第95話 合流
「あー。あー。おにぃ、聞こえる?こっちの準備はOKだよ」
ケルベロスを倒し、勝利の余韻に浸っていると、アルスの分体を通して、明璃から連絡がきた。
どうやら、向こうは扉を開けるためのギミックの準備が整ったようだ。
「わかった。もう少し待ってくれ、合図はこっちでするから」
「了解〜」
「さて、向こうチームは準備ができたようだ。俺達も先へ進もう」
ボスのケルベロスを倒したことで、入口の他に奥にある扉も開いたようだ。
せっかくなので、呼び出したガルムもそのまま連れて行く。とはいっても、この大きさじゃ、ちょっと困るか…
「ガルム、小さくなれるか?」
「ワンッ!」
6mほどの大きさだったケルベロスの身体が、みるみる小さくなっていき、中型犬サイズの姿になった。3つの頭も一つだけになっている。犬種で言うと、甲斐犬が近いだろうか?
「何それ…可愛いんだけど?」
小夜がガルムの甲斐犬モードにやられたようだ。近づいて、躊躇いもなく撫でている。
「クゥ〜ン」
なかなか気持ちよさそうだ。
「え?この子は真央さんのペットですの?」
麗華も姿の変わったガルムに興味津々のようだ。手を伸ばしたり引っ込めたりしている…撫でたいのだろうか…?
「ワンッ!」
「撫でてもいいってさ」
そう告げると、目をキラキラさせてガルムの頭を撫でていた。
「理不尽な…」
零士は元の姿を知っているだけに、納得いかないという感じか?いや、でも…零士も触りたそうにしている?
「こう見えて、零士は動物好きなんですのよ」
麗華がそんなことを言った。
「へぇ〜」
小夜も麗華もガルムを撫でていたので、次は自分の番とでも思ったのか、零士が手を伸ばすと…
「ウゥ〜……ガウガウ!」
ガルムは零士に触られるのは嫌なようだ。
「な…何故…」
ショックを受けているようだが、リーナが言っていた。俺の仲間たちは俺の見聞きしたことを知っているのだと。
ガルムは今までの零士の俺に対する態度が気に入らないんじゃないかな?と思ったが、あえてそれは言わないことにした。
奥の扉を開けると、そこには骨で作られた悪趣味な台座の上に水晶が乗っていた。台座には骨のレバーが付いていて、取っ手部分が髑髏になっている。
「これがあの中央の扉を開けるギミックか?」
「悪趣味ですわね…」
小夜や麗華が、触るのも嫌だという感じなので、零士がレバーを動かそうとしてみるが、レバーはビクともしなかった。
「このレバーは動かないようだが…」
「見て!この台座に、窪みがあるんだけど…これって何か関係あるんじゃない?」
台座の窪みの大きさと形が、何かを嵌め込むようにできていると感じた。
「この形…ケルベロスが落とした魔石に似ているような気がするが…」
「試してみましょう」
ケルベロスの真っ赤な魔石を嵌め込むと、魔石は台座に吸収されるように溶けてなくなった。そして、水晶が赤く染まる。
「どうやら、これでレバーが解除されたようだな」
なら、こっちの準備もOKだ。
「明璃?聞こえるか?」
「うん!聞こえるよ〜」
「こっちにはレバーのある台座があったんだが、そっちはどうだ?」
「こっちも同じだよ。魔石を嵌めたら動かせるようになったみたい」
どうやら、同じ仕組みのようだ。
「なら、同時にレバーを倒してみるぞ?」
「OK!」
「「3…2…1…今だ!」」
ガコンッ!
レバーを倒すと、赤く染まっていた水晶が青い輝きを放つようになった。
ゴゴゴゴゴゴ……
どこかで大きな仕掛けが動くような音が響くと同時に、水晶が乗っていた台座が床へと収納されていく。
ガタンッ!
台座が完全に床へと沈み込んだとき、動いていた仕掛けが止まった。
「今ので、中央の扉が開いたのか?」
「行ってみましょう」
俺達は塔の階段を降り、元来た道を引き返す。
合流した俺達は、お互いに何があったのかを報告しあい、情報を擦り寄せた。
「ふ〜ん…で、このワンちゃんがおにぃの新しい仲間ってわけ?」
「真央のペットなのか?可愛いな…」
咲希と明璃がガルムに気づいて、頭を撫でている。ガルムも咲希や明璃に対しては顔をペロペロと舐めるくらい、気を許しているようだ。
「ガルムだ」
「ワンッ!」
俺に紹介されたガルムが返事をした。
しばしの休憩を挟んで、気を取り直して、
開いた扉の先には赤い絨毯の敷かれた長い階段が上の階へと続いている。
ドルフたちの探知にも敵の気配は感じられないようなので、俺達は階段を登り、2階へと足を運んだ。
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