第92話 リッチvs神狼
「ほう…この我に小娘一人とは舐められたものよ…」
「相手の力量も見極められないとは…愚かな骨ですこと。本当の強者を知らないとは大海を知らぬ蛙のようですわね」
「抜かせ!その生意気な口、聞けなくしてやろうぞ!」
「
リーナを中心とした一帯が爆風に飲まれた。
「ふんっ!他愛もないわい。ケタケタケタケタ」
「あら?ホコリを撒き散らすだけの魔術を偉そうに誇るなんて、なかなか冗談のわかる骨ですわね」
「何!?無傷じゃと?」
確実に命中したはずの魔術によるダメージを全く受けていないリーナの様子を見て、リッチが驚く。
「
「
「
ドカァン!
ドガァァン!!
ドッカァーーーーーンン!!!
何発もの爆発の魔術が命中するも、リーナにダメージを受けた様子はない。
「馬鹿の一つ覚えみたいに…他の魔術は使えませんの?」
「バカな…バカなバカなバカな!こんな…こんなはずでは…貴様は一体何者なんじゃ!?」
「あら?この程度で動揺するなんて?先程の自信はどこに行ってしまったのかしら?」
じりじりと歩み寄ってくる得体のしれない女にリッチは恐怖の感情を覚え始める。
その恐怖を振り払うかのように、リッチが新たな魔術を行使した。
「舐めるなぁ!小娘ぇ!
真っ黒い炎がリーナを襲う。
「ケタケタケタ。どうじゃ!?地獄の炎は一度燃え始めたら、対象を焼き尽くすまで消えることはない!いつまでその余裕が続くか見ものじゃの」
「はぁ…やはり小物ですわね…」
炎の中に閉じ込められたリーナが呆れるように呟いた。
「本当の魔術を教えて差し上げますわ。
リーナの呟きを拾った、ドルフが慌てて、咲希達を壁際まで避難させる。そして、身を挺して庇うような仕草で立ち塞がった。アルスの分体も、魔力の高まりを感じたのか、全力で咲希達を守るように動いた。
リーナを閉じ込めていた地獄の炎が凍りつき砕けた。それを見たリッチが驚愕する。
「そんな、バカな!地獄の炎が凍るなど…」
そして、リーナを中心として、リーナの足元から漏れ出た冷気がリッチを飲み込んだ。
床から伝わってきた冷気がまずリッチの足元へ到達する。
「う…動けん…」
まず足が凍り、逃げることもできなくなったリッチは足元から徐々に上がってくる凍気に耐えることができず、恐怖と絶望が最高潮に達した。
「い、嫌じゃ…我はまだ死にたくない!た、助け…て…」
「ここにきて命乞いとは情けないわね…」
「リーナ殿…」
ドルフが何か言いたそうにしているが…
「ちゃんとコントロールしてたわよ!?」
「そ、そうですか」
確かに咲希達の元へと冷気は到達してはいないが…逆に言うと、それ以外の部分、ボス部屋の大半が凍りついている。
「それより、よろしかったのですか?」
「なにが?」
「あの魔物は、この迷宮の主について知っているような口ぶりでしたので…」
「あら?あの程度が至高と崇めるような存在なら、大して気に留めることもないと思うけど?」
「それはそうですね」
「向こうには、アルスもいるし、
パチンッ
リーナが指を鳴らすと、魔法によって生み出された極寒の氷が元の魔力へと戻って霧散する。氷像と化した
「咲希様、お待たせいたしました。ボス討伐終わりましたわ」
「え…ああ。さすがだね…」
あまりにも圧倒的な勝利に、どこか呆然とした感じの咲希だったが、真央の仲間だからなと思うと、すんなり納得してしまった。
…
「さて、この部屋の先に扉を開く仕掛けがあるはずなんだけど…」
ボス部屋でボスの討伐をしたため、先に進むための奥の扉が開いている。
部屋の中には、骨で作られた悪趣味な台座の上に水晶が乗っている。台座には、取手の部分に髑髏があしらわれた骨で作られたレバーがついていた。
「なんて、悪趣味な…」
「でも、このレバー、びくともしませんよ?」
「ねぇ、ここ見て」
明璃が見つけたのは、何かを嵌め込むような窪みだった。
「これ…さっきのボスの魔石じゃないかな?」
形といい、大きさといい、つい先程見たものとよく似ている。
「嵌めてみよう」
「罠はありませんな」
ドルフが私達が気にもしていなかったことを報告してくれた。
「そ、そうね。少し気が緩んでいたかも…ありがとうドルフさん」
先程のボス、
その瞬間、魔石は溶けるように台座に吸い込まれ、台座の上部に鎮座していた水晶が赤く染まった。
「うん。これで、レバーが解除されたみたい」
「よし、じゃあ、真央に連絡をしよう」
「わかった。アルスちゃん、お願いね」
「いつでもいいよ〜」
「あー。あー。おにぃ、聞こえる?こっちの準備はOKだよ」
「わかった。もう少し待ってくれ、合図はこっちでするから」
「了解〜」
そんな返事が返ってきた。
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