出の合間を狙って剣を構えた。
「
レオンカイザーの剣に伝わる魔力が白に変わる。
「輝煌光輪斬」
レオンの斬撃に続くようにグリムも攻撃に移る。6碗の鎌はゾワゾワと形態を変化させ、一本の大鎌となり、死者の怨念を纏うようになった。紫の瘴気を伴った大鎌が空気を斬り裂くように振り下ろされた。
「
レオンの攻撃は女神のかけらの胴体部分を斬り裂き、グリムの死鎌はその首を刎ねた。
3つに分かれた影はそのまま霧散するかと思われたが、何事もなかったように、再び元通りに修復する。
「実体がないのか…?」
「魂は存在しないようですな」
俺の呟きをグリムが拾う。
よく見れば、影の量が減っている?物理攻撃は効かないようだが、レオンの光属性とグリムの魂砕きは確実にダメージを与えてはいたようだ。
「月光…」
リーナがスキルを使う。空に浮かんだ擬似的な月の光が夜の眷属達に対して
影響を受けるのは、吸血姫であるミラと、影人狼のドルフ、そして影狼達だ。
強化を受けたドルフ達、シャドウ種が女神のかけらの身体に飛び込んで行く。
そうか!実体のない身体は影そのものなのか。
「ギャァァァァァァァ!!」
ドルフ達が影の内部から空間を引き裂いているのか?女神のかけらが悲鳴をあげる度、影の身体が削られている。
影の肉体がところどころ綻びを見せ始めたところで、ドルフ達が影空間から飛び出てきた。
「
霧化して背後から近づいていたミラが、女神のかけらの首筋に牙を立てる。
実体のない影の身体を構成しているのは魔力なのだろう、ダメージを受けたところで魔力を吸収された女神のかけらが明らかに消耗している様子が見て取れた。
振りほどこうと、黒の斬撃を放つが、ミラは霧化して躱す。
「今です!リーナ!」
ミラの合図を受けたリーナが神狼化し、蒼銀の光の軌跡を描きながら女神のかけらを翻弄する。
「
神属性を宿したリーナの爪が女神のかけらを引き裂いた。
「ギャァァァ………」
神属性の一撃が女神のかけらにとっての致命の一撃となった。
断末魔の悲鳴をあげながら、影の身体が霧散していく…
“レベルが上がりました…”
“レベルが上がりました…”
“レベルが上がりました…”
“レベルが上がりました…”
…
…
…
“レベルが上がりました…”
“レベルが上がりました…”
頭の中でレベルアップを知らせるアナウンスが鳴り止まらない。
だが、それは女神のかけらを完全に倒したという証左だ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ………!!
突如として、ダンジョン全体が揺れ始めた。
「魔王様!空間全体に異常が!」
「これがダンジョンの崩壊か…?」
空間全体が揺れ、赤茶けた荒野の地面が割れ、空にヒビが入る。割れた空に黒い球体が浮かんでいて、それが砕けたダンジョンのかけらを引き寄せ、吸い込んでいるようにも見える。
「全員を送還する!ドルフ、脱出だ。頼んだぞ!」
「はっ!影渡り!」
ドルフの影が真央を飲み込み、真央の姿はダンジョンから消えた。
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