第59話 Aランクダンジョン到着

「まず初めに…」

 …

 …

 …

 俺の突拍子もなさすぎる話に里奈はどう受け止めていいのか分からずに混乱しているようだ。

 だが、政繁は一つ一つの会話を頷きながら飲み込んでいる。

「異世界に、女神か…そやつがこちらにダンジョンを作りおったのだな?」

「そうです」

「そして、お主はその異世界に巣食う魔物達のレベルや強さを記憶しておる…ということじゃな?」

「はい。さっきは誤魔化したけど…そんなこと言っても信じてもらえないと思ったから」

「構わんよ。それに、今のお主の話には一つも嘘がなかったからの」

「あの…真央さん」

 里奈が話しかけてきた。

「今の話ですと、あなたが使役している魔物スライムは私達が遭遇したスライムとは別の魔物ということでしょうか?」

「あぁ。そうなるな。騙していてごめん…」

「いえ、それはいいんですけど…私達が何もできずに撤退したあのスライムより、真央さんのスライムは強いということですか?」

 百聞は一見にしかずだな。どうせだし、紹介するか。

「ちょっと、俺とパーティーを組んでくれるか?俺の魔物を紹介したいからな」

“獅童真央からパーティーに誘われました。参加しますかY/N”

“神崎政繁、神崎里奈がパーティーに加わりました”

「じゃあ、召喚おいで、アルス」

 リムジンの椅子の上に魔法陣が浮かび、そこから白いワンピースの少女が現れた。

 出現したアルスはピョンと飛んで、俺の膝の上に着地した。

「あの…真央さん?この女の子は?」

「この子が俺の契約している魔物スライムだ。名前はアルスという」

「アルスだよ。おねーちゃんはボクの分体持ってる人だね。久しぶり〜」

「えぇぇぇぇぇぇ!?喋った??」

「ほほう…このような魔物もおるとはのぅ」

「アルスはスライムだからな、いつもはこの姿に擬態させてるんだ」

「そ、そうなんですね…」

「アルスのステータスはこんな感じだ」

【名前】アルス・グラトニア

【種族】アルティメットスライム

【LV】999

【HP】99999/99999

【SP】24500/24500

【力】4200

【知恵】3400

【体力】9999

【精神】9999

【速さ】2800

【運】99

【スキル】

 分裂、合体、分解、吸収、合成、変化、擬態

 超再生、HP自動回復、HP回復量増加

 念話、言語理解、気配察知、魔力感知、熱源探知、並列思考、高速思考、次元収納、

 物理攻撃無効、魔法攻撃無効、精神攻撃無効、全状態異常無効


「な、な、な、なんですか!?これは!」

「なんじゃ…この化け物は…こんな魔物がダンジョンに出てきたら、人類は滅亡してしまうぞい」

「むぅ〜。化け物だなんて、失礼じゃない?」

 アルスが口を尖らせて不満を口にする。

「あ、いや…お嬢ちゃんがあまりに強くてな儂は驚いてしもうたんじゃ…すまんのう」

「ははっ。アルス、許してあげてくれ。俺がアルスを自慢したかったんだよ」

「そういうことなら、許してあげる〜。えへへ〜。マオー様の自慢だって言われちゃったよ〜」

 今度は表情を緩めてニヨニヨしているので、膝に座ったアルスの頭を撫でてあげた。うん。やっぱりアルスは可愛いな。


「ねぇ…咲希さん?真央さんってもしかして…」

「言うな。本人は否定しているがな…」

「2体目も少女だったら有罪ギルティ!と言いたいところだったけど、ロボだったしね…」

「ロボ?」

「あ、ううん。こっちの話。あはははは」


「して、真央くん。お主、これだけの魔物を従えて、何を為すつもりじゃ?」

「まずはランクを上げてから、ダンジョンを潰して回るつもりです」

「そうか!やってくれるか!しかし、ランクか…儂の一存ではA以上には上げることはできんのでな…力になれなくてすまんのう」

「いえ、そのためにこうして試験を受けてるわけですし。最低でもA、できればSランクは目指したいところですが」

「お主の魔物スライムの能力を公表すればSとは言わず、SSSでも足らんと思うがの」

「強すぎる力は軋轢を生みます。俺はアルスの能力を公表するつもりはないですよ。お二方は信頼できると判断したので教えましたが…」

「なるほどな。確かに、儂も驚いたが、お主を危険視する輩も出てくるじゃろうしの…」

「なので、まずはランクを上げて発言力を増したいと考えています」

「それが良かろう」

「ついでですし、Aランクダンジョンでダンジョンの潰し方も実践して見せてあげましょうか?」

「ほっほっほ。それは面白いのぅ。首尾よくAランクダンジョンを潰したなら、その功績でお主をSランクまで引き上げることもできるやもしれん」

「それはやる気が上がりますね」

「うむ。儂も悲願をこの目で見られると言うなら、こんなに楽しみな試験はないわい。今日、真央くんと出会えた僥倖を感謝するぞい」

 …

 …

 …

 そして、俺達はフィールド型のAランクダンジョンがある街へと到着した。

「こんな街の真ん中にフィールド型のダンジョンがあるんだね…」

「ほんと、ダンジョンってのはどうなってんだか…」

女神ルフィアの奴が考えることなんて、考えるだけ無駄だ。どうせ碌な理由じゃないさ」


「さて、着いたが…どうする?すぐにでも潜るつもりかの?」

「そうですね、とりあえず門まで行って、様子見程度に潜ってみようかと思います。行けそうならそのまま攻略するってのもありかもしれませんけど…」

 とりあえず、まずはアルスをダンジョンに放しておきたいってのが最優先かな。


 市街地のど真ん中に巨大な門がそびえ立っている。

 隣のビルで入場手続きをし、装備を整え、門を潜った。俺と咲希、明璃の3人での攻略のつもりでいたが、里奈も一人だけ置いていかれるのは嫌だと言うので、パーティーに入ってもらって同行することになった。

 咲希は飛竜装備シリーズ、明璃は精霊装備シリーズ、俺は不死鳥の長衣だ。

「咲希さんも、真央さんも装備を変えたんですね」

 見慣れた巫女姿の里奈が真央たちの装備が、一新していることに気付く。

「あぁ。これは真央から貰ったんだよ。異世界の装備らしい」

「ほぅ…異世界の装備品か…何やら凄い力を秘めてそうな気配を感じるのう」

「そうなんです!自分でもビックリするほど凄い装備なんですよ!」

 明璃が装備の凄さを語り始めた。

 そんな俺たちを見守る、試験官を兼ねたSランクの爺さんは、普通に着物姿だった。まぁ、特殊繊維とかなんだろうけど。


「さて、どう攻略していくか、見せてもらおうかの」

「わかりました。アルス召喚おいで

「は〜い」

 白いワンピースの少女が現れる。

「じゃあ、頼んだぞ」

「まかせて。じゃあ、行ってくるね〜」

 そう言って、アルスは草原の彼方へと走り去って行った。

「よ、よいのかの?」

「えぇ。このダンジョン内の調査を頼みましたから」

「なるほどのぅ…あのステータスなら何の問題もなくダンジョン内を闊歩かっぽできるというわけじゃな」

「まぁ、そんなところですね」


「さて、俺達は少し戦闘時の連携を慣らしておくか。この前は明璃単独で攻略だったからな」

「うん、わかった!」

「そういえば、真央は得物は何を使うんだ?やっぱり槍か?」

「いや、俺はこれだな」


 アルスの分体の収納から取り出したのは、一振りの刀だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る