第47話 新たな魂の絆

“「綾瀬咲希」及び「獅童明璃」との間に魂の絆を結びました”


 まただ…また俺は…

 いつもいつも、向けられる想いには鈍感で情けなくなるな…

 女神との戦いに巻き込むかもしれないなんて綺麗事を並べて…結局、二人に隠し事をしていた事実は変わらない。

 全てを話すことで、この魂の絆スキルが反応するなんてな…皮肉なもんだ。

 俺も覚悟を決めよう。そう決意して、スキルを今一度確認する。


“魂の絆による、経験値の共有【解放】”

“魂の絆による、称号効果の一部共有【解放】



 経験値の共有?…別行動のアルスが魔物を倒しても、パーティー登録してる二人には1/100しか経験値が入らないはずだったのが、パーティー登録しなくても、俺と同じだけの経験値が貰えるってことだろうか?

 それと称号効果の一部共有?…もしかしたら、必要経験値減と成長限界突破が二人にも適用されるんじゃ?

 想像通りだとしたら、とんでもない効果じゃないのか?


「どうしたの、おにぃ?ぼーっとしちゃって…」

「あ、あぁ。今、俺のスキルが反応してな…」

 みんなには見えないスキル、魂の絆のアナウンスが流れたことと、その効果を明璃と咲希に伝えた。

 それを聞いた二人の反応は…

「お父さんとお母さんにもスキルが反応したんだよね?あたしだけ遅れちゃったのは腑に落ちないけどな〜。でも嬉しい!」

「ま、真央…その…あの…なんて言えばいいのかな…言葉にならないほど嬉しいってこういうことなんだな…」

 このスキルは上辺だけの関係じゃ絶対に反応しないからな…お互いに心から信頼してないとダメなんだ。だから、スキルが反応したってことはお互いの気持ちが通じ合っているということの証明でもある。

 まぁ、俺のほうが二人の想いを受け入れてなかったから今まで絆を結べなかったみたいだけど…

 結果的に、このタイミングで二人との間に絆を結べたことが、素直に嬉しかった。


 さて…そろそろアルスの方はどうなっただろうか?

(アルス〜)

(あっ!マオー様!)

(そっちはどんな感じだ?)

(ここ、結構広いね、もうちょいかかりそうだよ〜)

(そっか。わかった)

(明日の朝までには終わると思うよ〜)

(了解だ!あ、ボスは倒すなよ?)

(はーい)

「さて…と、アルスが今、Cランクダンジョン内で魔物討伐をしているっのは話したよな」

「うん」

「実験が上手く行ってれば、みんなのレベルも上がってるはずだ。確認してみてくれ」

「うん。わかった。ステータスオープン」

【名前】獅童 明璃

【職業】魔弓術士

【LV】25

【HP】280/280

【SP】420/420

【力】61

【知恵】84

【体力】59

【精神】58

【速さ】111

【運】34

【スキル】

 鑑定、魔弓術、隠れ身、罠感知、罠解除、魂の絆

「あ…レベルが4も上がってる…すご…」


「ステータスオープン」

【名前】綾瀬 咲希

【職業】武道家

【LV】43

【HP】900/900

【SP】450/450

【力】228

【知恵】51

【体力】228

【精神】92

【速さ】140

【運】60

【スキル】

 体術、気合、気配察知、強撃、発勁、魔力操作、魂の絆

「え?私も1上がってるぞ…」


「どうやら実験は成功のようだな。それと、一旦、パーティーを解除するぞ」

「そっか…パーティー組んでなくても経験値が共有できるんだっけ?」

「確証はないけどな、多分できると思うんだ」

「アルスちゃんはまだダンジョンで魔物討伐してるの?」

「明日の朝には終わるって言ってたぞ」

「終わるって…どういう事?」

「ダンジョン内にいる魔物の殲滅を指示したからな!」

「え?」

「結果は明日の朝のお楽しみだ!笑」

 どうも、咲希も明璃も混乱しているようだが…

「もしかして、こういうレベリングは嫌なのか?」

「嫌というか…養殖とか寄生って言われて敬遠されるんだよね…」

「あ〜…戦闘技術が育たないとか、そんな感じか?」

「うん…」

「俺から言わせれば、レベルで成長する世界で、レベルを上げるのはまず最優先にすべきだ。戦闘技術なんて後でいくらでも身につくからな」

「そういう物?」

「身体能力が上がれば身体の使い方や感覚も変わってくるしな、新しいスキルだって覚えるだろ?」

「うん…」

「上げれるだけ上げてから、自分の戦い方を確立するほうが無駄がないんだよ」

「おにぃに言われるとなんだかそんな気がしてくるね…」

「身も蓋もない言い方するならな、戦闘技術が高かろうが低かろうが、圧倒的レベル差の前では塵芥なんだよ」

「ぶっちゃけると、LV999のアルスに勝つために、どんな戦闘技術があればいいと思う?」

「…」「…」

 俺の極論に二人は答えを出せないようだ。まぁ、そりゃそうだ。技術でどうにかなる話じゃないからな…

 それに…レベルを上げるということは、それだけで死ににくくなるということでもある。死んでしまっては元も子もないからな。


 とりあえず、レベルを上げることが最優先だという俺の話に納得してくれたようなので、咲希にも取得経験値UPの装備を渡して、今日のところは解散となった。

 取得経験値UPの付与ということよりも、その装備が指輪だったことで咲希の目がぐるぐる回っていたが…特に深い意味はない!ないったらないのだ!

 「この!バカおにぃ!」

 と、何故か、明璃に蹴られたが…


 と、とりあえず、自分の分の取得経験値UPの腕輪を装備して、今日は寝ることにした。


 さて…明日の朝が楽しみだな!

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