【第5章】竜王討伐編
第101話 両親の復活
会長との話し合いが終わったので、里奈と雄介、十和子と別れ、自宅へと帰ってきた。
他のメンバーに連絡をしてみると、小夜はまだ弟の世話をするらしく、病院を離れないとのこと。
麗華と零士は復興作業の陣頭指揮を取っていて忙しいらしい。隆さんと真由子さんに後で礼を言いに行くと言っていたので、もう復活したようなものだと思っているのだろう。
咲希も、今夜は家族だけで過ごすといいと言い残して、自宅へと帰っていった。
…
「明璃、ようやく父さんと母さんを生き返らせることができるな」
「おにぃ…うん。うん!」
まずは、保護しますというアナウンスがあってから、全くコンタクトを取っていない、父と母の魂の所在を確認しないといけない。
「ミラ、
「何でしょうか?魔王様」
「父さんと母さんの魂は俺のスキルで保護してあるらしいんだが、コンタクトを取りたいと思っているんだ。協力してくれ」
「わかりました」
ミラの手を握り、自身の中へと意識を向けてみる。
仲間たちと繋がったときのように、呼びかける。
(父さん!母さん!俺の声が聞こえる?)
…
ダメか…返事がない。俺の中にはいないのか…?
「ミラ、何かわかったか?」
「微かにですが…魔王様のスキルに何者かが干渉したような痕跡が見られます…」
「誰だ!?そいつは…!」
俺の知らない間に俺のスキルに干渉した者がいるという。もし、そのせいで父と母の魂が失われでもしたのなら…俺はそいつを許せそうにない!!
「いえ…この痕跡は…でも…しかし…下界への干渉は禁忌のはず…」
ミラが一人考え込んでいて、どうも要領を得ない。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
その頃、とある場所では…
「お父さん!まーくんが呼んでるわ!」
「母さん、それはわかってるが…世話になっておいて、挨拶もせずに去るというのは信義に
「でも、あの方々はお忙しいでしょう?」
「それはそうだが…まさかこんなことになっているなんてなぁ…想像だにしていなかったよ」
「そうね…ルフィアだったっけ?うちのまーくんにちょっかいかけたことをきっちり後悔させてあげないと!!」
「そうだな!その為にここで鍛えてもらっていたんだし…」
「あ!お二人共、そろそろ帰られるのですね?まだ、こちらは手が離せないので、真央さんによろしくお伝えくださいとの伝言を預かっております」
「そうでしたか。こちらこそ、色々とお世話になりました。ありがとうございましたとお伝え願えますか?」
「承りました。それでは、下界までお送り致しますので、私に付いてきてください」
「「はい。よろしくお願いします」」
…
「そうか…彼らは戻ったのじゃな…」
「はい。色々とお世話になりましたとの伝言を預かっております」
「ほっほっほ。それを言うならこちらの方もじゃ。本当に真央くんには辛い運命を背負わせてしまって申し訳ないと思っておるよ…こちらで食い止められるのも、もってあと1年といったところじゃ…下界のことは頼んだぞ」
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「ミラ!」
「んん…あっ!申し訳ありません…」
「何かわかったのか?」
「おそらく…ですが。魔王様のスキルに干渉したのは神様だと思われます」
「神様?俺をあの世界から拾い上げてくれた、地球の神様のことか?」
「はい。なので、御二方のことは心配は無用かと…」
「どうして神様が…」
そんな話をしていると、室内にキラキラと輝く光が降りそそいだ。
「おにぃ!何、これ?」
「わからない…一体何なんだろうな?」
やがて光が消えると、ミラが俺を呼ぶ。
「魔王様、御父様と御母様が戻られたようです」
ミラの目には、父と母の魂が見えているようだ。
「ど、どこに?」
明璃が目を凝らして見ようとするが、どこにも二人の姿は見えない。
ミラが手を差し伸べ、魂の可視化を行った。
