第55話 明璃のランクアップ
ギルドへと戻り、受付に試験証を提出する。
「少々お待ち下さい」
試験証を受け取った、受付嬢が奥へと下がる。
…
…
…
「獅童様、支部長がお呼びです」
まぁ…そうなるよな…
「失礼します」
支部長室へ入ると、書類の山の乗ったテーブルの向こう側に座った支部長の姿があった。
「あぁ。呼び立ててすまないな。いくつか確認したいことがあったのでな…」
さて…何を言われるか…
「まずは、明璃君がCランクダンジョンのボスを
「では、明璃のランクアップは合格ということですね?」
「あぁ。まぁ、1度のアタックで成し遂げるとは思ってなかったので、嬉しい誤算だな」
ひとまず、明璃のCランク昇格は確定したな。
「そこで…確認なのだが、ボスに至るまでの道中も全て明璃君が単独で倒しているのも間違いないな?」
「はい。野営や休憩の時は助力しましたが、基本的に討伐に関しては明璃
「それはBランクを視野に入れている…という認識でいいのか?」
「そうですね。実力を示せれば、その可能性はあるかもしれない…くらいの気持ちでしたが」
「わかった。いいだろう。正直、君達のレベルアップの速さは異常だ。詳しくは聞かないが、以前にも言ったが、実力のあるものを低ランクに留めておくことはギルドにとっても損失でしかないからな」
「ちょっと待ってください!俺達はレベルの開示はしてないんですけど…」
「あぁ、その辺りも試験証には記載されるからな。特にこのオリハルコンゴーレムとか言う魔物を倒した後のレベルアップはおかしい」
「そんなことまでわかるんですか?試験証って凄い技術で作られているんですね…」
「いや、試験証はダンジョンの出土品だ。ダンジョンが発見されると同時に見つかるらしい」
なんだと!?くそっ!その考えはなかった…
試験証なんて呼ばれてるからそういうものだっていう先入観があったか…
あれは、ダンジョン内に入ってきた人間のデータを集めるための何かだ。
記録されたデータを、どこかに送っているんだろう。おそらく
まいったな…Aランク試験がいきなり暗礁に乗り上げてしまったぞ…
俺が試験証について考え込んでいると、支部長が話を続けてきた。
「それで、もう一つの確認だが、このオリハルコンゴーレムという魔物について教えてもらいたい」
「君達のレベルが急激に上がったのは間違い無く、これを倒したからだろ?どんな魔物で、どんな特性を持っているのか、他の冒険者に注意を呼びかけるためにも、是非教えてもらえないだろうか?」
支部長からの要請に、俺は少しだけ自分たちに都合のいい嘘を交えながら、答えることにした。
「出現したのは、荒野のCランクダンジョンのボスの部屋でした」
「なんだと?」
「明璃がボスを倒して、扉が開いたので合流したのですが、その時にイレギュラーが発生したんです」
「やはりイレギュラーか…」
「魔物鑑定で種族がオリハルコンゴーレムということはわかったのですが、それ以外は見えませんでした」
「大きさは10mを超える巨人で、身の丈ほどの大剣を携えていました。魔法は弾くみたいに効かず、攻撃力と防御力が異常に高いみたいです。脅威を感じたので、使役している魔物に命じて全力で攻撃することで何とか倒すことができました」
「君の魔物が全力で攻撃して、ようやく…か」
「あぁ、そういえば、イレギュラーが発生したのはボス部屋なのですが、扉が閉まることはなかったので、もし、また現れたのなら、冒険者には逃げるよう勧めてください」
「う、うむ。わかった。冒険者には注意を呼びかけるとしよう。情報の提供に感謝する」
「いえ、俺も犠牲者は出てほしくないですから」
「最後にもう一つ」
ん?他に聞かれるようなことに心当たりはないけどな…?
「信吾を見なかったか?」
「信吾…ですか?」
「あぁ。数日前から、荒野のCランクダンジョンで行方不明になっていてな…」
その話に仲間たちと顔を見合わせるが、誰も知らないようだ。
「すいません。俺達は見なかったですね」
(アルス、お前隅々まで散らばってたよな?信吾を見たか?)
(ううん。しんごなんていなかったよ)
(そっか)
「そうか…君との決闘の後に、様子がおかしかったので心配していたんだが…もしかしたら、大峡谷に落ちたのかもしれんな」
「そうですか…」
その話を聞いたとき、咲希は少し悲しそうな顔をしていたが、一度敵対したからだろうか?俺の心はそれほど揺れなかった…。
「聞きたいことは以上だ。時間を取らせてすまなかったな」
「いえ。大丈夫です」
「明璃君はBランクへの昇格で手続きをしておこう」
「え?あたしBランクまで上がれるの!?」
「まぁ、この結果なら問題あるまい」
「よかったな、明璃!」
こうして、明璃は俺達と同じBランクへの昇格が決まった。
「それと、君達のチーム
「わかりました。ありがとうございます」
「ところで、挑戦するAランクダンジョンは決めたか?」
「はい。フィールドダンジョンへ行こうと思います」
「そうか、なら、そのダンジョンの試験証を渡すように受付に言っておこう」
「その件なのですが、試験証を使わないで試験を受けることってできないんでしょうか…?」
「どうしたんだ?急に…」
「いや、さっきの話しで、俺達の知らないところで色々な情報が記載されているというのが、少し怖いな…と感じたので…」
「ふむ…今まで試験証を使って、何か問題が起きたことなどないから、心配はいらないと思うのだが…」
「できませんか?」
「方法はないわけではない」
「じゃあ!」
「ギルド本部の職員で、そのダンジョンのランク以上の人間を試験官として同行させることで試験証はなくても試験は可能だ」
「本部の職員でランクS以上ということですか…?」
「うむ。我々も暇ではないしな、Sランクともなると、そこまで時間の都合はつかないんだ。試験で数日間ダンジョンに同行となると、なかなか難しいと言わざるを得ない」
「そうですか…」
バァン!
「話は聞かせてもらった。その試験、儂が同行しようではないか」
突然ドアが開き、入ってきたのは紋付き袴を着た、筋肉質のいかつい老人だった。
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