第49話 Cランクダンジョン攻略開始

 Cランクダンジョン隣の受付施設で、ダンジョンアタックの準備を整える。

「そうだ、明璃に装備を渡す約束だったな」

「やったぁ!」

「アルス、あれ出してくれ」

 少女姿のアルスを召喚して、収納から明璃にちょうど良さそうな装備品を出してもらった。

「おにぃ。これは何ていう装備なの?」

「これは精霊シリーズって言うんだ」

 エルフの里で世界樹を切り倒して作った精霊の弓と、四大精霊(火のサラマンダー、水のウンディーネ、風のシルフ、土のノーム)と光と闇の精霊(ウィル・オー・ウィスプとシェイド)の力を織り込んだ精霊の衣と精霊のブーツ、精霊石を嵌め込んだ精霊の小手だな。

「うわぁ〜綺麗〜」

 早速、更衣室へ駆け込み、精霊シリーズを着る明璃。

「どうかな?似合う?」

「うん。似合う似合う」

「心がこもってなーい」

 明璃が頬をふくらませているが、本人も気に入っているようなので、いいだろう。

 咲希は、この前渡した飛竜シリーズを身に着けている。

「そういえば、真央…飛竜装備これも明璃のも、サイズがピッタリなんだが…よく私達のサイズわかったな?」

「サイズ?あぁ!この手のやつは装備者のサイズ自動調整が付いてるからな」

「サイズ自動調整…?」

「なにその便利機能…」

「あっちじゃ常識だからな」

「異世界って凄いのね…」


「さて、明璃」

「何?」

「その装備の説明をするぞ」

「うん。わかった!」

 真面目な顔をした俺の話は大事だとわかったのか、明璃も真面目に聞く姿勢になる。

「明璃は魔法を矢にのせて戦うって言ってたよな」

「うん」

「この装備品は精霊の加護が付いていてな、火水風土光闇の6属性の魔法の威力が上がるんだ」

「精霊の加護?でも、あたし精霊なんて見えないよ?精霊に助けてもらえるのは、精霊術士とかだけでしょ?」

「契約して、精霊の力を使えるのは、確かに精霊と交信できる職業ジョブだけだろうけどな…」

「うん」

「その装備は精霊石を嵌め込んであるからな、精霊が自然と寄ってくるんだ。そこで魔法を使うと、属性の同じ精霊が共鳴してくれるんだよ」

 向こうじゃ、その性質を利用して、精霊魔術や精霊眼など…精霊関連のスキル取得に役立ったんだよなぁ。

「まぁ、習うより慣れろだ。少し使ってみるといい」

「そうだね。うん!やってみる!」

「咲希」

「なんだ?真央」

「道中は手助けしていいって言われたけどな、なるべく明璃一人で進ませたいんだ」

「どうしてだ?」

「Cランクダンジョンをソロで制覇したってなったら、Bランクまで上げてもらえるかもしれないだろ?」

「いや、だが…危険じゃないか?」

「アルスが守ってくれてるしな、渡した装備もあるから、大丈夫だと思うんだが」

「そういうことか…なら、少し様子を見て、いけそうなら、そのまま攻略するというのでどうだ?」

「あぁ。わかった。明璃もそれでいいか?」

「うん!わかった。やってみるよ!」


 みんなの準備が整ったので、全員で入場手続きをして、Cランクダンジョンの門を潜った。

「なるほどなぁ…確かに荒野だ」

「アルス、分体はここにいるのか?」

「ううん。真ボスのところで見張ってるよ」

「そうか、なら、そのまま頼む」

(はーい)


 俺達は荒野を進む…

「魔物いないね…」

 う…アルスに殲滅命じたからかなぁ…

「すまん、明璃」

「ま、まぁ、順調に進んでるんだからいいじゃないか。先は長いんだし」

「そういや、ここのボス部屋はどこにあるんだ?」

「このまま進むと、大峡谷グランドキャニオンがあるんだ」

大峡谷グランドキャニオン?」

「底の見えない大地の裂け目でな、そこに落ちて這い上がって来た者はいないって言われてるんだ」

「へぇ〜。そんなところがあるのか」

「お、おい…底まで降りてみようとか考えてないか?」

「え?…あははは…どうかなぁ…」

「真央〜?」

 咲希の追求にそっと目を逸らした。

 だってさ、そういうのって、ゲームとかだと絶対希少レアアイテムとか隠し部屋とかあるパターンじゃんね…

「でだ、話を戻すと、その大峡谷に沿って、3日ほど進んだ先に大扉があってな、そこがボスの部屋だ」

「待て。3日だって?」

「え?」

「まさか真央…想定してなかったのか?」

「いや…アルスは一晩でほぼダンジョン制圧してたから…」

「アルスちゃんの能力ならそのくらいできちゃいそうだけど、普通の人には無理だからね!」

 そう言われると、確かに見積もりが甘かったという気がしてくるな…

「なら、途中で野営ってことになるのか…」

「そうだな。わたしは魔法袋マジックバッグ内に野営道具は持っているが…」

「あたしも、一応は持ってるけど…ダンジョン内で野営の経験はないんだよね…」

「真央は…用意してなさそうだな」

「あはは…いや、でも…多分あるんじゃないかな?」

「あ〜。アルスちゃん、収納持ちだったもんね」

「そういうこと」


炎の矢フレイムアロー

疾風射ちガストシュート

凍結の矢フリーズアロー

土弾の連射ソイルショット

 大峡谷が見えてくる頃になると、魔物も湧き始めたようで、明璃も順調に討伐数を稼いでいる。

「おにぃ!この装備、凄いね!」

「わたしも真央から貰った装備の性能に驚いたが…明璃も大したものだ」

 ここの魔物は耐久力に優れた種族が多いので、通常、弓矢系の攻撃はそれほどの効果はないのだが…明璃の放つ魔法の乗った矢は確実に魔物を討伐していった。


 フィールド型のダンジョンでは外の世界と同じように時間が流れるので、荒野の空を夕焼けが染め、ダンジョン内の太陽が地平線の向こうへと沈もうとしている。

「明璃、今日はそれくらいで、暗くなる前に野営の準備を始めよう」

「わかった!」

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