ミラの手を握る、二人の姿が徐々に見えていき、透き通るような薄い姿の両親がそこに立っている。
『真央、明璃…心配をかけたね』
『まーくん、明璃ちゃん。ただいま』
いつもと変わらぬ二人の態度に明璃が涙を浮かべる。
「お父さん…お母さん…うぅ…」
「父さん、母さん!実は今から二人を…」
言いかけたところで、父が俺の肩に手を置いた。
『全部わかってるから。さぁ、始めてくれ』
父の言葉の意味がよくわからなかったが、始めてくれというのは蘇生のことだというのは理解したので、ミラに命じる。
「わかりました」
と、ミラが答えたのに対して、母が口を開いた。
『ミラちゃん。十和子さんにしたようなこと、できるのかしら?』
十和子にしたこと…といえば、若返りのことだろうか?何故それを知っているのかという疑問が浮かんできたが…
「やったことはありませんが…空の肉体を魂の情報に寄せることはできると思います」
『そう?なら、お願いできるかしら?隆さん、あなたもよ?』
『えっ!?僕もかい?』
『真央の力になると約束したでしょう?老いは身体のパフォーマンスを低下させるわ!万全の状態を保つためには必要なことよ!?』
『そうか…うん。そうだね!わかったよ、真由子』
なんか、それっぽい理由を取ってつけたような感じに聞こえるが…あの母の表情からすると、絶対に建前だよな…
「ミラ、二人の望むように頼むよ」
「わかりました」
「アルス、二人の身体を収納から出してくれ」
「うん。わかった!」
リビングの床に二人の遺体が並べられた。
「それでは、一人ずつ、私の手を握ってください」
『わかった。ならまずは僕から行かせてもらうよ』
『あら、あなた。そこはレディーファーストじゃないの?』
『ミラさんが、やったことはないと言ってたからね。何か不具合があったりしたら困るだろ?ならまずは僕が実験台になるよ』
『あなた…』
魂の状態なのに、母の頬が若干赤くなっているような気がする…
「では、私の手を握ってください」
『こうかい?』
隆がミラの手を握ると、ミラは隆の魂と魔力を同調させていく。
「死者蘇生」
死者蘇生スキルは、生命活動を停止した肉体に、再び生命活動を再開させる以外にも、肉体の修復や再構築といったことも可能だ。その辺りの匙加減は術者の技量によるのだが、ミラに関しては、技量不足の心配はない。
眼の前で遺体が、若返っていく光景は何とも奇妙なものだったが、隆の身体は真央と大差のない年齢相当になったようだ。
『どうかな?真由子と出会った頃をイメージしてみたんだけど…』
『うふふ。あの頃の隆さんね!次は私よ』
真由子がミラの手を握り、同じように、肉体が若返っていく。
『まぁ、こんなもんかな?』
『ははっ…昔を思い出すね』
「では、始めます。準備はいいですか?」
『ああ。いつでもいいよ』
『ええ、お願いね』
「
二人の魂が、床に寝ている肉体へと吸い込まれ、止まっていた心臓が動き出す。
しばらく待っていると、両親の目が、ゆっくりと開いて…
「おはよう…でいいのかな?」
「うふふ。ここは、ただいまじゃないかしら?」
目を覚ました二人を見た明璃が、
「お父さん!お母さん!うえぇぇぇぇぇぇぇぇんん!」
泣きながら、二人に抱きついた。
「あらあら、明璃ちゃんは甘えん坊さんね。うふふ」
「だって…だって…ううっ…うわあぁぁぁぁぁぁぁん」
「よしよし。良い子ね」
母が明璃の背中をぽんぽんと叩き、宥める。
やがて、泣き疲れたのか、安心したのか、明璃は母の胸に抱かれて眠ってしまった。
「まーくん。明璃ちゃんを寝室に運んでくれる?まだ身体が自由に動かなくて…」
「ああ、わかったよ」
眠ってしまった明璃を抱き上げ、寝室に運んでベッドに寝かせてあげた。
リビングに戻ると、なんとか身体を動かし、両親が椅子に座っていたので、何があったのかを尋ねることにした。
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