第60話 刀
「それは…刀か?」
「おにぃ、刀なんて使えるの?」
「父さん達と武器を選んだときには記憶がなかったからな。あっちで一番長く使ってたのは刀なんだよ」
「ほぅ?お主も刀術スキル持ちか…」
「いえ。俺は武器スキルは持ってません。スキルがなくても武器は使えますから」
「何じゃと?それでは
「まぁ、俺の本分は召喚士ですからね」
「そういうことか。なら、自衛程度に使えれば良いという考え方じゃな?」
まぁ、どう捉えるかは人それぞれだろう。とりあえず、使ってるところを見てもらえばわかるかな?
「さて、それじゃ準備はいいか?」
「うん!」「いつでもいいぞ」「大丈夫です」
俺達は、アルスが向かった方とは反対方向へと歩き出した。アルスが向かった先じゃ敵はいないだろうからな…
…
「いたよ」
明璃が敵を見つける。
あれは…ダイアウルフの群れか。20体程度ならいけるかな?
「よし、じゃあ、明璃。先制で範囲攻撃で足止め頼む」
「わかった」
「咲希は、抜けてきたやつの対処」
「了解」
「里奈は適当に
「え?適当に…ですか?わかりましたけど…」
「真央はどうするんだ?」
「明璃の先制に合わせて動くよ」
俺の言ってる意味はよくわからないようだが、作戦は決まった。
「いくよ。影縫い、
上空に散らばった魔力の矢がダイアウルフの群れに降り注ぐ。
「じゃあ、俺も…」
鯉口を切り、やや前傾に構える。
「縮地」
俺の姿が消え、ダイアウルフの群れの中に現れる。
「は?」「え?」「うそ…おにぃ?」
みんなの驚愕など気にせず、刀を抜き、技を放つ。
「桜華乱舞、血桜の舞」
刀を抜いた俺の攻撃が、狼の群れの中で荒れ狂う。
この技は異世界で刀術LV8で習得した技で、乱戦でその真価を発揮する。敵の
「ギャン」
「キャイン」
「ワォン」
的確にダイアウルフの首を刈り取る攻撃の嵐はほんの僅かな時間で狼の群れを黒い靄へと変えてしまった。
チィンという小気味よい音を鳴らしながら、納刀し、一息つく。
「ま、こんなところか」
「うわっ!レベル上がったよ!…って!おにぃ、今の何あれ?」
「抜けてきたやつなんていないじゃないか…」
「私、何もしてません…」
「お主、刀術スキルはないと言っておったではないか!」
「刀術スキルはないですよ。嘘じゃないのはわかるでしょう?スキルがなくても技は使えます。宗次さんもそう言ってたし」
「真央、宗次さんって?」
「明璃の学校で講師をしているAランクの侍の人だよ」
「宗次くんか…確かに彼もスキルではなく、代々伝わる秘剣を使えておったが…」
「技として会得しているものはスキルがなくても使えるんだよ。明璃がCランクダンジョン攻略してる間に、こっそり試して確認してたんだ」
「時々いなくなると思ってたら、そんなことしてたのか…」
「さすがにぶっつけ本番じゃやらないぞ?」
「それより!あんな技いつの間に習得したの?」
「向こうで魔王やってた200年の間に…だな」
「もしかして…他にも使えるの?」
「武器スキルは全て最大まで上げたからな」
まぁ、今の俺じゃ能力的にも扱いきれない技もあるから、覚えた技を全て使えるとは言い切れないんだけど…
刀術系は使い込んだからな、身体能力が少し劣っていても、技の熟練度が高いから、問題なく使えるってことだ。
「…」
「ただ、こっちの世界じゃ、適性スキルのない攻撃じゃ、経験値が碌に入らないんだよなぁ…経験値稼ぎはアルスに任せるか…」
そんなことをぶつぶつ呟いていると、
「な、なぁ、真央」
「ん?どうしたんだ?咲希」
「私に稽古をつけてくれないか?体術も使えるんだろ?」
「あぁ、そういうことか。別にいいぞ。ただ、咲希とはレベル差があるからなぁ…俺のほうが弱いから参考になるかどうか…」
「あ、ずるい!あたしもあたしも!」
「さすがに魔弓術なんてのは使えないぞ?」
「えぇ〜…」
「う〜ん…魔王の時使ってた魔法とかは、消費SP大きすぎるようなのばっかりだったしなぁ…」
明璃に教えることの出来そうな技がないかを考える。
「弓術なら、少しは役に立つかもしれないけど…」
「うんうん!それ!それお願い!」
「よし、それじゃ、このダンジョンの中で、実戦交えて鍛錬してみるか。まだ休校の期間あったよな?」
「あと3週間くらいかな?」
「3週間か…それでどこまでできるかわからないけど…やるだけやってみるか」
「うん!よろしくお願いします!師匠!」
「なんだ?その師匠ってのは…」
「おにぃは先生って感じじゃないからね〜」
「まぁ、いいか」
「な、なぁ?私も師匠って呼んだほうがいいか?」
「咲希…できればやめてくれると助かる…」
恥ずかしいじゃないか…
「話は纏まったようじゃの?儂からも少し聞きたいことがあるんじゃが…」
「はい。何ですか?」
「お主のその刀…儂の刀剣鑑定でも見えぬ…一体何じゃそれは?」
「あぁ…これですか?これは
「ドワーフ?え?おにぃの仲間にはドワーフもいたの?」
「ドワーフもエルフもいたぞ」
「仲間って魔物ばっかりじゃないんだね…」
「いや…
「何その女神…」
「だから言ってるだろ?クソ女神の考えてることなんて碌でもないんだから、考えるだけ無駄だって」
「そうだね…話を聞くだけでも碌な神様じゃないって思えるよ」
「だろ?」
「お主らの話は想像もできん話ばかりじゃな…」
「まぁ、神の話はともかく、装備に関してはこっちの世界じゃ、素材そのものが存在してるかどうかも怪しい品ばっかりですからね」
「じゃろうな…その刀、銘はあるのかの?」
「竜牙刀といいます」
「お主の剣筋も大したものじゃったが、その刀の切れ味も凄まじかったでのぅ」
「よければ、お譲りしましょうか?」
「何を言っておるんじゃ!?このような素晴らしい刀、おいそれとは受け取れんわ」
「別にいいですよ。いっぱいあるので」
そう言いながら、もう一振りを収納から取り出してみせる。
「な、何じゃと?」
竜牙刀は仲間のエルダードワーフの鍛冶スキル上げのために大量生産してたからなぁ…
「本当に貰ってしまっていいのかのぅ?」
政繁は竜牙刀を手にして、刃を眺めながら聞いてくるのだが
「いいですよ」
あっさり答えた俺に驚いているようだ。
「あっちの森にオーガがいるみたいですね。試し斬りしてみますか?」
「いや…さすがに、それは…今回のダンジョンアタックはお主たちのランクアップ試験じゃし…」
「その程度の試し斬りなら、攻略を手伝ったとは言えないでしょ?」
そんな俺の誘惑に政繁は抗えなかったようで…
森にいたオーガ1匹を瞬殺してくるのだった。
「これは…さらに恩が増えてしまったのぅ…」
政繁の独り言は風に消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます